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喫茶店百科大図鑑

東京喫茶店研究所所長の沼田元氣氏がカメラとペンをもって制作した、喫茶店にまつわる101の項目(百科なのに100じゃないひねくれ具合がいい)を取り上げている。

〈1 喫茶店とは〉から始まり本・音楽・映画との関係、建物やインテリアのこだわり、特色ある店など様々な角度から喫茶店を分析し、沼田氏の独特な表現で解説されている。どの項目から読んでもよく、パラっと開いたところから目を通してみたり、目次や索引から興味あるところを選んでみたり、気軽に手に取れるのが楽しい。

101ある項目の中から気に入ったものをいくつか挙げてみる。


〈25 マッチファッションと雑貨〉
現在ではあまり使わなくなったマッチだが、デザインに落とし込めばこんなにもモダンでチャーミングになるんだなと感心。竹久夢二やミナ・ペルホネンなどがモチーフにしたことはマッチのデザイン的価値に太鼓判が押されたと言ってもいいだろう。

〈38 珈琲・豆本〉
いなほ書房が出している、珈琲や喫茶店にまつわる豆本があるということを初めて知った。しかも凝った装丁で内容もしっかりしているともなればぜひ読みたい。幼少期からミニチュアが好きな自分にとっては気になって仕方なくなってしまった。

〈65 のらくろ喫茶店〉
『のらくろ』という漫画のことは認識していたが、後半で物語が喫茶店につながるとは。何コマか掲載されているがゆるめの作画で読みやすそうである。戦争から喫茶店へ、どんな物語が繰り広げられるのか、ぜひ読んでみたい。

〈101 缶コーヒー〉
喫茶店なのに缶コーヒー?と不思議に思ったが、同じページにある茶話を読んでみるとなるほど、と納得。日本人にとって珈琲を身近なものにしてくれた缶コーヒーを片手に、人々は自分と向き合い夢想する、まさに喫茶店でコーヒーを飲んでいる時と同じであると気づく。

つまりこういうことだ。街ぜんぶが喫茶店であって、自販機の前が自分の席というわけ。


こうして喫茶店のことを考えてみると、見たり感じたりするポイントが沢山あって喫茶店のことがますます面白くなった。
コーヒーを飲みながらこの本をめくれば、どんな場所でもそこが喫茶店になるだろう。 


出典:『喫茶店百科大図鑑』沼田元氣
   ギャップ出版

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