見出し画像

日雇い派遣 底辺カルタ な~は行 /かえってきた小人


【な】なんでかな 行きはバスあり 帰り無し(送迎バス)

【に】人間性 まるごと否定の ブラック企業

【ぬ】抜き差しならぬ 天引き費用に ご用心

【ね】狙われる 荷物置き場の 貴重品
※私な雑貨やイヤホンを盗られた。

【の】のんびり屋 給料もらえず 帰される

【は】ハケンさん みんなの名前は ハケンさん

【ひ】酷すぎる 仕打ち受けたら 訴えろ

【ふ】不公平 ここの現場じゃ "あたりまえ"

【へ】平穏な 現場は 奇跡の確率だ

【ほ】骨折り損のくたびれ儲け


今回の≪ちょいと小話≫コーナーは
【は】ハケンさん みんなの名前は ハケンさんにちなんだ、暗黒労働おとぎ話をお届けします。


※暗黒労働おとぎ話とは:あまりに酷いため、ブラック企業の実態をありのままに書けず、メタファーにして伝える試み


【かえってきた こびと】


むかし、あるソフトウェアの会社に、入社したての営業マンがおりました。

彼は一刻も早く、会社で一目置かれる存在になりたいと思い、ついつい嘘八百を並べたてて、社運を賭けるほどの大きなソフトウェア開発の契約を結んできてしまいました。

この無茶苦茶な契約締結の知らせを受けた営業部長は、泣き出しそうになりました。

深夜をまわったオフィスで営業部長が一人呆然としていると、どこからともなく小人がやってきました。

「おれが代わりに、そのソフトウェアを仕上げてやったら、何をくれる?」

小人が話しかけましたが、部長は会社に寝泊まり3日目の上、ショックでボーッとしていたので、まったく良い案が浮かびません。それどころか、小人が実在なのか、それとも非実在なのかも、よくわかっていませんでした。

そこで小人は「じゃあ、とりあえず、おれが作った契約書にサインしてれ」と契約書を差し出しました。

部長は「おお、お安いご用だ」といって、眠い頭で、署名欄に自分の名前を書きました。



翌日から、小人は”臨時社員”という立場で、この会社で働くことになりました。

この会社にいる、どの社員よりも、いっしょうけんめい頑張りました。

そしてたった1週間で、絶対に不可能だと言われていたソフトウェア一式を完成させてしまいました。


営業部長も、新人の営業マンも泣いて大喜びしました。


営業部長は小人に手厚くお礼を言って、小人と交わした契約書に今一度目を通しました。


すると・・・営業部長はおどろきました!


業務請負契約書の請負金額は「500円」と書いてあったはずだと思いましたが、「500百万円」という、財務会計でよく見られる不可思議な単位で記載されていたのです!

営業部長は、まっ青になりました。

営業部長は「もう少し安くならないか!?」と、小人に泣きつきました。

その姿を見てかわいそうになった小人は
「3日以内に、おれの名前を当てられたら、契約金額を50万円にしてやるよ」と言ってパッと消えました。


そこで会社の人たちは一生懸命、小人の名前を思い出そうとしました。


営業部長は
「ああ、あの”アルバイトさん”のことは、ずっと”アルバイトさん”としか呼ばなかったからなあ」


営業マンは
「ええ?”ハケンさん”じゃなかったんですか?」


社長は
「見かけん顔だから新しい”パートさん”が入ったんだなと思ってたんだ。」


このように、誰も、一度も、小人の名前を呼ばなかったし、そもそも非正規社員の名前なんてどうでもいいやと、思っていたのでした。


3日後に、ふたたび小人が姿を表しました。

「おれの名前がわかったか?」と、小人は営業部長の顔をのぞきこみました。


営業部長は正直に答えました。
「かんにんしてくれ。アルバイトさんっ!」


すると、小人は「契約締結」と一言言ってパッと消えてしまいました。

同時に会社の銀行の預金「500百万円=5億円」も小人と一緒に消えてしまいました。

それを見た社長さんはかんしゃくをおこして、ひっくり返ってしまいました。



銀行通帳の取引明細には、あの小人の名前が書いてありました。





    

 ルンペルシユテイルツヒエン






そう、あの小人こそ、かの有名なグリム童話『がたがたの竹馬こぞう』に登場する、ルンペルシュティルツヒェンだったのでした。


おしまい



不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。