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【ガンバ大阪】「弱き勝者」の限界点/2020シーズン総括

天皇杯が終わって約1週間。ぼちぼち移籍に関する正式なリリースも発表され、徐々に来季に向けての気持ちも高まりつつあるが、その前に2020シーズンの総括を残しておきたい。
まず、リーグ戦に関しては先日すでに振り返ったとおり。2位という結果そのものは悪くないが、勝点65という数字を額面通りに受け止めてはいけませんよと旧ブログならびにstand.fmでお話しした。

それにしても難しい。今季のガンバ大阪が見せてくれたサッカーは、どう評価すべきなのだろう。宮本監督の狙いは、どれくらい形になったのだろう。選手たちにはどんな感覚が残ったのだろう。いくつかの側面から自分なりに考えを巡らせてみたい。

■ 標榜していたハイプレスは志半ばで断念

キャンプから精力的に取り組んでいたのがハイプレス戦術。その威力は開幕戦の横浜M戦で見事に発揮された。入念な準備も実を結び、前年王者のスタイルを逆手に取る形で勝利。スカウティングからスタメンの構築、そしてピッチ上でのパフォーマンスが全て噛み合った一連のストーリーはめちゃくちゃ痛快だったし、あとから戦術面の解説記事を読んでもなかなかにレベルが高く、チームとしての成熟度を感じることもできた。恐らく宮本監督としてもベストな采配を振るえたと、手応えあるゲームだったのではないだろうか。

しかし残念ながら、リーグ戦の長期中断による過密日程のもとではハイプレスの継続は不可能に。たまに高い位置で奪って即ゴールにつなげられるような場面もあったが、基本的にはどっしり構えて守るスタイルがメインになった。
来季の日程も不透明だし、ACLも並行することを考えると、ハイプレスはひとつのオプション程度の位置付けになってしまうのかなという見立て。

■ やられそうで、やられない守備

今季の特色といえば何と言ってもこれ。試合中は何度も冷や汗をかきながら、最小限の失点に留め勝点を積み重ねてきた。相手からすれば押し込みながらもトドメを刺せなかった感覚だったのだろうか。見ている側も終盤はだいぶ慣れたとはいえ、それでもまあまあしんどかった。
これが宮本流の守備組織という意見もある。中央のスペースを消して、最も危険なところをケアする。うんまあ、わからんでもないけど..紙一重だったよねかなり。東口のビッグセーブに救われた場面だって数え切れない。それにボールを奪える位置が後ろすぎて攻撃に展開しづらいのも問題点。結果的に失点数は減ったものの、これがベストな策だというのであれば少し疑問が残る。

■ シンプルな攻撃で際立ったパトリックの貢献度と、レアンドロ・ペレイラ獲得の意図

シーズンが進むにつれハイプレスからブロック型へと守備スタイルの基本が移行することで、貢献度が一気に高くなったのがパトリック。セットプレーも含め攻撃の手段が限られる中、そのフィジカルが最大限に発揮された。終盤は何度もチームの勝利に直結するゴールを挙げたし、守備面でもプレスの先鋒役に加えボールの預けどころとしても抜群に機能。彼の活躍なしでは2位に入ることもできなかっただろう。
そこで気になるのが、同じく高身長のFWレアンドロ・ペレイラを新戦力として迎えそうな点。もし来季ツインタワーを並べる構想があるのなら、個人的には賛成。ボールを握るのが難しい現状、宇佐美やアデミウソンのようなタイプ以上にスペースと時間を使えるフィジカル型が活きてくるよなあとは考えていた。ましてボランチに山本・矢島に新加入のチュ・セジョンと配球が得意な駒が多いわけだし。

■ 2021年も「我慢」は続く

天皇杯で川崎に敗れた直後のコメントからも「来季はもっと攻撃のクオリティを..」というのが指揮官と選手の共通認識。ただ、ここでバランスを崩してしまっては19年シーズン序盤の悪夢再び、である。基本的には失点しないことをベースに、少しずつ攻撃面にテコ入れしていくのが現実的な流れではないだろうか。また残留争いに突入してしまうのが最も恐ろしい流れ。ACLもあるし。我々も我慢しながら、地道に勝点を拾っていく姿を応援していくことになるのでは。

■ さいごに

せっかく2位まで浮上したシーズンのオフにしてはトーンの上がらない内容になってしまったが、我々はまだまだ弱い。「弱き勝者」が到達できる場所はここが限界だろう。もっと強くならなければ。
「選手は揃っている」という認識も改めたい。前年のJリーグ優秀選手に選ばれたのも東口と井手口の二人だけ。上位のクラブにはもっとスキルに長けた選手がたくさんいる。
ただ、伸びしろも残っている。高尾・山本は完全にレギュラーとして定着したし、特に山本の活躍は長年の課題であった遠藤さんとの発展的解消を実現させてくれた。昌子もコンディションが万全でない中で「さすが」と思わしめるシーンを何度も見せてくれたし、来季はもう少し稼働率が上がることを期待したい。

来季は上位を引き続き維持しつつ、さらにベースを強固なものとするシーズンになればいいんじゃないでしょうか。

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