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映画『プラットフォーム』

2019年公開のスペイン映画。

くだらないホラー映画を観たいと思っていたのに、サムネイル画像の洗練されたデザインに惹かれて観る事にした。
結果、想像超える秀作だった。

部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が"プラットフォーム"と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかない。
主人公の男性はある日突然この建物の48階層で目覚めるところからストーリーは始まる。

一見ホラー映画のようなストーリー設定だが、ここで描写されたのは極限状態の人間の心理だった。

蜘蛛の糸ように上から降りてくる"プラットフォーム"に飢えを凌ぐ為に集まる人間達の様子には肉体を持つが故の本能的な凶暴さや醜さすら感じ取れた。

上の階層が下の階層の人間を見下し、傍若無人に振る舞う姿には、貧富の差や身分の差、その他環境における人間の差別意識の縮図として描画されているように見える。

追い詰められた環境の中で正義と思って取った行動は、外の世界から客観的な視点を向けた時にそれが過ちになる事もあるだろう。ただ行動を起こす事自体は無駄ではないかもしれない。

作品の意図は分からないが、置かれた環境によっては誰もがこの映画の登場人物達の凶暴化し、残酷な醜い争いを繰り広げる可能性はあらゆる人間が持っている事を再確認させられた。


無駄な登場人物は出てこない。変わり映えしない無期的な室内。彩度の低い映像。
ミニマムで無駄な描写がなく、洗練された空気感だからこそ登場人物の演技が引き立つ演出。
ジャンルがホラー映画に分類されるだけあって、残酷で生々しい描写も多い。
それでも、ヨーロッパ映画らしい淡々とした演出はとても気に入った。

ただの騒がしいホラー映画に飽きた人や、明るいヨーロッパ映画では物足りないと感じている人にはお勧めしたい作品。

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