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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#埼玉

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

腕で語る【埴輪紹介所その182】

目と口が大きい。ザクザクっと切ってあけたようだ。 計算がないのが良い。 もげてしまった腕。欠損が多く、胴とつなげない。 しかしその手には五本の指がしっかりついている。 埴輪の腕や手は、顔に並ぶほど表情がある。 腕は大きな曲線を描く。何かを囲っているよう。どんなポーズだったのか、全体像が知りたい。 振り分け髪に、ミズラが一部残っている。玉の大きいくび飾り。冑がないので、武装していたわけではなさそう。推理は続く。 埼玉県春日部市の塚内4号墳の男子埴輪。 所蔵は春日部市教育委

大きすぎるあかべよろい【埴輪紹介所その177】

この埴輪の最大の特徴 大型の頸甲(あかべよろい)。 顎を隠すほど大きい。 大きすぎて、首を動かしにくそうだ。冑とぶつかりそうだし。 首と顎を守るにはいいかも。 作るときに、甲から下と頭部とを分けて作り、合体させたと見た。 両手で、頭椎(かぶつち)の大刀をしっかり握る。 三角錐のとんがり鼻、肩甲(かたよろい)、両手で大刀を握るなど、生出塚(おいねづか)埴輪窯跡出土の男子埴輪とよく似ている。 頸甲は彼だけ。 熊谷市の大境南6号墳出土の男子埴輪。高さ約130cm。 所

ぐるぐる武装【埴輪紹介所その176】

衝角付冑(しょうかくつきかぶと)のとんがり。 それに合わせたような三角錐のとんがり鼻。 肩甲(かたよろい)をつけている。 肩甲から籠手(こて)まで、ぐるぐると紐を巻く。 珍しい。おもしろい。だが武装の効果はあるのか? 甲の押さえにはなるか。 太ももが半球・ひざ下が異様に長い・靴が平べったい、は、二本脚で立つ埴輪の基本。 両手で大刀をしっかり握る。 いま抜刀しようというところなのか、さやに収めたところなのか。 腕は細く長い。指は細く直線的。 頭椎(かぶつち)の大

何かを見ようとしている【埴輪紹介所その175】

仁王立ちして 腰に手を当て 目を細めて 何かを見ようとしている。 遠くを? 近くを? 作られたのが埴輪時代の6世紀頃でも、埴輪が見ているのは、いつでも今。 今も、いつも、埴輪の時代。 何か言いたげ【埴輪紹介所その174】な彼と作りは大体同じ。 右端が【埴輪紹介所その174】、右から3つ目が【埴輪紹介所その175】 だが、顔、表情が違う。 同じ埴輪は2つない。同じ埴輪は作れない。 生出塚埴輪窯跡出土の男子埴輪。高さ135.4㎝。 所蔵は鴻巣市教育委員会、保管・

何か言いたげ【埴輪紹介所その174】

二本足の人物埴輪は大型。 右端の彼をご紹介。 袴は赤と地色の市松もよう。 振り分け髪に下げミズラ。ミズラはトンカチ型で赤の縞もよう。 保管・展示は「クレアこうのす」ですが、企画展への出張たびたび。 そのため何度か会っていますが、彼はいつも何か言いたげ。 生出塚埴輪窯跡出土の男子埴輪。高さ131㎝。 所蔵は鴻巣市教育委員会、保管・展示は「クレアこうのす」。 彼が表紙を飾る参考文献あり。 高田大輔(2010)『東日本最大級の埴輪工房・生出塚埴輪窯』(シリーズ「遺跡を学

農と武【埴輪紹介所その173】

ちょっと斜めな立ち姿 それを補うためなのか すこーし首をかしげている その頭には菅笠らしき被り物 鍬を肩に担ぐ と同時に大刀を帯びている 農と武。 顔というか頭部は赤く塗ってあるように見えた。 化粧は日常なのか、マツリのための色なのか。 出土地不明の男子埴輪。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物館(旧名称は長瀞汲古館)が所蔵し展示していました。 収蔵は埼玉県立さきたま史跡の博物館。 撮影は2016年『新収蔵品展 ~旧長瀞綜合博物館からの寄贈資料~』(於・埼玉県立さ

慰めたい切なさ【埴輪紹介所その172】

胸に手をあてる それは埴輪ではめずらしくないが 切ない顔だ。 何かを強く訴えているように思えてならない。 何を訴えているのか、それを聞かせてほしい。それがわかれば慰めたい。 彼はただ祈っているのかもしれない。 指は深く刻まれている。 腰に下げているのは大刀にしては小さめ。刀子か鎌か。 腰の後ろにも何か下げている。 こっちが鎌かな。わからん。 左右から棒を突っ込んだようなミズラと、二本のツノが折れたような頭の突起、それぞれモデルが気になる。 作りは全体に粗いのに

コンビネーション【埴輪紹介所その171】

彼は 対で出土した、といわれている女子埴輪と、どこか似ている。 対で出土した、と聞いたからそう感じるだけか? 左右対称となるポーズのせいか? 胸に当てたミトンのような手は確かに似ている。 女子は挙げた左手に棒状のものを持つ。 その正体は、いまだ不明。 彼も挙げた右手に何か持っていたかもしれない。 ほんとうに対だったのなら、互いの持ち物からそれぞれの正体がわかるかもしれないのだが。 埴輪は1体のみを立てることはない。 人物埴輪2体だけを立てる墳墓もまずないだろう。 こ

音は見えないが【埴輪紹介所その169】

私は この顔に魅せられた。 あいまいだが深い表情の埴輪が時々いる。 すべての埴輪がそうとは言えないのが不思議だ。 出会いは写真だった。1987『埴輪の微笑』川島達人(新人物往来社)に掲載されていた。捕らえられた。 実物に会えた。それはそれは感動である。 ところで 彼女の左手の 棒状の持ち物は議論の的である。 かつては、四つ竹(カスタネットのように打ち合わせるらしい)的な楽器ではないかと言われていた。 だが、現在はその説には懐疑的な見方が強いらしい。 では何なの

年月が彼を変えたか【埴輪紹介所その161】

盾の後ろ ややうつむき気味のその顔は 不敵な笑いをたたえている。 土の中で練った策を今、実行に移そうとしているのか。 しかしよく見ると 割れ、欠け、つなぎ合わされて、この顔になったのだ。 年月が彼を変えた。あるいは、年月を経て彼は生まれ変わった。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ77cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、よく似ているけれど表情の違う盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、『盾持人埴輪の世界』埼玉県

ミズラの上げ下げ【埴輪紹介所その160】

これは上げミズラか? 下げミズラか? あごぐらいの長さ。判断に迷う。 てっぺんは髪なのか、飾りなのか、帽子なのか。 ミズラとの組み合わせは、埴輪時代に実際にあったのか。 戸惑いが盾では隠せない? いや、謎に戸惑う現代人に、微笑んでいるだけかも。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ68.3cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、もっと謎の頭の盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、『盾持人埴輪の世界』埼玉県立さきたま史跡

頭がめんどう【埴輪紹介所その159】

これは頭。 人の頭。 香炉のような形。 その下にハチマキ? こんなめんどうなものを作るからには、モデルがあったと思う。 ただのお団子頭ではないはず。 ところで彼は盾を持っている。 正確には 盾をお腹に貼りつけている。 手はないのだ。 盾の上端に鋲らしき粘土粒3つ。鋸歯紋の線刻。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ70cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、まったく頭の違う盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、

生死をかけての土俵入り【埴輪紹介所その158】

右手は失われたが 確かに挙げた右腕で 土俵入りする彼。 太いまわしの上、へそに孔があいている。 カチューシャのような頭。 扁平髷(へんぺいまげ)と呼ばれているようだ。 大銀杏なのか。その原型なのか。 横顔は 鋭い。 当時の相撲は命がけだったという。 出土地不明の力士埴輪。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物館(旧名称は長瀞汲古館)が所蔵し展示していました。 収蔵は埼玉県立さきたま史跡の博物館。 撮影は2016年『新収蔵品展 ~旧長瀞綜合博物館からの寄贈資料~