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映画『トラペジウム』について語る

「あ、この本、面白かったよ」 きっかけは3年前。高校生活がそろそろ終わりを告げてしまいそうな冬、クラスメイトと本屋に寄ったときのことだった。普段ジャンプ漫画ばかり読んでいる彼が小説コーナーで立ち止まったことに少しだけ興味を持ったのがすべての始まり。彼の指先は柔らかに微笑むひとりの女の子に向いていて、わたしはその表紙に見覚えがあった。 『トラペジウム』。 元アイドルが書いただかなんだかで、少し前から話題になっていた本。読んだことこそないが、加藤シゲアキの『オルタネート』と

    • 『デュラララ!!』という神アニメを布教する

      みなさんは、『デュラララ!!』というアニメをご存知でしょうか? 私が散々口にしてるので名前くらい知ってるという人もいるかもしれませんが、大手サイトで配信されてない本作品をこれまで見る機会が無かった人も多いはず。 というか、この令和の時代に自分からデュラララを見に行く人間は多分いない。もはや古オタクの黒歴史ともなりつつあるこのアニメを、今更紹介する人間もいないだろう。 そこで! なんとかフォロワーに布教することでデュラララオタクの人口を増やそうと思い、このnoteを書い

      • 『世界でいちばん透きとおった物語』を読んで

        大して期待はしていなかった。 梅田からの帰りがけ、なんとなく本が読みたくなって、予定の電車を見送り紀伊國屋書店にふらりと寄ったときのことだった。いつの間にか出ていた『ブルーピリオド』の新刊と、前から欲しかった凪良ゆうの『すみれ荘ファミリア』を手に取って、レジに並んでいた、まさにそのときのこと。 「ネタバレ厳禁」 蛍光のピンク色で大きく書かれたそのポップに、思わず目がいった。視力がそこまで良くないわたしにはその下に書かれた説明文をうまく読み取ることができず、少し身を乗り出

        • ネットミームについて考える

          はじめに 「思想が強い」と、この人生の中で度々言われたことがある。自分としてはまったくそのつもりはないのだが、周りから見ればどうやら、偏った思想を頑なに譲らない人間だと思われているらしかった。 そもそも思想が強いとはなんぞやと思い友人に尋ねてみたところ、「(7molは)苦手なものに対しての考え方が過激なんだよ」との言葉が返ってきた。苦手なものは誰にだってあるだろうし、そこまで矢鱈と口に出している自覚はない。これを聞いたときは正直なところ不服だった。だが、私は一体苦手な物のど

        映画『トラペジウム』について語る

          『オツキミリサイタル』への愛を語る

          以下、ボカロサークル「まちか音」でボカロ"一選"を募られた際、私がその選考理由の欄に記載した文章です。 *** 「信じ続ける未来の話」。 そう題されたこの楽曲を、私が初めて聴いたのは小学生のときだった。兄にこの楽曲の存在を教えられたとき、こっそりと親のパソコンを拝借し、心躍る気持ちでニコニコを開いたことを今でも鮮明に覚えている。そんな思い出のこの楽曲『オツキミリサイタル』を、私が一選に取り上げた理由は、主に3つある。 まず1つ目は、じん(自然の敵P)氏のその他の楽曲要

          『オツキミリサイタル』への愛を語る

          『ドキドキ文芸部』感想と『きゅうくらりん』考察

          先日、有難い先輩からの助言によりDDLCこと『ドキドキ文芸部』をプレイすることになりました。かなり文句を言いながら進めたにも関わらず、いざ終えてみるとそのストーリー性に興奮冷めやらずこうして感想を書くまでに至っています。 ゲーム内容の個人的な思いを好き勝手に述べた後、きゅうくらりんとDDLCを絡めた考察に言及するつもりです。多くのネタバレを含むため、未プレイの方は絶対に閲覧を避けてください。自らプレイをする・もしくは実況を見るなどした後に戻ってくることをお勧めします。 ※

          『ドキドキ文芸部』感想と『きゅうくらりん』考察

          『推し、燃ゆ』宇佐見りん

          推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。 あまりにも簡潔で苦しい書き出しに心を掴まれ、この本を手に取ったのはちょうど1年前のこと。実際に推しが燃えたことをきっかけに、再び読んでみることにした。 まず、何よりも読みやすく綺麗な文章だった。どこまでもまっすぐに推しを推す主人公の心の描写が、自然に入り込んでくる。普通なら言語化できないような推しへの感情がなだれこんでくる感覚はちょっと不思議だった。 "その坊主を好きになれば、着ている袈裟の糸のほつれまでいとおしくなってくる。そうい

          『推し、燃ゆ』宇佐見りん

          『君のクイズ』小川哲

          いやらしい終わり方だったと思う。 かねてから気になっていた本だった。クイズ大会の決勝で「ゼロ文字押し」をしたライバルに敗れ、優勝を逃した主人公の話ーーという、題材も筋書きも過去に類を見ないもの。ミステリーは苦手だったけれどクイズを扱った小説は初めてで、絶対に面白いんだろうなという根拠のない確信をもとに手に取った。 読む手が止まらなかったという点では、確かに面白かった。こんなに読み易い本は久々で、クイズに浅くとも触れているからこそ面白かった部分もあるんだと思う。「クイズに正

          『君のクイズ』小川哲

          『教育』遠野遥

          1年の歳月を経て、読了。 これは私が途中で読むのを断念した初めての本、かつ、誰にも勧めたくないと思った唯一の本だった。高校3年生の冬、表紙に惹かれて買っただけの私は冒頭からその刺激に耐えられず、今日に至るまで一度も手に取ることがなく。きもちわるいなあ、というのが当時の率直な感想だった。 タイトル通りかなり歪んだ「教育」のお話。狂った設定も多かったけれど、学校の制度が絶対なんだと生徒が洗脳されている様は笑いごとではないのかなとも思ったり。 進級を決めるテストは学力ではなく透

          『教育』遠野遥