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デイサービスに改善のお願いをした話

とある日・・。
母がデイサービスを利用している介護施設へ電話をしました。

「お世話になっています。すいませんが、母の送迎のときの介助方法について改善のお願いがあるのですが・・・」

母がデイサービスを利用する日に、送迎に来てくれるスタッフの対応が気になり、介護施設の責任者へ連絡をしてしまいました。最近、送迎に立ち会っていてどうしても気になることがあったのです。

現在、母は寝たきりの状態です。体幹たいかんが弱くなり座位ざいがたもてないことや、左半身はマヒしていて動かせませんのでデイサービスに行くときは車椅子への移乗いじょうを介助してもらい出かけます。

なので車椅子はちょっと特殊とくしゅなものをレンタルています。シートは背中や頭が支えやすい構造で、かつ、リクライニングで後ろにたおすことができます。

出かけるときは車椅子をベッドのすぐ横によせてシートを倒し、スタッフ2人で頭側と足側に分かれ、ベッドから車椅子へスライドするようにして移乗します。帰宅して車椅子からベッドの場合も動作が逆になるだけです。

母が現在の状態になったときに施設責任者と取り決めた方法でした。でも最近はちがう方法で対応する人がいるのです。

それも好ましくないかたちで・・・。


男性スタッフのひとりなのですが、彼は車椅子からベッドに母が移乗するときにベッドの上に自分が乗って膝をつけて立ち、車椅子の母をベッドの上から持ちあげる・・というより引き上げるのです。

同行しているもう一人のスタッフは、もうしわけなさそうにあしに手をえるだけです。そしてベッドから母を持ち上げた本人は抱きかかえたままいったん止まります。

なぜなら、母を寝かせるスペースへ自分が立っているのですから・・・。
そして膝を立てたまま母を抱えてベッドの上で後ずさりしていくんです。

結局、母をろすスペースはあまりないのでベッドの端にいったんろすのですが、そこは不安定なマットの上でのこと、母を抱えながら前のめりにかがむので少し落とすようになる。頭が揺さぶられ、母の顔がくもります。

母を寝かせた位置をなおすたびに、持ち上げてはトン、持ち上げてはトン、5cm程度の高さでも体の自由の利かない母にはつらいでしょう。

そして母をまたいでベッドから降りて、定位置に押し込む?ように動かします。一連の流れになっとくいかない私は「ねえ、今のやり方は危ないよねえ・・」思わず声をかけます。

しかし、「すいません」というものの私とは目をあわせません。母の方に向かい、「じゃあ来週また来てね!それじゃあね!」と言いそそくさと玄関に向かい「おじゃましました~」といって帰っていきました。

そういうことが3回ぐらい続き、とうとうがまんできずに、施設に電話しました。彼だけ方法が違うということ。やりかたが危ないし母が苦しそうなので改善してほしかったのです。

とにかくベッド上から引き上げるのは危ないのでやめてほしい。バランスをくずせば母の上に本人が落ちることになるし、自分が落ちないよう回避かいひするためには母を途中で離すしかないからです。

それから本人が寝るベッドの上を母を抱えてひざで踏み散らかすのはおかしい。本人そこに寝るんですけどお・・・・当然、不安定で手をすべらせたりしてしまう。

他のスタッフの方でもベッドの上に乗る人はいます。けどそれは本人の体を補助ほじょするタイミングで腰掛けたり膝をつけたりしている。でも彼のは明らかに違う。

施設の責任者は私の話を理解してくれて、母を施設から送るときに送迎車に同乗どうじょうして来て、私の前で本人に直接指導ちょくせつしどうしてくれました。なので次回からは大丈夫だろうと思います。
(注:あくまでなごやかにですよ)

今は福祉の施設などでも人が不足していて大変です。忙しくて介護方法など技術的なことを研究したり話し合ったりする時間もないのだろうと思う反面、もともとそういう研修もしていないのでは?うたがってしまう。

ネットで介護の安全意識について調べてみても、介護施設のリスクマネージメントや介護事故の防止というような内容が多いです。たしかに大切なことですが、利用者よりも施設側のリスク回避が優先になるようです。

リスク回避ということはそのリスクに直面しなければ意識しないし、事例がなければ考えもしないのではないでしょうか。

他に技術的なことはないかと調べると介護や看護で人を移乗させたり介助したりするときの方法で、「ボディメカニクス」という技術があるそうです。

ボディメカニクスとは・・・
ボディメカニクス(ぼでぃめかにくす、body mechanics)とは、神経系や骨格系、筋系などの力学的相互関係を取り入れた技術のことである。
医療や介護分野においてはボディメカニクスを取り入れることで無駄な力を使わず看護者や介護者の負担を軽減する手法が導入されている。ボディメカニクスが必要とされる背景には看護者や介護者の身体的負担が大きく、重労働で腰や肩を痛めることが多いことがある。

ボディメカニクスの原理
看護や介護においてボディメカニクスを取り入れるには、主に次のようなポイントが原則として挙げられる。
(1)足幅を前後左右に広げて立位を安定させる(支持規定面積を広くする)
(2)腰を落として重心を低くし、骨盤を安定させる(重心を低くする)
(3)対象者を持ち上げずに水平に移動させる(重心の移動をスムーズにする)
(4)対象者に接近する
(5)対象者には手足を体の中央に引き寄せてもらい、身体を小さくまとめる
(6)足先を動作の方向へ向ける
(7)指や手だけでなく大きな筋群(大胸筋や腹直筋、大臀筋など)を使う
(8)テコの原理を利用する

出典元:看護roo!用語辞典 ボディメカニクス

私は自宅でも母を一人で動かしたりすることがあるので、これまで移乗の方法をYouTubeや書籍などで学習していました。でも教える講師によってかなり考えや方法が違うと思っていたのです。

でも、ボディメカニクスの原理・原則というものがあり、基本から応用されているのだなあと思うと、伝えられている意味がわかってきたような気がしてきます。

もちろん原理・原則を理解しても体が動かないと意味がないのでイメージをしながら練習も重ねていかないと知識だけではうまくいかないでしょう。

介護される人より大きくて体力がある人なら技術はいらないと思われるかも知れませんが、移乗介助いじょうかいじょの際に介助者が重い、きついと感じるときは介護されている方もきついのだということを最近感じます。(自分の母基準ですが・・・)

自宅に訪問看護に来ている看護師さんに「ボディメカニクス」について聞くとみんな経験していますよ。と言い、担当のケア・マネージャーに聞くとそういえばやりましたねえと言う。

でも現場では生かされてないぞ・・・。教える人と教わる人の意欲の違いだろうか?もともと施設が許認可きょにんかが下りてしまうとスタッフの技術的なことは意識していないのでしょうか?

今年2024年は介護報酬かいごほうしゅうの改定が有り、事業の見直しなど介護業界も大変なようです。日々の介護サービスの問題も抱えつつですのでプロとはいえゆとりがない時期なのでしょう。

いつもお世話になり感謝と敬意を払いつつも、ちょっと愚痴ぐちを言い、改善のお願いをした話でした。


最後までお読みいただきありがとうございました。














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