『君のクイズ』小川哲



いやらしい終わり方だったと思う。



かねてから気になっていた本だった。クイズ大会の決勝で「ゼロ文字押し」をしたライバルに敗れ、優勝を逃した主人公の話ーーという、題材も筋書きも過去に類を見ないもの。ミステリーは苦手だったけれどクイズを扱った小説は初めてで、絶対に面白いんだろうなという根拠のない確信をもとに手に取った。

読む手が止まらなかったという点では、確かに面白かった。こんなに読み易い本は久々で、クイズに浅くとも触れているからこそ面白かった部分もあるんだと思う。「クイズに正解することは人生を肯定してくれる」という表現は一見大袈裟に聞こえてしまうかもしれないけれど、実際に正解したときの高揚感を知っているが為に、分からなくもないと思った。また、主人公の頭の中で進んでいく話は没入感があってかなり好き。そのような構成は別段珍しくもないが、クイズの思考・過程・言動に至るまでの全てが緻密に描かれており、身近なことが事細かく言語化されてしまうという"不思議"の中に気持ち悪さと面白さが共存していた。

でもやっぱり一番の感想は、前述の通りいやらしい終わり方だったなあ、ということだ。爽やかな気持ちでなど終わらせる心算は毛頭無いのであろう終わり方。途中で感動して涙ぐみそうになったところを一気に現実に引き戻されて、無理矢理苦いオチをつけられる。帯の煽りにつられ、きらきらとした目で大どんでん返しを期待していた私にとっては少し物足りない結末だった。これが好きな人と嫌いな人がいるんだろうなあという感じ。結局、周りのクイズプレイヤーたちが「面白かったけど、あんまりかな」と言っていたことに概ね賛同する結果になってしまった。確かに要所要所はとても面白いポイントが詰まっていたんだけど、どういう訳か最後まで通して読んだ感想として「あんまりかな」となってしまう。ちょっとだけ残念!

私はそんなにクイズに詳しいわけではないからあんまり深堀りをして語ることはできないけれど、逆にまったくクイズに触れたことがない人なんかが読めば話は変わってくるのかなと思う。おもしろい本なんだと思うし、文量の割に刺さる人にはきっと刺さる。もし今から読もうという人がいたら、是非読んで感想を聞かせてほしい。

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