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彼女

第一章は作品で演じた役の<彼女>たちについて、その時の状況や芝居への思いを語っている。数多くの作品に出演している中から17人を選んでおり、自分が見ていないドラマや映画もあったので読んだ後は作品そのものにも興味をもった。

自分が戸田恵梨香という俳優を認識したのは『デスノート』であった。幼い少女らしい部分と、心の暗い部分や時に狂気じみた月への愛情をもつミサミサは今見ても漫画から飛び出してきたキャラそのもののように感じる。
戸田本人は「可愛いと思われないと」と無理していて、同時に役者として絶対に認めさせてやる!と思い始めたとあり、迷いながらも勢いよく進もうとしていたこと役者としての強い彼女を生み出したのだろうなと思った。

『大恋愛』はムロツヨシとの抜群の相性が見ていて心地よく、普段恋愛もののドラマは見ない自分でも見てよかったと思った作品である。
戸田演じる北澤尚は本人に中身が似ているんじゃないかと思うし、ムロツヨシも普段の様子に近い感じで、だからこそ作りモノっぽくない身近さを感じたのかもしれない。この二人のコンビは何度でもやってほしい。

戸田に対してもっていた印象が大きく変わったのは『SPEC』。こんなに面白い演技ができるのかとビックリした。しかも役の当麻紗綾本人は真面目な顔をしてやっているところがまたいい。どんな人物でも自分のものにしてしまう戸田恵梨香という人はすごいと思った。


第二章は最近の戸田の心境やこれからについて書かれている。
メディアに出るのを控えているなと感じてはいたが、実は心身共にボロボロで休養していると読んで初めて知った。
あんなに見る人を惹きつける演技は、全身全霊をかけて俳優をやっていたからなのかと腑に落ちた。まさに好きこそものの上手なれである。
しかし心身が壊れそうになるまでだったと思うとこちらもなんだか苦しい。

最近、上手く立てなくなった。上手く笑えなくなった。心の奥が引きつっている。気力だけで立っていた。けど、もう頑張れない。

葛藤していたあの時期、切実に一人で、自分と向き合う時間、自分の内面を見ることの必要性を感じたんです。

自身の体を知り自身の内面と向き合ったことで始めたフィトテラピーや定期検査などのことは興味深かったし、好きなことや大切にしている人との関係などプライベートの気持ちを垣間見ることができ戸田恵梨香本人への興味も深まった。

これからやりたいことを前向きに書けていたのを読み、彼女はこの先も俳優として表現者としてもっと魅力的な姿を見せてくれるんだろうなと思った。
読んでいるこちらも自分と向き合い、前を向く力をもらえた。

何が正しいか間違っているではなく、
何が正義か悪かではなく、
自分の心が穏やかでいられるものを見続けたい。

今、私が一番穏やかに戻れる瞬間。
それは、胸の側面にある傷跡を見る時だ。


出典:『彼女』 戸田恵梨香
    ワニブックス

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