『食品工場 デリカの白うさぎ』〜暗黒労働おとぎ話〜
※ 暗黒労働おとぎ話とは:あまりに酷いため、ブラック企業の実態をありのままに書けず、物語にして伝える試み
むかし とあるコンビニの食品工場に働きに来た 白うさぎがおりました。
工場に入るには、手を洗わなくてはいけません。
1つ、手をせっけんで洗ったら手袋をし
2つ、アルコール消毒液のバケツに手を浸し
3つ、次亜塩素酸ナトリウムの消毒のバケツに手を浸し・・・
すると、なんということでしょう。
手袋に穴が空いていたので素手に消毒液がついてしまいました。
何かの手違いでしょうか。
他の手袋も全部穴が空いていたのです。
しばらくすると、手が痒くなり赤くなってしまいました。
「うぇーん、痛いよ!」
うさぎが泣いていると、若い社員たちが通りがかりました。
「そのまんまでも問題ないよ。大丈夫だよ。」と言いました。
うさぎは教えられたとおりに、そのままにしていると、さらにもっと痛痒くなりました。
そこへ、次亜塩素酸ナトリウムの毒性に詳しい神様がやってきました。
「かわいそうに。
まずその穴の空いた手袋を外して、
手をよ~く洗うんだ。
それから新しい穴の空いていない手袋に変えるんだ。」
うさぎはその通りにしました。
すると、しだいに痛みも痒みも消えて、手は元通りになりました。
心のやさしい神さまは、社員にも次亜塩素酸ナトリウムの毒性について教えました。
そして穴の空いている手袋を捨て、穴の空いていない手袋に取り変えてもらいました。
白うさぎは、こうして無事に、フルーツの洗浄室まで行けました。
今日はキウイを洗う仕事です。
白うさぎは大きな洗浄釜の前でキウイを出したり、入れたりしていました。
すると、目が沁みてきて、だんだん赤くなってしまいました。
「うぇーん、痛いよ!」
うさぎが泣いていると、ふたたび次亜塩素酸ナトリウムの毒性に詳しい神様がやってきました。
「これをつけなきゃいけないんだ。」と壁にかけてあったホコリをかぶったゴーグルを、うさぎに渡しました。
よく見るとゴーグルには「洗浄釜用」と書いてありました。
次亜塩素酸ナトリウムを大量に取り扱うときは、ゴーグルをしなくてはいけないのです。
不幸なことにそれを指摘する神様が、長いあいだ現れなかったのでしょう。
この心やさしい神さまは、近くにいたベテランのパートさんにも、次亜塩素酸ナトリウムの毒性について教えました。
しかし、かわいそうな白うさぎの目は、真っ赤になったまま、もう元に戻ることはありませんでした。
だから今でも、白うさぎの目は赤いのです。
おしまい。
⭐︎工場なので、水で希釈する工程は社員任せであった
⭐︎次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ)
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