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[ルポ④] "多重下請け"の"偽装請負"を無くすのだ

始めに言っておこう。
『偽装請負』は、労働者派遣法及び職業安定法によって禁止されている違法行為である。

偽装請負とは、契約上請負の形を取っていますが、実態としては、お客さまの管理のもと、常駐している社員が、お客さまの指揮命令下で業務を行うという、派遣業務を偽装した業務形態のことを言います

j-net

日雇い派遣の現場は、偽装請負やりたい放題だ。

全くチェックが入らないので、私はあちこちで、何度も何度も通報してきたが、きっと今もどこかで行われていることだろう。


怪しい物は証拠の写真を撮っておくと、後で役立つ。
もちろん、就業条件明示書等の書類も全て保管している。

この日は、A社の仕事で就業という契約だった。
現場に着いて休憩場で「A社の方はいませんか?」と近くの人に聞いたところ、B社の人間が来て「それ、うちらと一緒なんで」と言う。
会社名が丸っきり違うので、戸惑ったが「ここに名前書いて。このリストはA社の名前だけど、うち(B社)のスタッフだから間違えないでね。C社の人にはA社と言っても伝わらないからね」と指示された。始業時間間近なため、疑問に思いつつも、言われた通り、リストに名前を書いた。

作業の指示者は、1日中、就業現場の大手スーパーの物流センターC社の社員から直で行われた。A社の人間は、一度も姿を表さなかったし、B社の人たちは出席簿の記入指示以外はしなかった。

スマホで調べてみると、  使用者不明型というタイプの典型的な偽装請負だ。

就業先のC物流センターも、ある意味、被害者か?それとも無知なコンプライアンス違反者か?騙されたのかわからないが、偽装請負に加担しているのは事実。

派遣会社に相談しても、知識と危機感が無いから「いつも通り何もしない」が、この日はラッキーなことに、C社の休憩室で"ご意見ポスト"を発見した。

"存在を隠されていたA社"のことも、書いておくか。

腱鞘炎のため、字がキレイに書けない


あちこちの現場で何度も通報して、すっかり労働問題に詳しくなった私は『改善提案』をわざわざ書いて教えてあげた。
リスクマネジメントのアドバイスを、ボランティアでしてあげるのだ。


労基が動かないからと、なんでもかんでも好き放題やっている現場は少なくない。

「明らかな違法行為」で、「動かぬ証拠が明確」であるときは、直接、"派遣先"や"現場の管理責任者"や"関連の取引先(サプライチェーン統括など)"に教えてあげると、違法行為がピタっと止まることが多い。

業務改善提案のお手紙をC社のポストに投稿して1週間もしないうちに、派遣会社の求人ページから、Aの求人を見なくなった。

調べたところ、この幽霊会社Aはイベント設営や物流をしている会社で、もちろん派遣業の資格は持っていない。


こういうのはサプライチェーンや現場の主企業が取り締まらないと、思わぬリスク要因となるのだ。
私が"地獄の底辺日雇い労働者"だった頃は、今ほどSNSが盛り上がっていなかったが、YouTuberやTwitterでバズることが増えた今日では、こんな不正やりたい放題の企業は、思わぬところで大変な損失を被るだろう。

派遣会社は、登録スタッフのことなんて、どうでもいいやと適当な対応をしているのだが、実は、本当に被害を被るのは派遣先、派遣先の携わっている現場なのだ。
偽装請負に加担なんてしていると、派遣先は裁判で負けるし

『労働契約申込みみなし制度』というペナルティを被ることにもなる。

「派遣じゃなくて、請負や日々紹介だもーん。派遣として送り出してるわけじゃないから、うちは関係なーい」と、通報しても無視して日々大量の派遣スタッフを偽装請負の現場に送り込んでいる派遣会社は、お得意様を危険に晒して平気な顔をしている、悪徳企業なのだ。

企業の社会的責任(CSR)など無いくせに、それらしいことをIR資料に、ありきたりな文章で書いて、株主をも騙している。

「過去に何度も業務停止を食らっている」ことこそが、この派遣会社の本質であることを、ステークホルダーに教えてあげたい。


怪しい仕事を察知する能力が鍛えられてしまった私は、最近は闇バイトの募集と思しき怪しすぎる案件は通報して、仕事紹介サイトから消えるように協力している。

この他にも沢山の犯罪的なケースや違法について、通報や抗議をして是正させてきた。


しかしこのような地道な活動で、問題のある現場の改善や是正を何度も成功させてきたものの、現場の従業員や日雇い派遣スタッフらからは一度も感謝されたことはない。

それどころか「会社に逆らうなんてバカ」「ご苦労さんなこってす」と何度も言われたし、親からも「お前はバカだ」と言われ続けた。

ビッグモーターみたいなブラック企業の不正や、パワハラのニュースには「こういうの許してはいかん!」と怒っているのに、私のように正当なやり方で通報する人が身近にいると「何やってんだ?」「無駄だ」「そんなことして意味あるの?」「バカみたい」と、冷めた眼差しを向けるのである。

そんなこと、今まで何度もあった。
感謝されたことは一度もない。
でも、何故か見過ごすことはできない私は、何かしらアクションを起こしてきた。

最近わかったのだが、私がINFJタイプの人間だからだろう。

今は、リスクマネジメント業務をしているので、この性格傾向は役に立ってくれている。


「自分は間違っているのかも」
「何もしなければ良かったのかも」
と、何度も考えたが、そんな時、いつも絶妙なタイミングでamazarashiの新曲が発表されて、迷いが払拭されるのだった。

境界線の向こう側で 足掻く人々 嘆く人々 目にしながら 沈黙することを 選択するならば 僕らは共犯者 人たりえたのか

存在価値は いつだって自分の中 ここに宿る 銘々の色 胸に抱いたなら 微かに灯る火が 最後の星空と どこか似ていたんだ

「境界線」
歌:amazarashi
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ


この曲が胸に染み入り、深く感慨を抱けたこと。

それが一番のご褒美かな。


あと、もう一つ良いことがあった。

こんなことばかりやっていて、めっきり労働問題に強くなったので、自分の労働争議では総額200万円勝ち取れたこと。

「情けは人のためならず」は、本当だった。

その時のエピソードは、こちら。

不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。