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一度心肺停止した、私からのご報告(その3)

【減塩生活】

心臓の機能は一度失われると、二度と回復しない、らしく、以前のような肉体酷使はできないようです。
農家にとってこれはまさに「致命的」な話なのですが、一縷の望みをかけて、自宅療養しています。

現段階での最大の障壁は「塩分摂取のコントロール」です。

入院時に「心臓病食」という「減塩食」が始まったのですが、それまでの食生活がいかに自由だったが、自由な食生活との別れを思い知らされたのです。
退院前には、心臓を患っている者にとって「塩分」取り過ぎがいかに危険か、について、
生涯続く投薬の説明も含めて、恐怖に震えるほど教えてもらいました。

厚生労働省制定の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、成人男性8.0g未満、女性7.0g未満を1日の塩分摂取量の目標となっているのですが、
(2020年版)では男性7.5g未満、女性6.5~7.0g未満の目標と、0.5gの削減となっています。

一方、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにおける、減塩目標は食塩6g/日未満で、
国内外のガイドラインも、高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防を目的とした量は、食塩相当量6g/日未満となっています。

で、実際の成人の1日の塩分摂取量は、おおよそ男性10.2g前後、女性8.7g前後となっています。(平成28年国民健康・栄養調査における摂取量の中央値、「18歳~29歳」から「75歳以上」までの区分の平均)

つまり現在の私の食生活は、世間一般の半分近くまで減塩しなければならず、これが想像以上に悩ましいものでした。

目安として、おおよそ1食2g未満の食事となるのですが、とにかく、今までの調味料が使えないだけではなく、
単品の素材段階から塩分を積算して、なおかつ野菜と魚を中心としたバランスの取れた食事にしなければならないのです。

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妻による開発中の減塩メニュー(無塩豆腐ハンバーグ、無塩ケチャップで)

一般的な、日常のメニューはほぼ禁止。今まで知ろうともしなかった食パン1枚の塩分は、1枚単体で何と1.0g(5枚切り)になるのです(2枚食べただけで1食の上限です)。

心臓リハビリの先生からは、「減塩は1年もすれば味覚が慣れるから」「逆に濃い味は食べることができなくなるらしいよ」と言われたものの、
慣れきれていない今は、常時、味に飢えています。
ただ、味に飢えている分、素材を噛みしめるので、以前よりも増して味に敏感になりつつあります。

という訳で、現在妻による脅迫、訂正かなり厳しめの減塩料理にて、循環器系の強化(心臓機能の回復が無理ならば全体の「強化」と思い)に取り組んでおります。

「今生きている」ことと比べると、完全にただの欲なのですが、
今まで食べた「おいしい」ものに感謝し、その思い出とともに慎ましく「減塩」して参ります。

尊敬するフランス料理、浅草駒形の『Nabeno-Ism』の
「大山鶏胸肉を64℃でしっとりと加熱し、春の緑色野菜のメリメロ、ラングスティーヌ、ソースアルビュフェラと共に」メニューで味わった、
腰を抜かす、というか、体がググぐと椅子に落ちていくような感覚になる不思議体験をさせてもらえた、ソースの記憶を噛みしめながら。

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渡辺雄一郎著『ナベノイズム 渡辺雄一郎のフランス料理』2020 旭屋出版 P.118


しかしながら、どうして一発で心臓が止まってしまったのか、
下戸で酒も飲まず、タバコも吸わないのに、一体何が原因だったのかについて、
また突然止まってしまうのではないだろうかという不安をいだきながらも考えてみたいと思います。

(願わくば、世の中にもっと減塩料理が増えれば、と。)

その4に続く

その2はこちら


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