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【読書メモ】今週読んだ6冊【発達障害関連】

 今週は発達障害関連の本を読みました。当事者として学びになるところがあったり、逆に「なんじゃそりゃ」と思うような本があったり。
 発達障害者の生活・仕事において役立つ実用的な本、「当事者向け・ライフハック系」
 周りに発達障害者、もしくはそうかもしれない人がいるひとに読んでほしい、「定型発達者、またはグレーゾーンの人向け」
 発達障害を社会課題として論じる、「その他 新書」(生活面での実用性は低い)
 の、三本立てでお送りします。


当事者向け・ライフハック系


『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本』安田 祐輔


挫折を繰り返してきた大人でも
勉強に関するあれこれが
できるようになる!

大人になってから発達障害の症状に
悩む人が増加しています。

ここ10年で「発達障害」の知名度が
飛躍的に上がったことで、
「もしかして自分も…」と成人になってから
気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。

その中でも、LD(学習障害)や
ディスレクシア(読み書きの困難)という言葉があるように、
学習に困難を抱えている人は多いです。

これは、発達障害の人たちが苦手とする集中して授業を聞く、
きちんと計画を立てるなどといった要素が
勉強には付随することも関連しています。

また、発達障害という言葉が
広く知られるようになったのも比較的最近のため、
子どもの頃に学習トレーニングを受けずに大人になってしまい、
今でも悩みを抱えている人は多いです。

本書では、そうした状況に悩む人のために、
スケジュールの立て方や講義の受け方、
自習の仕方や試験本番の対処法など
日頃の勉強法を改善できるポイントを
具体的に解説します。
本書で紹介する解決法は、
デジタルを使ったやり方や、
100円ショップのアイテムで実践できる内容など、
ちょっとした工夫で実践できるアイデアばかりです。
【本書の特長】
・発達障害の特徴に苦しむ人が勉強しやすくなるためのアイデアを紹介する本
・発達障害の特徴をカバーするアイデアが満載で、勉強の悩みが解消できる
・発達障害あるあるの悩み→その原因→具体的な解決アイデアの手順で解説
・便利なアプリやサービス・グッズの紹介など、解決方法に多くのページを割いている
【本書の構成】
第1章 予定通りにできないのを何とかしたい
第2章 勉強する気が起きないのを何とかしたい
第3章 上手に講義を受けられないのを何とかしたい
第4章 自習ができないのを何とかしたい
第5章 試験本番の不安をなくしたい

Amazon商品ページより

・小説の勉強を始めた発達障害者として、「発達障害」「勉強」の二つがフックになって読んでみた。
・載っているのは基本的に資格試験を想定した勉強法。そのため、私みたいに資格試験・受験以外の形で勉強をしたい人にはあんまり当てはまらない章もある。試験までのスケジュールの立て方や、模擬試験のやり方。試験当日に遅刻しないための対処法など。試験のたぐいを受ける予定のない人は読み飛ばしてもOK。もちろん、試験をする人以外にも役に立つスキルがいっぱい載ってるので読んで損はなし。
・本書を読んだ私は、とりあえずスマホのTwitterアプリを「抑制力」と名付けたフォルダに入れた。発達障害特有の衝動性に負けてTwitterを開きそうになった時、フォルダ名が目に入ることで抑制力が働いてグッとこらえられるように。そういう感じのちょっとしたテクが詰まっている。
 私は衝動性が強いからこういう対処法を取ったけど、人によって注意欠陥や多動性など困りごとは異なってくる。それぞれの特性に合わせたシチュエーションごとの具体的な対処法が載っている、実用性が高い一冊。資格取得や受験合格を目指している発達障害の人にオススメしたい。
・発達障害を理由とした悩みについて「変えられるものは変えられる、変えられないものは諦める」というスタンスなのが気に入った。どんなに努力しても無理なものはムリ。なんとかできるところだけなんとかすればいい。


『大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本』太田 晴久


一生懸命しているのに、仕事でケアレスミスばかりしてしまう…。遅刻癖が直らない…。人のことを怒らせてしまうことが多い…。なんだかもう、いろいろなことがうまくいかない…。もしかして私、大人の発達障害かも?大人の発達障害と診断されたけれど、どうしたらいいの?
この本は、そんなあなたのための本です。
視力が落ちてきたら眼鏡をかけるのと同じように、あなたの「困った!」によりそう道具や工夫をわかりやすく紹介しています。
イラストで読みやすく、困ったところだけすぐに引けます。困ったとき、あなたの傍で助けになる本です。
【目次】
1章 大人の発達障害とは
2章 仕事の困った!
3章 対人関係の困った!
4章 日常生活の困った!
5章 発達障害の治療

Amazon商品ページより

・発達障害ライフハック本、こんどは仕事との付き合い方。
・オフィスでのデスクワークを想定したシチュエーションが主なので、肉体労働など他の業種に就いている人には当てはまらないページが多い。けれども「相手との距離感の測り方」「雑談のやり方」「感情のコントロール方法」など役に立つノウハウもけっこうあるので、参考にどうぞ。
・外出の予定を立てる時は、トラブルが起きる前提で余裕をもってスケジュールを組むこと。仕事は100%の完璧な出来を目指そうとせず、70%くらいで肩の力を抜いてやること。などなど、こちらも色んなテクが載っています。
・毎章で「発達障害あるある」という当事者の困りごとの具体的なエピソードを挙げて、それに対するこれまた具体的な対策を示してくれる実用的な一冊。

『発達障害かも? という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』姫野 桂


発達障害の人が日々感じているストレスを減らせる
「#発達ハック」を多数紹介!
「なんでこんな簡単なことができないんだろう……」と自分を責めていませんか?
できないこと、苦手なことは、無理をせずに、「ちいさな工夫」(#発達ハック)で乗り越えましょう!

本書では、発達障害の方を対象に、
「みなさんの #発達ハック を教えてください! 」というWEBアンケートを実施、
126名もの方々から回答を得ました。
例 ・パワポ資料の作成をつい先延ばしに…… まず「ファイル名をつけて保存」だけでOK!
・人に相談されやすく、その内容に引っ張られやすい……返事はすぐにせず、翌日にしよう!
これらの回答を、「仕事」「日常生活」「人間関係」「体調管理」の4ジャンルに分類し、
発達障害の当事者でもある著者のワンポイント解説をつけて書籍化しました。
ご自分に合いそうな「#発達ハック」が見つかったら、ぜひ日々の生活に取り入れてみてください。
きっと、毎日が好転することでしょう。

巻末には、竹熊健太郎さんと鈴木大介さんによる豪華対談を収録!

【目からウロコの「#発達ハック」が満載! 】
電話で聞いた内容をすぐ忘れてしまう… ☞ 最後にもう一度言ってもらおう!
片づけられず、つねに散らかっている… ☞ 空き箱を用意して、とりあえず放り込もう!
会話が苦手で、何を言っていいか迷う… ☞ 定型文を覚えて、そのまま返そう!
電車やバスで過剰なまでにクタクタに… ☞ 「ノイズキャンセリングイヤフォン」を使おう!

Amazon商品ページより

・発達障害者の仕事や生活で役立つノウハウが詰め込まれたライフハック本。本書では「発達ハック」と呼ばれる。韻を踏んでいて響きがよい。
・まずは自分の苦手分野を見つける。それを踏まえて仕事をやりやすくするハックを紹介。日常生活や人間関係の困ったことを減らす取り組みも掲載。
・この記事で紹介している他の本と比べてページ数が半分以下で短くて読みやすいので、一冊持っておけばいざという時に使いやすい。
・「苦手なことは可視化せよ」「やることには優先順位をつけろ」。これらは本書に限らず色んな発達障害関連の本で言われているので、やっぱりそこ大事なんですね。


定型発達者、またはグレーゾーンの人向け


『発達障害の人が見ている世界』岩瀬 利郎

失礼なことを悪気もなく言ったり、
繰り返し約束を破ったり遅刻したり、
すぐに泣いたり怒ったり、
じっとしていられなかったり…

理解に苦しむその言動も、本人たちが物事をどう受け止め、感じているのか、つまり“見ている世界”を理解し、その対応策を学ぶことで、ともに生きるのが楽になるはずです。

たとえば、「発達障害の人には社交辞令や皮肉が通じない」といいう困りごとの場合、その理由が「脳の特性により、言葉を字義通りに受け取ってしまう」という原因によるものだと知れば、少しは気持ちが落ち着くでしょう。

そして、「発達障害の人と話すときは、極力ストレートな表現を心掛ける」という対処法にも納得がいくはずです。

この本では、大人から子どもまで、そんな身近にある困りごとを32個紹介し、その理由と対応策を紹介しています。

「自分も発達障害かも?」と思う人も、生きづらさの正体を知ることで適切にサポートを受けたり、対応策をとったりしていくことで、困りごとが解決されていくことでしょう。

特性を持つ子どもの親御様も、子育てが少し楽になるはずです。

定型発達の人でも、発達障害の特性に似た傾向を持つ人は、決して少なくありません。

また、発達障害との診断はくだらなくとも、発達障害の特性を持つ“グレーゾーン”の人もいます。

発達障害なのか。
グレーゾーンなのか。
定型発達なのか。

そういった診断的な面だけにこだわらず、さまざまなコミュニケーションの困りごとを解決するツールとしてこの本がお役に立てれば、これほどうれしいことはありません。

Amazon商品ページより

・「あなたの周りに空気の読めない人や、何を考えているのか分からない人はいませんか? その人は実は発達障害者かもしれません、本書を読んで理解を深めましょう」といったコンセプトの本。発達障害当事者としては「理解してもらう」というアレにはこそばゆいものを感じます。
・自分に発達障害の特性があるかどうかを知ることができる簡易的なチャート付き。もちろん医学的な診断にはならないので、そうしたことで悩み事がある人はお医者さんを受診しましょう。ちなみに私はだいたい当てはまりました。
・周りに発達障害者がいる人には、本書を読んで付き合い方のヒントを得てほしい。


その他 新書


『発達「障害」でなくなる日』朝日新聞取材班


発達障害は本当に「障害」なのか? 学校、会社や人間関係に困難を感じる人々の事例から、周囲が変わったことで「障害」でなくなったケースを紹介。当事者と家族の生きづらさをなくす新しい捉え方、接し方を探る。朝日新聞大反響連載を書籍化。

Amazon商品ページより

・DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)が定める基準によると、発達障害的な特性が見られるだけでは発達障害とは認定されないらしい。その特性によって何らかの困難が生じている場合に発達障害と認定されるのだという。つまり、発達障害による困難が消えれば発達障害は障害ではなくなるだろう、というロジックを本書は唱える。もちろん今すぐ「発達障害は障害ではありません!」と宣言するわけではなく、いずれそういう日が来てもおかしくはないだろう、というニュアンスである。
・「発達障害も個性!」と言われると「なに甘っちょろいこと言ってんだこっちは本気で苦しんできたんだよ」と臨戦体制になるけれど、「発達障害も個性! ・・・と言えるような社会にしていきましょうね!」だと「そうだよね!」と握手を求めたくなる、ちょろい私。
・発達障害による困難は男性よりも女性の方が多い。めっちゃ分かる・・・。「家事育児は女性がやるもの」という風潮は未だに強いし、「女性は気配りができて優しいもの」という謎のイメージも根強い。ADHD女性を追いつめるモノは何か、という出発点から本書は生まれたという。
・発達障害の女性は同じく発達障害の男性と比べても、うつ病罹患率、離婚率、非正規雇用の割合が高いとの研究データを示す論文がある。日本人女性は「おしとやか」「一歩引いて男を立てる」ことが求められるので、その対極に位置すると言える発達障害の女性に対する世間や家族の風当たりは強くなる。本来、そういうことはあってはならないけれど。
・発達障害者当事者の具体的なエピソードはもちろん、発達障害者の家族を持つ定型発達者が障害と向き合う話や、学校や会社に合理的配慮を求める話など、当事者が社会を生き抜くことがいかに波乱万丈かをヒシヒシと感じられる一冊。
・発達障害者が発達障害関連の本を読むと、当事者の具体的なエピソードが出てきた時に自分の古傷をほじくり返されて「ウッ」となることがあるので注意。いまの私みたいに。
・「障害者への合理的配慮により組織や社会の仕組みが変わると、これまで見直されてこなかった無駄なルールが是正されて障害者以外の人にとっても生きやすい社会になる。合理的配慮を突破口に無駄なルールや慣習を見直す、という発想が必要」と、放送大学の川島聡氏は語る。
 私はそれも一つの戦略だとは思う。だけど、よく言われる「障害者に優しい社会は健常者にとっても生きやすい社会である」という考え方にはなかなか賛同できない。それは「健常者のご機嫌を伺わなければ障害者の困難は解消されない」の裏返しだと思うから。
・巻末に、最近になって発達障害と診断されたニトリ会長のインタビューを収録。妻に言われたという「あなたは誰でもやれるようなことがやれないで、誰もやらないことがやれる」という言葉がなんかめちゃくちゃ好き。
・ここからは本の感想からは外れて、私の余談を書くね。
 余談その1。「ニューロダイバーシティ」という概念がある。ASDやADHDを障害というよりも、脳の仕組みや働きが異なるだけの多様性の一種と捉える考え方。それもポジティブな捉え方の一つだし、そういう考え方をすることでエンパワーメントされる当事者もいるでしょう。
 その一方で、シリコンバレーあたりのテック系では発達障害者を「個性的で才能あふれる人材」として捉える動きがあると、今週ちょうどラジオで聞いた。発達障害者を生産性という資本主義的な価値観で「寛容」に迎え入れる。それは障害者の権利運動からは切り離された、なにか別のモノ。
 発達障害者が「障害」でなくなる日が来るのなら、それはとっても理想的。だけど、障害から切り離された先に待っているのが資本主義的な価値観で値札を付けられる未来なら、なんかとってもイヤだなあと思った。(参考:『荻上チキ・Session』2024年6月3日放送回)
・余談その2。「合理的配慮」は広く使われている言葉であり、本書でもその呼称が用いられている。しかし最近では「合理的調整」のほうが現実に即した表記であるという指摘がされており、私もそれに同意する。「配慮」と言うと定型発達者側からの上からで一方的な「してあげてる」感があるけれど、実際に現場で行なわれていることの多くは職場内での相互コミュニケーションによる「調整」だと思うから。


『普通という異常 健常発達という病』兼本 浩祐


ADHDやASDを病いと呼ぶのなら、「普通」も同じように病いだーー
「色、金、名誉」にこだわり、周囲の承認に疲れてしまった人たち。
「いいね」によって、一つの「私」に束ねられる現代、極端な「普通」がもたらす「しんどさ」から抜け出すためのヒント
●「自分がどうしたいか」よりも「他人がどう見ているか気になって仕方がない」
●「いじわるコミュニケーション」という承認欲求
●流行へのとらわれ
●対人希求性が過多になる「しんどさ」
●本音と建て前のやり取り
●社会のスタンダードから外れていないか不安
●ドーパミン移行過剰症としての健常発達
●親の「いいね」という魔法
「病」が、ある特性について、自分ないしは身近な他人が苦しむことを前提とした場合、ADHDやASDが病い的になることがあるのは間違いないでしょう。一方で、定型発達の特性を持つ人も負けず劣らず病い的になることがあるのではないか、この本で取り扱いたいのは、こういう疑問です。たとえば定型発達の特性が過剰な人が、「相手が自分をどうみているのかが気になって仕方がない」「自分は普通ではなくなったのではないか」という不安から矢も楯もたまらなくなってしまう場合、そうした定型発達の人の特性も病といってもいいのではないか、ということです。――「はじめに」より

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・こちらは、これまで紹介してきたものとは毛色の違う本。
・「健常発達(本書ではある理由から定型発達をこう表記する)」も生きづらさを抱えてるんじゃないの? という問いから始まる一冊。他人からの「いいね」を求める承認欲求、「いじわる」を含んだ独特のコミュニケーション作法、などなど。
・確かに「普通」も生きづらいところがある。しかし「定型発達も生きづらいんだよ」という主張には、発達障害の生きづらさを相対化して矮小化してしまう危険性もあると考えた。「普通」が生きづらいと思うなら発達障害を引き合いに持ち出さないで、「普通」のほうのフィールドだけで論じてほしい。
・あと、帯に「ADHDやASDを病と呼ぶのなら」とあるけれど、発達障害は病(病気)じゃなくて障害だよ。病気と障害は別のもの。医学的な誤解を広めるような帯はやめてね。
・Audibleで聞いたけど「対人希求性」「宿痾」などの耳で聞いても分かりづらい難しめなワードが多くて、実のところ内容は一度聞いただけでは半分くらいしか理解できなかった。しっかり読みたいなら文字の本のほうがいいかも。Kindle Unlimited対応だし(2024/6/7現在)。ただ、あんまり読み返す気にはならない本だったかな・・・



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