2023.10.25 食と美。食と言葉。

息抜きに、今日出会った、食と美について書く。

ホテルでの会食。
「会食」なんて言葉、大学生の私にとっては全く馴染みが無い。
ホテルでの食事も、フレンチも、一年に一度食べれたら良い方だ。
ただ今日は、親戚の色々で、馴染みの無い場に参加することになった。

前菜はジャンボンペルシェ。
まるで呪文みたい。
''ハムとパセリのゼリー寄せテリーヌ''のことを言うそう。
ゼリー部分は透明で、ハムの薄桃色とパセリの緑が、軽やかに映える。
横には、レモンを縦に割ったような形に盛られた粒マスタード。
それをナイフで少量取り、テリーヌに乗せる。
ああ綺麗だと心の中で思う。
色のバランスはもちろん、マスタードをナイフで塗った時に出来るあの形もなんとも美しい。

魚料理。勿論美味しかったのだが、ここではスキップ。

続いての肉料理。牛リブアイロールのロースト 赤ワインソース。
横にはマッシュポテトが添えられている。
ビーフをナイフで切る。
そこに、またもナイフで取ったポテトを少量。
初めはふわっと。徐々に押しながら。
ああ美しい。
油絵具をアートナイフでキャンバスに乗せたような立体感。
加えてナイフで乗せるからこそ生まれる美しい曲線。
なめらかな舌ざわりを想像させる、あのマッシュポテトの優しさも相まって、ふんわりと美しい。
アートで言えば、女性の肉体美に近いのかもしれない。
そして、ビーフとポテトは、味の相性の良さだけでなく、あの肉々しい赤さとふんわり優しい白さのバランスも絶妙だ。

食とは美なのだと知った。
色のバランス。
様々な線・形の組み合わせ。
美味しさと美しさの掛け合わせは、人を幸福感で満たす。
ついついにやけてしまうのだ。

話は変わるが、食と言葉の組み合わせも、最近好きだなと感じる。

私は、作家である島本理生さんの本が、もっと言えば言葉が好きなのだが、特に食を描いた部分ではいつも幸せを感じる。
理生さんが使う言葉はなぜだか私の中に、すっと入り込んでくるのだ。
だから、食べなくても読めば美味しい。
食欲をそそる香り。
噛んだ時の食感。
口に広がる美味しさ。
同時に、波のように押し寄せる幸福感。
それが理生さんの言葉には詰め込まれている。
ただ罠なのは、たまにそれらの言葉をふと思い出すと、実際に食べたくなって仕方が無くなる。

食と言葉の組み合わせでいうと、
有川浩さんの「植物図鑑」はものすごかった。
食べずとも、読めば、美味しさが波のように押し寄せて、岩に当たった波のように、ぱっと弾けて広がるのだ。
よだれが垂れてきそうな程に。
数年前に一度読んだだけだが、今でもたまに思い出し、とてつもなく料理がしたくなる。
あの、脳で広がる味を、食べてみたくなる。

食と言葉とは、言わば、幸福感のお得パックだ。
ただ言葉がそこにあるというだけで、美味しさも、美しさも、幸福さも感じられるのだから。
一つ難点なのは、しばらく時間が経ってからの副作用。
「実際」に感じたいと、それも、今すぐ感じたいと、思い始める。
まあお得というのはデメリットが付き物だから、仕方がないと思おう。

たまには、美を追求した食に、また会いに行きたいと思う。

2023.10.25

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