「何だ、それは?」の、ハンバーガー

知ってはいるが、食(しょく)さない。
知ってはいるが、未確認。そういう時代だったのか?
5、6歳頃を思って見ると、案外、廻りはそんな食べ物ばかりだった。
あさま山荘事件に、第一次石油ショック。トイレット・ペーパーがなくなる、なくなる、なくなるとニッポン中が、大騒ぎする少し前だ。
首相は三木か、真紀子パパこと、角栄・田中だったようだ。

一番最初の疑問は「オレンジ」。
(オレンジって、何?)全く全然、分からなかった。

  ♪早くおいでよピコリーの、オレンジを食べよう……(後略)

当時、見ていたアニメ番組「ピコリーノの冒険」(フジテレビ)の終わりにあったが、「オレンジ」自体が謎である。
「オレンジって何?みかんのこと?」
みかんを食べながら母親に聞いた。
「そうじゃない?」
生まれがギリギリ戦前、育ちが戦後と共にの母親も謎の果物。
(ふーん、そうかぁ。みかんは英語で、オレンジっていうのかぁ)
そういや、似てるし。妙に納得した。

更に更にの不思議な食べ物が、ハンバーガーだ。
「ハンバーガー?」
ハンバーガーって、何なんだ?
同じく「ポパイ」
夕方の5時30ぐらいからテレビで放映されていた、狂わんばかりに大好きだった外国アニメを見る度、思った。
ポパイのお友達。名前は忘れたが、帽子も上着も真っ黒な背広姿のお友達が、いつも手にしているのだ。
「ハンバーガー、ハンバーガー」
陶酔したように時々、台詞があったけど、「ハンバーガー、ハンハンバーガー」。
悲しいかな、単語自体は理解できても、物体としての認識が出来ない。
だって廻りに、全くない。
ハンバーグなら食べている。イシイとマルシン。
ギタギタな油が商品の下にこってり。それをフライパンで焼く。包装紙も一寸、類を見なかった。+「ガー」。
「グ」でお終いの語尾ではなく、「ガー」と伸ばして終わる食べ物を、知ららなかった。
(何だろう?)
どういう感じの食べ物なのか、どんな味がするのか?
アメリカだけ、にあるものなのか。
日本人は食べられないのか、アメリカに行かなければ食べられないのか?。

それを初めて口にした幸福感は、まさに「嗚呼!」
アメリカ人は、何て贅沢なものを食べているんだろう。
小学校の6年生の時だ。友達2人と、休日に映画を見に行って、帰りにマクドナルドなるお洒落な店に入り、注文したのだ。
「マック」
今なら軽く言えるけど、何か凄い所。レストランみたいなが、印象だ。
「あっ、はい、あの、は、はんばーがーと、ふらいどぽてとと……」
「いらっしゃいませっ」
明るくテキパキ、リズムに乗って踊るように対応してくれるお姉さんに、
びっくり、どきどき、どよんどよんに慣れないままに注文を進めた。
「ありがとうございました」
袋を渡された時は、脱落すら覚えた。可愛い小学生だったなぁ。今ならあり得ない。

アメリカ人に、「ハンバーガーは好きですか?」と聞くと、
「バカか、お前は?」
以上となるらしい。アメリカ人なら、みんな好き。みんな大好き、ハンバーガー!日本人のお握り好きと、同じである。
「アップルパイとドーナッツ」
なんて答えも存在するが、&「ハンバーガー」の3点セットであるようだ。

昔、「まんがなるほど物語」で、ハンバーグの初めてをやっていた時、たまたま。偶然の産物みたいに紹介していたが(うろ覚え)、チーズ然り、パン然り。世の中には、幸せな偶然があるものだ。

余談だが、老若男女。
明治生まれのじいさんにも、大正生まれのばあさんにも。
育つ過程で、ギブ・ミー・チョコの時代の子供も、ゆで卵が一寸したおやつであった時代の子らも、令和生まれの幼児も、誰もが好き。
抵抗がなく、「美味しい」と感じ、「好き」な外国からの食べ物のトップは、常にコレ。断トツハンバーグだそうだ。

理由は無くても、納得しますな。
                           <了>

#創作大賞2023

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