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ドラマ「山のトムさん」について

私は元来犬派である。犬は人懐っこく、表情がわかりやすい気がするところが特に好きだ。実家では犬と暮らし、祖父母宅にも犬がいるので、最近まで一応の対立位置にある猫に触れることはほとんどなかった。
しかし、猫派の気持ちもわからなくはない。気ままなところ、優雅な動きは猫の魅力だろう。また、彼氏の実家にお邪魔した際に初めて猫と触れ合ってから、私もその魅力に惹きつけられることが増えた。

そんな私だが、昨日観たドラマによってより猫の良さを理解することになった。そのドラマは「山のトムさん」。


ちなみに、アマプラで観ました

なんだか見たことある雰囲気だなと思ったら、脚本は「かもめ食堂」や「マザーウォーター」と同じ群ようこさんだった。

物語はとある田舎が舞台。作家の女性が甥を連れて、友人とその娘のところへやってくるところから始まる。4人が暮らす家のネズミ対策として連れてこられたのが、猫のトムであった。

やってきた時は子猫だったが、これがめちゃくちゃ可愛いのである。そもそも子猫ってこんなにふわふわで小さいのか…と少し驚く。大きくなったトムももちろん可愛い。個人的にはハチワレ猫が好きなので、ちょうどドンピシャである。

ここまで書くと、猫にかなりフォーカスした映画のように思われるかもしれないが、実はそうではない。序盤〜中盤に掛けてはトムとそれを可愛がる4人の様子が特に描かれるが、徐々に人と人、人と動物、自然とのつながりに焦点が当てられていく。


では、後半になるにつれてトムの活躍が薄れてしまうのかというと、そういうわけでもないのではないかと思う。

まず、トムを最初のように皆して構うのではなくなったというのは、トムが家族の一員になったからではないだろうか。ただのペット、ではなく「ネズミ捕りという家庭内役割を持つ家族」という位置付けが浸透した結果そうなったのかな。

人と動物の繋がりを築くきっかけになったのもトム。最初にトムを迎えた後、4人はヤギ、ニワトリを迎える。トムのネズミ捕りのように、それぞれ乳を作る、卵を産むという役割を持つ。
人と猫、種は違っても一緒に暮らすというスタンスが最初にできることで、他の動物とも暮らせるようになったのではないだろうか。

よくドラマを見てみると、人と人の繋がりも実はトムが橋渡しをしているように感じられた。トムは近所に住む夫婦が4人のもとへ連れて来る。トムが体調を崩すことで、獣医との繋がりができる。獣医が万屋の主人にトムのことを話しているような描写。万屋へ買い物に行く作家の甥っ子と友人の娘…

このような新しい繋がりが、トムをきっかけに次々と生まれていく一方で、4人の中の繋がりもトムによって強くなっていく。すれ違いがあってなんだか顔を合わせ辛くても、トムはそっと近くに寄ってくる。特にここにおいて、トムが猫でなければならなかったのではないかと思う。
もしトムが犬だったら、すれ違う人と人の心情や歩み寄りをうまい距離感で表現し、繋ぐことができなかったのではないだろうか。犬が本来持つ、人間への忠実さや人懐っこさが、その瞬間の距離感、空気感を無理に縮めてしまっていたかもしれない。

この話の主人公、というわけではないけれど作品中で重要な役割を果たす。また、山の生活の中で人と人、動物、自然が繋がっていく。それらの様子から「山のトムさん」という題名がついているのかな、なんてことを考えた。


主人公ではないと言いつつも、やっぱりトムの可愛さは見どころの1つである。作品のように、田舎暮らし、野菜作りなど私も色々やってみたいことはあるが、猫を飼ってみるというのもやりたいことに追加しようと思う。


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