見出し画像

自粛中の大発見?いまさら聞けないパンチと肩甲骨との関係性について書いてみた

筆者は金も地位もない爺さんですが、唯一の楽しみが週3回の格闘技ジムでのトレーニング。クラスにも参加するし一人サンドバッグに向かってパンチやキックを打ち込むことも大好きです。

トレーニングが終わると頭から水をかぶった位の大量の汗をかき気分スッキリ。私にとって格闘技は酒と暴飲暴食とストレスでボロボロになりつつある我が肉体を整えてくれる唯一無二の存在なのです。

そんな私の生活に欠かせないジムですが、そこは絶倫男達の巣窟でもあります。このコロナ禍のご時世に、あっちにフラフラこっちにフラフラ出歩く一部のジムメイトの存在を知ってしまった昨今、しばらくはお家でトレーニングに励むことにしました。

世相を反映して職場も開店休業状態。物ごとを考える時間が劇的に増えたのを機に、長年に渡って得心する説明を受けたことがないのにもかかわらず、やってみると『何か良いかも?』っと一人納得してしまう『パンチは肩甲骨で打て!!』ついて考察してみようと思います。

私は先天的な腰椎異常のため車椅子一歩手前まで行きましたが、武術・武道そして常に技術革新を続けるプロ格闘技などのエッセンスを抽出してまとめ上げた独自のトレーニング法によって健康な身体を取り戻しました。

それ故に身体意識であったり身体操作については一家言持っています。このたびは自分の経験や考えをシェアすることで誰かの健康に寄与出来たら思い、この項をタイプし無料公開としました。しかし、あくまでも個人の見解ですので文責は負いかねます。悪しからずご了承願います。

攻撃主軸の移り変わりとパンチの重要性

格闘技大国オランダから伝わった対角線コンビネーションに代表されるパンチとキックの組合せや、防御不能と恐れられたマッハ蹴りがもてはやされていた時代は過ぎ去り、近年では総合格闘技やキックボクシングのような蹴りが使える競技においてもパンチを攻撃の主軸に据えて闘う選手が増えてきたように思います。

個人的にも、格闘家が限られた時間の中で効率よくトレーニングして試合において結果を出すのであれば、パンチの技術向上に重きを置いた方がよいと考えます。人体の急所が集まる頭部に、数秒間に何発もの攻撃を放てるのはパンチしかないからです。

私が通っているジムにはK-1やRIZEで活躍しているプロ格闘家が出稽古に来ており、一般会員にしか過ぎない私でも彼らの練習を間近で見る機会が多くあります。チャンピオンクラスの彼らの動く姿はまさにお手本であり、トレーニングへのモチベーションは否が応でも高まります。

彼らを指導しているトレーナーは私達一般会員にも指導を行っており、トレーニングに拘わる時間の長さこそプロとは差があれど、その指導内容については大きな違いありません。同じことを教わっている私を含めた多くの一般会員と厳しいプロの世界で結果を残している格闘家との違いは一体何なのか?!

強烈な闘争本能が身体意識を変える

それは、持って生まれたものか後天的に育まれたものかは個人によって異なりますが、他人よりも圧倒的に強い闘争本能と、そこから導かれた身体意識の違いだと考えます。

プロ格闘家は己の拳足で相手にダメージを与え相手を戦闘不能にすることを常に考えて生きています。それは所謂、ノックアウトでの勝利をイメージしているということです。

文章にするとサラっと読み飛ばしてしまいますが、彼らは常に対戦相手を立ち上がれないほど痛めつける算段をしているのですから、これは結構、異常な心理状態だと言えます。

私は過去、色んな道場やジムに通いましたが、どんな場所にでも身体能力の高い人は一定数いるものです。しかもプロと変わらない練習量をこなす彼らとプロ格闘家との間にある、明確な実力差が生まれる決定的要因は、
相手を痛めつけることが躊躇なく出来るか否かなのです。

そして大半の人は誰をも踏みにじることのない、相手と共存する道を選びます。それはディフェンス能力を高める事で攻撃を捌きながら、自ら放つ打撃力を加減し相手に深刻なダメージを与えることを避けることです。

私も基本的には相手にダメージを与えたり、また自分が被ることは避けたいタイプですが、相手を倒そうとする強い意志が姿勢や身体意識に及ぼす影響をプロ格闘家のトレーニングで散見するにつれ、アマチュア選手達とハードコンタクトする機会も増えてきました。

かたやプロ格闘家は相手を倒す手段を常に考えトレーニングし、それを試合で実践して使えないものはスポイルし、使えるものはさらにブラッシュアップしていくのです。そして対戦相手の頭部やボディにダメージを与え倒そうとするプロ格闘家の強烈な闘争本能は身体のある部分に影響を及ぼします。

闘争本能と肩甲挙筋

それは頭の付け根付近から肩甲骨上部にかけて繋がっている肩甲挙筋が無意識下で収縮し、パンチが打ちやすいように肩を挙上させることです。俗にいう肩を怒らせるとは虚勢を張ることではなく、動物としての本能で戦闘態勢に入った状態をいうのです。

そして この時、無意識下では肩は怒らせた戦闘態勢となっていますが、それが日常化してくると、パンチに関連する筋肉群が自分が対峙している仮想敵に向かって収縮および伸展して備えます。

そのため外見的には逆に撫で肩に見えることさえあります。この状態になると肩甲挙筋は すでに筋収縮され肩肘も挙がり肩甲骨も開いているので、それを目標物に向けて開放するだけでパンチの威力だけでなく速さも格段に向上します。

画像4

ところで肩甲挙筋ってどこにあるの?!そう、場所が意識しづらいですよね。その部位が割合かんたんに意識出来るポーズがあります。それが欧米人がよく見せる肩をすくめる、このポーズです。

画像2

両手のひらを自分の方に向ける動作を取ったときに、肩甲骨のある部分が収縮する感覚が得られると思います。そこが肩甲挙筋の停止位置になります。その結果、肩が挙上し肩をすくめた、このおなじみのポーズが出来上がるのです。

あと空手の型である三戦(サンチン)で使用される立ち方も肩甲挙筋が意識できます。さら下肢を内に締めることでパンチを打つのに必要な上下肢を一つにまとめるポイントであるウナと呼ばれるツボから力を発する感覚を足裏に養うことができます。この三戦立ちからの基本稽古がフルコンタクト空手の肝となります。

画像4

この基本稽古が打撃力を養うのに適していると修行者が実感出来るからこそ、三戦立ちによる基本稽古はフルコンタクト空手各流派に伝わり現在まで残っているのです。

さらに不世出のボクサーであるマイク・タイソンも独特の構えとして知られるピーカブースタイルを用いることで同様の身体操作をしています。彼の着用している10オンスグローブの厚みを考慮しても、この構えをとるだけで肩甲挙筋を思い切り収縮させていることが見てとれます。なんせ首がなくなってますからね…。

画像5

全盛期のタイソンがリング上で見せた野生的で華麗な動きは高次元にまで昇華された芸術であり他者の追随を許しませんでした。


上下肢を一致させた
マイク・タイソンのハイブリット打撃法

それでは、ボクサーの完成形であるマイク・タイソンの打撃フォームを詳しく分析することで理想の打撃理論を構築していきましょう。

まず彼はステップの際に足裏から発生した力を巧みに上肢に伝え、パンチの威力と速さを高めることに成功しました。上半身と下半身の力を連動させることは非常に難しく、それを困難にしている要因は重心位置を前に置く、所謂つま先重心なのです。

近代格闘技はステップワークを使った攻防が重要なファクターとなる為、つま先立ちが推奨されることが多くなります。その結果、競技者は足親指の付け根である母指球に重心を乗せるようになります。

こうなると地面を蹴って生まれた力はふくらはぎから大腿四頭筋に流れ上肢に伝わらないのです。力を上肢に伝えるためには大腿部裏側のハムストリングスと身体背部の大筋肉群を連動させる必要があります。

カカト重心の必要性

そのために必要な身体意識・身体操作がカカト重心となります。そもそもカカトに重心を乗せて立つという行為自体、とてつもなく辛く感じる方もいることでしょう。特にヒール慣れした女性は、その傾向が顕著に見られます。

ここで大事なのは、たとえつま先立ちしていても、力の発生源であるカカトに意識を置くことなのです。

カカト重心が出来る様になると、マイク・タイソンのように深く膝を曲げた中腰姿勢の状態でも素早く動くことが可能となります。この時点で既にパンチのタメが出来ています。さらにそこに地面を蹴った力が加わり、それが身体背部の大筋肉群を通って肩甲挙筋を収縮させてスタンバイしている上肢に伝わるのです。

私が健康を取り戻すきっかけとなったのが24式太極拳を学んだことでした。健康体操のつもりで始めたのですが、講師が ガチ武術家だったので色んな種類の立ち方をさせられたものです。数分で地獄が見れます。お手軽です。全ての立ち方はカカト重心で行いました。そもそも母指球重心では、こんな中腰姿勢はとれません。

画像5

自分の感覚的には、足裏のカカト内側部分のウナと呼ばれるツボからハムストリングス⇒臀部まで一瞬で力が流れ、そのままスムーズに上肢に力が伝達出来ます。この中腰姿勢を保ってしばらく立っていると両手の掌がビリビリしてきます。

画像6

まとめると、マイク・タイソンはピーカブースタイルに、その有り余る闘争本能をプラスして肩甲挙筋を最大収縮させ、そこに下半身から伝達された力をミックスさせて爆発的な威力を持つパンチを撃つことを可能にしたのです。

世界中の多くのファイターが彼のスタイルを模倣しました。しかし、数十年の時を経た現在に至るまで、誰一人として彼のような成果は得られませんでした。マイク・タイソンの栄光の歴史はハードトレーニングは勿論のこと、対戦相手の耳を噛みちぎるほどの旺盛な闘争本能無しにはあり得なかったはずです。

タイプ終りの雑感

格闘技ミーハーな部分があった私は、10代の頃から様々な格闘技の道場やジムに通いました。最初に通ったのは高校への通学路にあった、コリアンタウンの路地裏にある空手道場でした。何の技術も教えてもらってないのに初日から防具を付け組手をやらされました。

そして、その週末には急遽試合に出ることになった私に手渡されたのは、何故か中綿を抜かれたぺらぺらのグローブでした。そのグローブで金属防具を付けた相手顔面を殴りまくったおかげで めでたく拳を複雑骨折しました。その時に道場責任者の師範は私にこう言いました。『お前、骨弱いなw』

その日から何十年が経過していますが、基本的に格闘技界は、こんな感じで変わっていないと思います。理不尽なことも多くあります。強さが全ての世界ですから当たり前といえば当り前だと最近は思うようになりました。

経営者が老若男女が集うジムにしたいと願い、集客をかけても末端までには、それは伝わらないものです。体重が数十キロ違う相手とのガチスパーや強引な投げ技による負傷・脱臼…。

もともと健康維持のために入会したのに、今では目には目を歯には歯をでは無いですが、『お前なんかに負けるか!!』っという気迫だけは表に出せるようになったかと思います。そうなると姿勢や身体意識に変化が見られるようになりました。

気迫や闘争本能が高まると身体に前述のような影響が出ることは、色んなシチュエーションでさまざまな選手を見て来たので、何となくわかっていたつもりなのですが、いざ自分に、それが出てくると嬉しいような怖いような何か複雑な心境となります。

私は自分が弱い生き物であることを自覚しています。だから昨日の自分よりも、ほんの少しだけでも強くなりたいのです。しかし自分が強くなるために他人を傷つけることはしたくはないのです。

短期間でしたが新格闘術に所属していたとき、アマチュアの試合に出たことがあります。試合に負けて洗面所でマウスピースを外して血まみれの口をゆすいでいると、新格闘術の祖である黒崎健時先生が、わざわざ席から離れて私のもとまでお越し下さり 笑顔でねぎらいの言葉をかけて下さいました。

弟子のプロ選手が試合で勝ってもニコリともしない黒崎先生だったので当時は大変驚きました。黒崎先生は、私が地方から月数回上京してトレーニングしているの門下生を通してご存知でありました。

さらに試合では相手がマウスピースを落とすというミスに乗じて攻撃を行わずフェアプレーに徹し全力を尽くしたことを分かって下さったのです。

学生時代のクラブ活動を含め指導者に、こんな温かい言葉を掛けて頂いたのは後にも先にもこの一度だけでした。黒崎先生は『必死の力・必死の心』を座右の銘にされていました。

当時の私には全く響かなかった、この言葉ですが、この先行き不透明な現代を生きる私たちに必要なのはこの『必死の力・必死の心』の精神なのではないでしょうか。

心の持ちようで身体は変わってきます。
そして身体は正しく使えば美しく整ってくるのです。

他人にインスパイアされることがあっても、
他人と自分とを比較することは無意味です。

昨日の自分より ほんの少し向上出来れば それで良しとしましょう。
私は私 あなたは あなた。そう、人は違いがあるから尊いのです。

written by 7th street

END



ご支援賜れば、とても喜びます。 そして、どんどん創作するでしょう。たぶn