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屋久島行きのフェリーと西部林道

夕方谷山港を出航したフェリーは夜9時に種子島に寄港した
大部分の乗客はそこで下船していった
種子島在住の人達なのだろうか
後に残ったのはほとんど旅行者だけになった
いきなり客室内はガラガラになってしまった
そしてそのまま朝まで停泊したあと目的地の屋久島に向かった

屋久島行きのフェリーは一日1便で船中泊
のハイビスカスと朝出航で昼到着の屋久島2そして高速船トッピーは一日7便で2時間半程で到着する
船賃が一番安いのがハイビスカスで一番高いのがトッピーである
屋久島2はドックに入っていてその時期は欠航だった
当然時間はあるけれどお金を節約したい人はハイビスカスに乗りお金で速さを買う人はトッピーに乗る
切符を買ってから横の待合所に入ったら後から後から大きなザックを背負った外国人旅行者やライダーが入って来た
やはり類は友を呼ぶである
切符売り場、待合室の佇まいも大阪南港から鹿児島まで乗ったフェリーさんふらわあのそれとは段違いであつた
こう言っては失礼だが工事現場の事務所かと見紛う建物
まあこれから乗り込むのはフェリーであって建物ではないから全然関係ないのだが
他の旅行者と会話したり写真を撮りあったりしているうちに乗船の呼び出しがかかった
自転車を押して鋼板を渡り壁際の手摺りにロープで固定した
客室への階段を上がる途中階にはカップ麺の自販機とジュースの自販機があった
そして客室階に上がるとそれぞれの区画はドアがあるわけでも無く細い通路で区切られているだけだ
片隅に積み上げてあるブランケットを取って空いている場所に陣取る
質素というか簡素だ
客船という雰囲気は全然なく貨物のついでに人間が乗せてもらうというような印象を受けた
屋久島の物流経済をこの無骨な船が担っているのだなと応援したくなった

私は既に島の南部の千尋の滝に近いゲストハウスを予約済みであった
屋久島は一周約100kmの道路が走っている
その3分の2 約70㎞を北東部に位置する宮之浦港から半時計回りに走り夕方までに南部の宿に到着する予定にしてある
途中の西部林道は道も狭くバスも通っていない

天気予報も晴天のようだ
待ちに待った屋久島
いよいよ期待も高まった

翌朝フェリーは予定通り7時に入港した

雲はあるけれども久しぶりの青空である
山がよく見える
港から近い白谷雲水峡だろうか
埠頭を出てすぐに右折する
交通量は少ない
暑くもなく寒くもない
緩やかなアップダウンが続く
照葉樹特有のカラフルな緑色に覆われた山肌と渓谷

すっかり苔に覆われたガードレールを見ると雨の多さを実感する

一湊海水浴場で休憩した
夏なら賑やかなのだろうけれど誰もいない
風が強くお茶を飲むためのお湯を沸かすのに苦労した
再び走り出すと右手海の彼方に島が見えた
口永良部島だ 

島の連なりが遥か奄美、沖縄へと続いているのだ
路線バスの終点永田を過ぎると人家は全く見えなくなった
狭い林道のすぐ側まで植物達が勢力を伸ばして人間達の作り上げた物など飲み込んでしまうような迫力を感じた

猿達もそこかしこで日向ぼっこや毛繕いをしていて束の間の晴天を満喫しているかのようだった

鹿も人を恐れることなく悠然と目の前を闊歩していた

たまに自動車が通る時はそそくさと山に逃げ込んだりしていたが自転車は音もなくゆっくりと走るので動物達とは近い目線で接することができた
西部林道の終わる大川の滝までは野生動物の楽園であった
私自身は普段動物が身近に棲息する地域に暮らしていて人間の生活圏との軋轢をしばしば感じているので手放しで喜んだりは出来ない
きっと農作物への被害もあるに違いないと思った
それは午後になって立ち寄った食料品店で聞いてみたところ予感した通りであった
世界自然遺産に登録された国立公園でもあり
動物保護と人間生活のバランスをどう取って行くのか気掛かりであった
豊かで貴重な自然を保護するために世界遺産に登録されれば観光客が押し寄せてその結果環境破壊が進んでしまうことがないよう願いたい
便利な世の中になっても旅することが不便であり続けることも必要かと思う

西部林道が終わって栗生の集落に着いた

#屋久島 #自転車旅 #西部林道 #世界遺産 #野生動物 #オーバーツーリズム

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