初瀬寧

はつせ ねゐと申します。 駄文。よろしくお願いいたします。

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プロローグ

漫画の中の彼女は言った。 漫画の中の彼は言った。 死にたくても、裸になれないならまだ死んじゃダメだよ、と。 裸になって失うものがなければ死んでもいいよ、と。 とある服飾家は言った。 表現は人を生かすものでありますように。 殺すものになりませんように。 キラキラして見えた。 なのに、彼女はこの世を去った。 ある音楽家は歌った。 死のうと思った、今日も上手くは生きられなかったから。 消えたかった、優しくなんかなれないから。 死ぬのが怖くて生きのびちまった。 キラキラして見えた

    • 夏でも長袖なのには理由があって。

      自分は超が3個くらい付くくらいの寒がりで夏でも長袖を手放せずにいる。毎年そんなだったなと、夏並みの気温を記録する今年の春を過ごしていて思っていた。 流石に炎天下の中では半袖やノースリーブに切り替えはするが、どうにも冷房が苦手で店や施設に入るや否や長袖を羽織る。電車の弱冷房車はありがたい存在だが、もう少し弱くても構わない、そう思うくらいに冷房が苦手で寒がりだ。 高校生のころは自律神経がブレブレにも程があると呆れるほどおかしかった。夏でも学ランを着て、平気で過ごしていた。側から

      • 白紙のチケット

        昔行った映画の半券 一緒に行った人は覚えてても、どこで見たのか、その後どうしたか、などは覚えていない その中の何枚かはもう、時間が経って感熱インキが消えて 真っ白になって、なんの映画の半券だったのかさえ、わからなくなっている 捨て忘れた半券、というより捨てられなかった半券 白紙になってわからなくなってしまった思い出みたいで 寂しくなった。 明日も晴れるといいけれど暑いのはイヤだ。

        • アスファルトから嫩葉が芽吹くのを願う(仮)

          嫩葉が芽吹く時、 きっと布団に潜っているでしょう その布団は きっと小宇宙のように優しくトキメキを秘めているでしょう その優しいトキメキは 明日を拒むわたしを許してくれるでしょう 明日へ拒みの許しは 明日の朝食をやわらかくしてくれるでしょう 明日のやわらかい朝食は 休んでもいいよと言ってくれるでしょう 休んだその朝は のんびり支度をするでしょう 支度をのんびりしたら お気に入りの帽子をかぶるでしょう お気に入りの帽子をかぶったら お気に入りの古本屋に行くでしょう

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        プロローグ

          恒常ガチャキャラのぼくに花束を

          明日は4月1日で新生活が始まる日だ。 自分は特段何かあるわけでも始まるわけでもなく、今日までの何もない日々が続いていく。そのはずなのに明日世界が終わる、そんな気がして無性に落ち着かなくなってしまった。頓服の安定剤を少し多めに飲んで布団をかぶる。 明日は今日より気温が下がって過ごしやすいらしい。始まりの日にぴったりな日になるのだろう。 終わらなければ ここ数日気温が安定しないせいで体調やメンタルも安定していない。 このままいっそ、本当に終わってしまえ、そう思ってしまうほ

          恒常ガチャキャラのぼくに花束を

          朝焼けを待っている。

          明けない夜はない、止まない雨をない、なんて苦しんでる人に他人は言うけれど、極夜の様にずっと夜のまま続いてしまうことだってあるはずだ。なんならそのまま心が根を上げて終わってしまう、ことだってある。傘を差す前に風邪ひいてぶっ倒れたり、凍え死んでしまうことだって。 なんとなく嫌、が積もりに積もって逃げ出して、その先でもまた積み重ねてしまって、また逃げて、を何度繰り返したことだろう。 暗い夜に生きていると光がどうも苦手になってしまうらしい。前を向いて頑張っている人を見ると羨ましくも

          朝焼けを待っている。

          眠るって。

          時たまに眠りにつく瞬間の引きずり込まれるような感覚が怖くなる時がある。それで目が覚めることもあるくらいには恐怖を感じる。 睡眠薬を飲まないと眠れないのだが、薬の効きがいいとそれを感じる前に寝てしまうのでいいのだけれど、効きが悪い日にはその感覚を味わってしまう。 その感覚が来る前から怯えて余計に眠れないのはとても情けないけれど、怖いものは怖いので仕方がないな、と割り切ってはいる。 学生時代は学期末レポートや課題が終わらず、寝たくても寝れないこともあったので、眠るのが怖いとい

          眠るって。

          しょっぱい私は花火に集まる羽虫。

          その夏は遠い思い出となってしまった。 大学に入り初めての夏のある昼下がり、一人暮らしを始めた私は自炊というものから逃げ毎日のように素麺ばかりだった。 一週間も食べ続けると流石に味変したところで大した差はなくなっていて飽き飽きとしていた。 その矢先だった。 大学に入学した時から目を惹かれていた人から着信が入る。ワンコールで出たい気持ちを、私のバイブル曲であるアレに準えて7回目を待つ。焦らすのも焦らさせるのも好きじゃないアタシだけれど、この人に暇なやつだって認定されるよりかは幾

          しょっぱい私は花火に集まる羽虫。

          アイスクリームはプールで。

          アイスクリームを頬張る君はプールから見えるひまわりの群れよりも誇らしげで輝いていた。 燦々と太陽が照りつける中、君とプールに行ったあの日。何かはわからないけれど私たちの中で確実に変わってしまっていた。 私の頼んだストロベリー味のアイスクリームはいつのまにか甘ったるいシロップに変わっていて、君の口にはチョコミントのアイスクリームが付いていて愛おしかったのを覚えていて、今でも目を閉じると目に浮かぶ。 その夏の最高気温を記録していたあの日。 こんなに暑かったらプールも干上がっちゃう

          アイスクリームはプールで。

          [短歌集]きみ、きみ、きみ、ばかり

          別にさ、きみの笑顔が見れればよかったんだよ、ただそれだけなのに 僕が見たい未来は来ないし、来る未来は君の見たい未来に近いらしい むせかえる空気にきみとのあの日たち、思い出して涙するぼくはセミ 言葉という業背負う 君は行く 言葉のない世界 電子の波越えて 届くのか 自堕落なぬるま湯のような日々では、私はきみにはとうてい届かない どんな幸せも君に訪れればいいと明るみ始めた曇天の空を見上げ思う さよならを告げるきみのただいまを次聞くのは嫌いなあいつなんだね 多くを望ま

          [短歌集]きみ、きみ、きみ、ばかり

          君は全てだったんだよ。

          好きだった人が結婚した。 それ以上でもそれ以下でもない。ただそれだけ。 なのに自分の心はなぜこうも締め付けられているのだろうか。 あの人にはしっかりとフラれて何年も経つというのに。 締め付けられて初めて知る。あなたをまだ好きだったと。 あの頃に戻れたとしたら。いや、せめて昨日にでも戻れたとしたら、私の魅力を見せつけて引き止めたい、そう思ってしまった。 今日も定時で帰れそうにない私はコンビニ弁当を見てため息をつく。 あの時あなたと恋仲になれなかったのだから、どうせ戻ったところで

          君は全てだったんだよ。

          夏と君の日差しにあてられて

          「アタシ、普通じゃないからさ」 そういった君は笑ったように見せた。でも本当は泣いていた。 この言葉を聞くのは何回目だろうか。 君は上手く生きれない理由に必ずこの言葉を使う。 「ズレてんのは世界の方で、君は正しいよ」 そんなありふれた言葉でしか君を慰めるしかない自分が情けなくてこっちまで泣けてきた。 斯く言う私も前ならえでそっぽ向いてしまうような人間で、明日まで生きるのさえ精一杯なのだ。 それでも君とこれからを一緒に歩みたいと思ってしまうほど君は魅力的な人なのだ。 普通ってそも

          夏と君の日差しにあてられて

          黎明に。そして

          涙が伝って目が覚めた。 時計は午前3時過ぎを指している。明日、いや今日も仕事だ。出勤までまだ時間はある、ともう一度眠ろうとするも寝付けない。 それもそうだ、さっきまで見ていた夢はあなたの夢だもの。あなたの優しさを忘れずにいる私はそれに縋るように日々を送っているのだ。情けないものだ。 別れて半年。それでもあなたの優しい声は今でも耳に染み付いてる。 あなたの声がまた私に話しかける。もう聞くことのないその声は私に都合のいいことしか言わない。自分でもイヤなやつだ、と思う。 眠さはどこ

          黎明に。そして

          問い。そしてあの人の幸せが。

          今日も残業。3日連続の残業は嫌になる。 社会人3ヶ月目にして私は社会で働くということの痛みを知った。 疲れのせいか、この数日あの人の夢を見る。 大学時代の唯一の恋人。 夢に出てきては私に優しくして去っていく。別れた時も優しくしてくれたっけな。 あの頃よく通ってたバーにでも顔を出して癒してもらおうかとすぐに帰路に着くのではなく寄り道をした。 「いらっしゃい、久しぶりだね」 マスターの優しい声が聞こえてきた。 うん、久しぶりと返す。 「君たちが来なくなって寂しかったんだよ、何して

          問い。そしてあの人の幸せが。

          夜道に。そして

          あなたのことを確かに愛していた。 涙を浮かべ帰り道を歩きながらそう心の中で繰り返しつぶやいていた。あなたとの楽しい日々は私の人生に色を添えてくれたけれど、私はあなたの人生に色を添えられたのだろうか。もしそう思ってくれているのなら、この上なく嬉しいことだろう。 私はあなたに想いを寄せて勝手にフラれた、ただそれだけのことかもしれなくて、でも認めたくなかった。それらしい理由を見つけようと必死になっている自分がカーブミラーに映っていた。 どうしてあなたなんか好きになってしまったんだ

          夜道に。そして