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【歌日記】5/30

◇歌
花はみな 散ると知らざるものなくに 言葉も花になさばなりなむ


 桜の時期が終わる頃、とある場での言葉のやりとりを眺めていて、古今集仮名序の

力をも入れずして天地を動かし、
目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、
男女の中をもやはらげ、
猛きもののふの心をも慰むるは歌なり。

紀貫之『新潮日本古典集成 古今和歌集』p11

という一文を思い出して詠んだ歌。
人に届いたかどうかはともかく、自分の心が慰められた。

 自然の様子に心を寄せて、古代の人は歌を詠む。比喩は、言葉にならない、語るに余る心を物に託してあらわさんとする切なる表現だった。物に準えるとは、物の、存在の力を借りることだった。五感に訴えてくる物をまねて、形のない心というもののありかたを知る、それが古来の人の仕方だった。

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