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「即戦力になる優秀な新卒」はUMA(未確認生物)か

「新卒や未経験者に即戦力を求める会社」は、まとめサイトで話題になるくらいなので、結構な数、存在しているのだろう。

「新卒で即戦力になる」
本当に、そんな人はいるのだろうか?

多くの人がツチノコの存在を完全に否定せずに「きっと、どこかにいるかもしれない」
と思っているように「即戦力になる優秀な新卒」のようなUMA(未確認生物)も「きっと、どこかにいるかもしれない」と、思っているのかもしれない。

本noteでは、470社で働いた私の見聞から、「即戦力になる優秀な新卒」について、個人的な意見を述べる。


大きい会社なら、しっかりとした研修制度があるところが多いが、多くの中小零細企業では
①研修カリキュラムが存在しない
②教える人がいない
③時間が無い
という理由で、ろくに研修をやらなかったりする(もちろん例外もあるが)。
会社の問題なのだが、そこを無視したいので「入社後すぐに、ベテラン社員並みに成果を出せる人」が来れば「研修しない問題は解決する」と思っているのだ。

本来「即戦力となるのは中途採用」というのが常識なのだが
①安い給料で雇えない
②何かと意見してうるさい
③よその会社と比較する
④会社色に染められない(洗脳できない)
と倦厭する。
なので、反対の「安い給料で雇えて、世間知らずなので意見がなく、洗脳しやすい、優秀な新卒」がいたらいいなと思っているのである。

しかし、現実は厳しい。
「世間知らずで、安い給料で、そんな会社でしか働けない」のは、すでにその時点で優秀な人間ではないのだ。

体を動かす系の中でも、特に単純な仕事(例えば、鮮魚や精肉でもない、スーパーの品出し限定とか)ならまだしも、営業や電話やら事務やらは無理だろう。配送も、ルートや荷物の置き方、配達のコツを知らねば効率的に時間内に終えられないし、引っ越し作業だって、梱包、運び方など、コツを身につけていかねばならない。

情報系学科でITを学んだ学生をジョブ型雇用で雇い入れるとしても、環境の整った教育機関とはワケが違う。
会社のマスタデータすらありませんとか、ネ申エクセルだらけですとか、この業務は◻︎◻︎部の○さん以外は知りませんだの、◻︎◻︎部の○さんに聞くと「マニュアル?そんなの無いし・・・、まあ、見てれば、そのうちわかるよ」(言語化拒絶)。
そういう肥溜めみたいなところに配属されたら、流石に即戦力にはなるどころか、哀れな新卒さんは、3年どころか3ヶ月、最短3日で会社から逃げ出す。
そんなところに配属されたら、IT職歴の長い派遣社員だって、次の更新は無しだなあと思うし、業務請負のフリーランスだって逃げることが多いと聞いている。

では新卒で、学生の時のバイト経験が豊富な人であれば、そのスキルを活かせるか?というと「うちの仕事はバイトとは違うからさー。そんな経験は、ここでは活かせないと思うよー」なんて、上司にドヤ顔で言われてしまう。そういう光景を私は何度か目撃した。

長らく日雇い派遣だった私は、なんだかんだあって、最近はエリートだらけの会社で働けるようになった。年収1000万超えの社員が沢山いる、トップレベルの大企業である。

そういう会社は、就活中の学生に好条件の労働条件を提示する。なので当然、大学生の間で人気となり『就職したい企業ランキング』TOP100に入るのである。

エリートの多い会社には、当たり前だがバカはいないので「即戦力になる優秀な新卒」なんてのは期待しない。新卒採用後は、カリキュラムに沿った研修がみっちり行われ、スキルや知識を身につけさせてから、徐々に仕事に慣らしていくのである。

そういうわけで、空想と現実の区別がつかない「即戦力になる優秀な新卒」を本気で求めてしまう会社には、そういう人が来ることはないし、大学生に人気のある大企業は「優秀な新卒」は採れるが、即戦力なんて求めず、ちゃんと教育し、時間をかけて育てるので、やはり「即戦力になった優秀な新卒」はいないのである。

これが470社で働いた私の結論である。

※もし入社即日からベテラン社員を凌駕する新卒の目撃情報があったら、コメント欄で教えてほしい


新卒に限らず「即日から即戦力」を期待する奴らの暴挙には、いとまがない。

酷いと、まだ学生身分のインターン生にさえ、即戦力を求める会社がある。インターンとして入って2、3日目なのに、完璧なパワポ資料を1発で完成させようとさせたり、エクセルのIFやvlookup関数などが出来ないと「こういうの出来なきゃダメだよ」と圧をかける、しょうもない社員なんかがいた。

派遣の場合は、来て1週間以内に一人前になれという事務もある。酷いと会社の事業の紹介すらされない。ここは何の会社で、この部署はどういうことをやっているのかすら、わからない。非常に限られた範囲の業務しかやらない限定業務ならまだしも、事務仕事で会社のことが何もわからず、謎に包まれているのは辛い。推理みたいに、後から輪郭が明瞭になるなんてことも少なくなかった。
研修をしたうえで、1ヶ月は仕事に慣れる時間が欲しいものだ。
酷いところは入社して3日間、何も教えられなかったので「この会社の仕事ですが、具体的にどういう事をしてるのですか?」と聴いただけで怒鳴られた。

テレオペの場合、OJT(上司や先輩が実務を通じて指導するレクチャースタイル)は1度きりで、初日の夕方、もしくは2日目から本番に入り、独り立ちするというところも多い。
そういうところで鍛えられまくった私は、
30代になる頃には、どこでも直ぐに対応できるほどになったが、普通の人間、特に電話対応初心者は早々に脱落していく。

だから100人投入された現場でも、1ヶ月後には生き残りが5人しかいなかったりする。
私がその5人のうちの1人だと知った時は驚いたもんだ。「自分、すげえ」と思った。
サバイバルゲームの生き残りソルジャーな気分が味わえた。

せっかく求人を出したのだから、もう少し研修に時間を割いて、慣れさせればいいのにと思うのだが、行き当たりばったりに人員をぶち込んでは逃げられるを繰り返す、この風習は長らく変わっていない。
だからテレオペは、いつだって人手不足なのだ。

ちなみに日雇いバイトで働いていた時、ベテランパートと単発バイトの作業スピードをタイマーで測り、競わせていた現場があった。
そこの工場長は、ついさっき来たばかりの単発バイトが、この道20年のベテランパートより作業スピードが遅いと、ドヤ顔をして嬉しそうに「使えねえなあ」と言うのである。

新卒や未経験者に即戦力を求める人達は、こんな人達と同じレベルなのかもしれない。

新卒の見極め以前に「ベテラン社員のお前は、果たして会社にとってプラスの存在なのか?」考えてほしいと、私は常々思っている。
だが、悲しいことに「本当の馬鹿は自分が馬鹿だと自覚できない」ので、もし自覚できる馬鹿がいたら・・・、それもまたUMAなのかもしれない。

思索に耽った末、もはや UMAしか いない世界線になってきたので、考えるのはやめにしよう。

不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。