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【休職からの復職体験談】(7)[番外編]もし退職することになったら

(7)では、復職がかなわず退職する場合を解説します。

私自身、復職ができず退職したことがあります。経験を振り返り、前もって知っておくとよいことをまとめました。目次を見ていただき、気になる所だけでもチェックしてみてください。

「知らなかったら損することを、事前に知っておくこと」が重要なポイントです。

退職は終わりでなく、再出発に向かう第一歩です。体調が回復し、再び働けるようになることを心から願っています。

※記事内の情報は、自己責任で利用をお願いします。

注意事項

(法律や手続きの専門ではない)患者が得た情報を記載

私は法律の専門家ではなく、公的機関や支援機関の職員でもありません。患者視点で書いているので、患者が見落としがちなポイントをこの記事からつかんでいただけると嬉しいです。

法律や手続きに関しては、専門家(弁護士、社会保険労務士)や公的機関の情報で確認をお願いします。

手続きに関しては、以下の3点をオススメします。
[1] 退職に関する本を読む
[2] 手続きの前に、最新情報を確認する
[3] 疑問点があれば、問い合わせる

[1] 退職に関する本を読む
退職後の手続きやトラブルについては専門家(弁護士、社会保険労務士など)が執筆した本を読んでおき、法的に正しい情報を漏れなく得ることをオススメします。お金に余裕があれば、1冊を辞書代わりに持っておくとよいです。書店(ネット書店でも可)や図書館で退職に役立つ本が見つかります。

●退職に関する手続きに関する本
社会保険労務士が執筆していて、出版がなるべく最新で、かつ、ご自身がわかりやすい本をオススメします。

以下は、私が読んで分かりやすいかった本です。
・「2023-2024年版 図解わかる 会社をやめるときの手続きのすべて」中尾 幸村、中尾 孝子 (著)(新星出版社)
・「会社を辞めるときの手続きマル得ガイド<改訂2版>」土屋 信彦 (著)(アニモ出版)
・「病気やケガで働けなくなったときに知っておきたい「制度」と「お金」」 脇 美由紀 (著)(ビジネス教育出版社)

●退職時のトラブルに関する本
弁護士が執筆していて、ご自身が分かりやすい本をオススメします。以下は、私が読んで分かりやすいかった本です。
・「会社のきれいなやめ方 退職のプロが教えます!」弁護士による退職代行サービス研究会 (著)(自由国民社)

[2] 手続きの前に、最新情報を確認する
本の出版以降、法律が改正されているケースがあります。ネット記事も同様です。手続きをする機関(協会けんぽ、ハローワークなど)のウェブサイトで最新情報を得ることを強くオススメします。

[3] 疑問点があれば、問い合わせる
わからない点を勝手に自己判断するのは禁物です。役所などの窓口は、問い合わせると教えてくれます。私の経験上、ウェブサイトを確認してから問い合わせるとちゃんと答えてもらえました。

その窓口で情報を持っていない場合、どこに聞けばよいか聞いてみましょう。何ヶ所か当たっているうちに、自分がほしい情報が見つかります。相手に過度な期待をせず、聞きまくってみるのがオススメです。


(メンタルの専門家ではない)患者による「心がけのヒント」を記載

この記事に書いた心がけは、一人の患者の経験と考えです。メンタル面で専門的なことは、医師や公認心理師など専門家から情報を得てください。

自分の強い思いとは裏腹に退職になっています。タフなメンタルを持っている人でも凹むのが当然です。誰でもメンタルケアが必要になるツライ時期をうまく乗り切りましょう。


1.(退職を決める前)退職を回避できないか再確認する

退職を決まっていないのなら、退職しなくてすむ方法がないか再確認してみることをオススメします。「確認しておけば、退職しなくてすんだのに!」と後で悔やむことはしてほしくありません。

もし退職を決めている場合、読み飛ばしてください。

なんとか退職しないことをオススメする理由

退職の回避をオススメする理由は、下記3点です。
[1] なんとか復職できる可能性があるかもしれない
[2] 自分から退職を申し出ると、退職で話が進む
[3] (一般的に)病気で退職すると再就職が難しい(復職と比べて)

主に休職期間満了で退職になりそうなときを想定して、私の考えを書きます。

理由[1] なんとか復職できる可能性があるかもしれない
「休職期間を延長する」、「(時短などの)軽減業務での復帰で様子見させてもらえる」など、退職しなくてよい方法を会社側がもっているかもしれません。

理由[2] 自分から退職を申し出ると、退職で話が進む
自分から退職を申し出ると、退職の方向で話が進みます。会社側が引き留める可能性もありますが、まれと思っておくほうがよいです。

理由[3] (一般的に)病気で退職すると再就職が難しい(復職と比べて)
今の会社に復職する、退職して再就職する、どちらが仕事に復帰しやすいかは人によります。

しかし私が知る限り、復職より再就職のほうがハードルは高いです。採用の壁を突破する必要があるからです。「病気を理由に退職か。うちで働いたときの体調が心配だ」と応募先の採用担当者が感じ取ったら不採用に傾くでしょう。

完全回復を求める度合いも、再就職のほうが強いです。応募書類や面接対策をテーマにした転職本を読む限り、「応募している現在は問題ない」と言い切ることが推奨されています。いわゆる転職本から引用します。

...、夜勤が続き体調を崩し退職しましたが、現在は、全く業務に支障はありません。社会人として体調管理の大切さを痛切に感じています。

「採用獲得のメソッド 転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方(2023年度版)」谷所 健一郎 (著)(マイナビ出版)p.124より引用(職務経歴書の退職理由)

業務上災害(労災)ではないか?

休むことになった病気の理由が、会社の業務による(業務上災害)と認められそうか、念のため確認することをオススメします。

業務上災害で療養している間、会社は解雇できません(ただし3年以上経ったら例外あり)。労災保険から療養費や休業補償(80%)が得られます。不明点は労働基準監督署などに問い合わせて確認するとよいです。

また、自分から退職しても労災の補償は受けられます。労災になってから退職する場合、労働基準監督署に確認しておくとよいかもしません。

また、労災保険での療養補償や休業補償など、在職中の事故であれば退職後も労災補償を受ける権利は継続します。

「2023-2024年版 図解わかる 会社をやめるときの手続きのすべて」中尾 幸村、中尾 孝子 (著)(新星出版社)p.218より引用

業務上災害(労災)を疑う場合、まず会社の人事担当者に相談しましょう。会社が認めない場合、労働局や労働基準監督署に相談する手もあります。
参考:
厚生労働省/労災補償
東京労働局/労働関係相談先一覧

以降は、労災扱いではない場合の退職を前提に書いています。


退職を決断する前に相談する

心も身体もツライ状況とは思いますが、退職を決断する前に複数の人に相談することをオススメします。
[1] 主治医への相談
[2] 相談できる所への相談
[3] 会社(人事担当者)への相談
[4] 家族への相談
[5] 最後は自分で決める

再確認[1] 主治医への相談
主治医に回復の見込や治療の計画を聞きましょう。会社をやめたくない意思を伝え、どんな条件なら復職できるか聞いてみましょう。復職を回避するために何ができるか尋ねてみましょう。

主治医は経験豊富です。会社を辞めなくてすむ知恵をもっているかもしれません。

どこに相談すればよいかも、主治医か医療機関のスタッフに聞いてみると相談先が見つかる可能性があります。

再確認[2] 相談できる所への相談
相談できそうな所を見つけて、退職しなくてよい策を相談するのも一案です。実際に相談するかどうかはケースバイケースで判断してください。私なら相談先として検討する候補を挙げます。

「治療と仕事の両立支援」の相談可能な支援機関(産業保健総合支援センターなど)
・自治体でやっている労働相談

再確認[3] 会社(人事担当者)への相談
休職を延ばせないか、条件を変えて復職することができないか、ダメ元で相談することをオススメします。

「治療と仕事の両立支援」のセミナーや復職に関する本では、「(例外的に)休職期間の延長」、「時短勤務での試し出勤」、「フルタイムからパートなどの契約変更で在籍を継続」の例が見つかります。

再確認[4] 家族への相談
退職は大事な決断です。家族の意見を聞いて、家族に自分の考えを伝えて、今後どうするかを話し合うことをオススメします。

再確認[5] 最後は、自分で決める
退職するかしないか、は重要な決断です。誰かに言われたからではなく、最後は自分で決めましょう。


2.退職を決めた後の心がけ

退職を決めた後は、自分が意識してなくても心と身体が疲れると思います。

オススメの心がけは下記3点です。
・損を減らし、得を増やす
・主治医と相談して、治療方針を見直す
・退職で気分が落ち込むのは当たり前と思っておく

損を減らし、得を増やす

退職を決めた後は、体調が悪いなかで色々なことをやらなければなりません。助けをうまく借りて、少しでも損を減らし、少しでも得を増やしましょう。下記をオススメします。

・退職後の手続きについて情報を得る
・自分で判断する前に、誰かに相談する
・会社の人事担当者には遠慮せずお願いする(礼儀と感謝を忘れずに)
・なるべく自分に有利になるよう交渉する
・トータルで得をするように考える(もらう金を増やし、払う金を減らす)
・最後は自分で判断する

主治医と相談して、治療方針を見直す

決められた期限までに無理して体調を上げる必要がなくなります。治療方針を見直すチャンスです。

日数がかかるけど回復が見込める治療があるかもしれません。薬を大きく変えてみるなど、主治医が躊躇していた治療ができるかもしれません。主治医と今後の治療方針を相談してみましょう。

退職で気分が落ち込むのは当たり前と思っておく

復帰したい思いが叶わず退職になるのです。気分が落ち込むのは当たり前です。何かに怒りをぶつけたいこともあるでしょう。自分の感情は否定せず、うまくつきあいましょう。

厳しい経験は人間を強くします。

ただ、我慢できない状況なら、医療機関の受診をためらわないでください。

●気分が異常に落ち込むときの相談先
まず、家族に相談するのがよいと思います。無料です。次に、主治医です。不調を相談し、薬の調整などをお願いしてみましょう。

どうしてもツラければ、メンタルヘルスの相談先も検討してみてください。精神科・心療内科や、いわゆるカウンセリングルームです。

睡眠が悪くなった場合、一時的に薬の力を借りてでも良い睡眠をとり、頭と身体を休ませるクセづけをするのがよい、と私は考えています。

また、仕事に関係しての落ち込みなら、キャリアコンサルタントや「治療と仕事の両立支援」の相談可能な支援機関 に相談するのもよいでしょう。

●退職は終わりではない。再出発への第一歩
退職が決まった後、「どうしてこうなってしまったんだ」「もう終わりだ」と怒りや落ち込みを感じるかもしれません。ただ、退職しても生きています。再出発は可能です。

退職後の生活は、あなたが復活するためにあります。未来から振り返って、「あのとき退職して、いろいろやったから今の良い自分がある」と言えるようにしていきましょう。

●心が弱いから病気が治らないのではない。むしろ強くなっている
病気が治らないのを「やる気がない」とか「心が弱いから」と言う人がいます。私もときどき言われました。

しかし、ツライ症状が続いているなかで療養しているのです。退職まで追い込まれたのです。厳しい経験をしている分、心は「強く」なっています。

病気の経験は、あなたを強くしています。

●ストックデールの逆説(最後に勝つ確信を持ち、厳しい現実を直視する)
ストックデールの逆説は、アメリカ軍人のジム・ストックデール将軍がベトナム戦争で捕虜になった経験から生まれた言葉です。
私が元気をもらった一節を紹介します。

人はだれでも、人生のどこかで失望を味わい、絶望的な事態にぶつかる。納得できる「理由」もなく、責任を追求できる相手もいない挫折を味わう。病気になることもある。
...(中略)...
厳しい状況にぶつかったとき、
最後には必ず勝つという確信を失ってはならず、同時に、
自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない

このストックデールの逆説は、困難を経て弱くなるのではなく強くなるための強力な武器になった

「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」ジェームズ・C・コリンズ (著)(日経BP社)p.136-137より引用(改行、太字は私) 

3.退職手続きの前にチェックすべきこと

会社と退職日を決める前に、以下のことをチェックしてください。
(1)退職までに医療機関を受診しているか
(2)傷病手当金の退職後継続受給ができるか
(3)雇用保険の失業手当(基本手当)はもらえるか
(4)雇用保険の教育訓練給付金をもらえる権利があるか
(5)年休(年次有給休暇)の取得実績と残り

(1)退職までに医療機関を受診しているか

厚生年金に加入しているなら、退職するまでに医療機関を受診することを強くオススメします。将来、障害厚生年金をもらえる可能性をつくるためです。

関係ない方がほとんどだと思いますが、10年以上経って障害年金をもらうことになるかもしれません。

障害年金は2階建てになっています。
1階:障害基礎年金(国民年金)
2階:障害厚生年金(厚生年金)

障害厚生年金(2階部分)は、障害基礎年金(1階部分)にプラスしてもらえます。(障害基礎年金だけで医療費や生活費をまかなうのは厳しいかもしれません)さらに、1級2級しかない障害基礎年金より軽い障害状態でも支給されます(3級(年金)、障害手当金(4級相当の一時金))。

障害年金をもらう状態になったとき、障害の原因になった傷病で初めて受診した日(初診日)が厚生年金加入時なら、障害厚生年金をもらえる可能性があります。

逆に、初診日が厚生年金から外れてしまった後なら、障害厚生年金をもらえる可能性がなくなります。
参考:
日本年金機構/障害年金
日本年金機構/パンフレット/障害年金


(2)傷病手当金の退職後継続受給ができるか

傷病手当金をもらっていて退職する場合、傷病手当金の退職後継続受給ができるかを確認してください。継続受給ができそうなときも、人事担当者(+健康保険組合)に念押ししておくと安心です。

(資格喪失後の継続給付)
・被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。

・資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)

協会けんぽ/よくある質問/.../傷病手当金について Q6より引用

退職後(資格喪失後)の傷病手当金継続給付の条件を、私の解釈でざっくり説明すると…
[1]健康保険の被保険者を1年以上続けてから退職する。11ヶ月で辞めるより1年(12ヶ月)頑張ってからやめる方が得。
[2] 「(病気を理由に)3日連続で休んだ+退職日に休んで」退職する。

退職日直前に出勤せざるをえない場合、人事担当者と健康保険組合(か、協会けんぽ)に、傷病手当金の退職後継続給付を受ける前提で、出勤してよいかどうか確認しておくとよいです。
参考:協会けんぽ/病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)


(3)雇用保険の失業手当(基本手当)はもらえるか

[1] 失業手当をもらえる権利があるか?
雇用保険の失業手当(基本手当)をもらえそうかを確認しておくとよいでしょう。

ハローワークの「離職されたみなさまへ~求職者給付受給手続きのためのリーフレット」を事前に一読することをオススメします。(会社から送られてくる離職票に添付されます)
参考:愛知労働局/離職されたみなさまへ…( https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/pamphlet_form/_121786/_122012_00002.html

失業手当(基本手当)については、以下をチェックしてください。
・受給条件(普通に勤務した月数(被保険者期間)など)
・一日当たりどれだけもらえるか(基本手当日額)
(ざっくり書くと、(退職日前6ヶ月の平均月給/30)×50~80%です。(59歳未満))
・最高で何日分もらえるか(所定給付日数)
・いつからもらえる(待期)
・いつまでもらえる(受給期間)
・すぐに働けない場合、受給期間延長

わからない場合や判断に迷う場合は、会社の人事担当者やハローワークに問い合わせてください。自己判断のみであきらめないでください。また、専門的な用語が次々出てくるので、用語の意味も教えてくれるようにお願いするとよいです。

●被保険者期間
(正確な定義は、ハローワークの情報をご確認ください)
退職日から1ヶ月ごとに区切っていって、「賃金の支払の基礎となった日数(*)が11日以上ある月」の月数。(足らなければ、「労働時間が80時間以上ある月」を追加できる)
(*)働いた日だけでなく年休なども含みます。

●退職日以前2年間で、普通に働いた月(被保険者期間)が12ヶ月ない
⇒もらえる可能性があります。
休職期間がある場合、最大4年間まで増やして「被保険者期間」が12ヶ月以上あればもらえます。

●普通に働いた月(被保険者期間)が12ヶ月なさそう
⇒病気で退職した場合、「特定理由離職者」とハローワークが認めれれば、被保険者期間が退職日以前1年間で6ヶ月以上あれば受給できる可能性があります。

特定理由離職者の範囲
...(中略)...
2.以下の正当な理由のある自己都合により離職した者(※補足2)
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

「ハローワークインターネットサービス/基本手当について」/「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」より引用

詳細は厚生労働省「基本手当について」の「 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(pdf)」を参照してください。

[2] すぐに(週20時間以上)働ける状態でないと、失業手当(基本手当)はもらえない
退職後しばらく働けない体調が続きそうな場合、すぐに失業手当をもらえると思わないでください。少なくとも週20時間以上働くことができなければなりません。ハローワークの説明から引用します。

失業(離職し、
就職しようとする意思と
いつでも就職できる能力があるにもかかわらず
職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にあること。)

ハローワークインターネットサービス/よくある質問(雇用保険について)
Q3.より引用(改行は私)

失業手当の申請に行った際、病気で退職したことを言うと、ハローワークの窓口担当者から、「就労可能証明書に医師の証明をもらってきてください」と証明書の用紙を渡されることがあります。(就労可否欄の「週20時間以上の就労は可能である」に〇がつく必要あり)


(4)雇用保険の教育訓練給付金をもらえる権利があるか

雇用保険の加入期間が1年以上(*)あると、指定の教育訓練で受講費用の一部をもらえる制度です。
詳しくは、厚生労働省の「教育訓練給付制度」を参照してください。

(*)(会社の事情もあるので、本人の希望が通らないかもしれませんが、)雇用保険の加入期間が11ヶ月でやめるより、12ヶ月経ってやめるほうが得になります。


(5)年休(年次有給休暇)の取得実績と残り

(休職に入る前に退職する方に限った内容です。残念ながら、休職中は年休を取得できません(労働の義務がないので))

退職日を決める前に、自分の年休の取得実績や残りを確認してください。注意するポイントは2点です。
[1]年に10日以上付与される場合、年に5日取得する義務がある
参考:「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説 (pdf)」
厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」( https://work-holiday.mhlw.go.jp ) ⇒参考資料 ⇒パンフレット ⇒労働基準法関係

[2]年休取得は労働者の権利。ただし、業務都合があれば会社は年休取得日を変更できる
退職前に残った年休はすべて取得できます。しかし引継ぎなどの理由で、会社が年休を取る日を変更する場合があります。年休の残りをどうするかも考えて、退職日の交渉をしてください。

上記のパンフレットや退職に関する本、ネット記事でご確認ください。
参考:「会社のきれいなやめ方 退職のプロが教えます!」弁護士による退職代行サービス研究会 (著)(自由国民社)


4.退職手続き

退職手続きは会社の案内にもとづいて行います。意外に多いはずです。漏れなくやりましょう。体調が悪くて自分で手続きするのが難しければ、家族などから助けを得てください。

退職後の健康保険をどれにするか決める(家族の扶養、国民健康保険、任意継続)

退職後の健康保険は3つの選択肢があります。退職後の収入・支出を考えて、家族と相談して決めましょう。
[1]家族の健康保険の扶養に入る
[2]国民健康保険(国保)に加入する
[3]会社で入っていた健康保険を任意継続する

参考:日本年金機構/年金の制度や仕組みに関するパンフレット
にある「退職後の年金手続きガイド」の一読をオススメします。退職後の公的年金だけでなく、健康保険(公的医療保険)、雇用保険についても解説されています。

[1]家族の健康保険の扶養に入る
家族が加入している健康保険組合(または協会けんぽ)の情報を確認してください。とくに、扶養に入る条件(例えば、本人と家族(被保険者)の収入)。

家族の扶養に入れない場合、[2]か[3]になります。払う保険料、高額療養費などを検討して決めてください。
[2]国民健康保険(国保)に加入する
[3]会社で入っていた健康保険を任意継続する

●払う保険料は...
国民健康保険の保険料は、市区町村の国民健康保険窓口で教えてくれます。市区町村のウェブサイトに計算フォームがあって、簡易計算できる場合もあります。離職理由によっては、保険料の減免ができる場合があります。お住まいの市区町村窓口に問い合わせてください。

健康保険任意継続の保険料は、原則、今払っている健康保険料の2倍です。ただし、本人の月給(標準報酬月額)が高い場合は、保険料の上限が決まっています。自分が加入している健康保険組合(または協会けんぽ)の情報でご確認ください。

●健康保険で高額療養費を使っている場合
保険診療の医療費が高くて、高額療養費を何回も使っている場合は、任意継続の方がお得かもしれません。

1年で4ヶ月目の高額療養費から、自己負担の額が安くなります(多数回該当と言います)。ただし、健康保険が変わると(例えば、健康保険組合から国保)、多数回該当の恩恵を受けられなくなります。

高額療養費についても、自分が加入している健康保険組合(または協会けんぽ)の情報でご確認ください。


会社の案内に従って手続きをする

会社から「退職の案内」があり、必要な手続きを指示されます。案内に従って、漏れなく手続きをしてください。不明点がある場合、手続きをする前に会社の人事担当者に確認することをオススメします。

●自己都合の場合、退職届(または退職願)
会社のフォーマットに記入して提出することになります。

◇退職理由欄の記入に困っている場合
すぐに提出せず、弁護士などに対応を相談するのがよいと思います。会社が言ってきた退職理由に納得がいかない場合も同じです。各都道府県の労働局に労働相談センターもあります。
参考:東京労働局/労働関係相談先一覧

●解雇や契約期間満了による場合、通知書
会社から通知書を受け取ってください。

●返却物
指定された返却物は、漏れなく返却しましょう。
・会社から貸与されていた物(社員証など)
・会社の機密情報を記録した物(書類やパソコンなど)

【注意】退職後、会社の機密情報を外に漏らさないようにしてください。


会社に証明を依頼する

まず、退職直後にやる手続きに必要な書類を調べてください。次に、会社にお願いする証明を洗い出し、依頼してください。
例えば、
・国民健康保険への切替え(資格喪失の証明)
・国民年金の手続き(退職日の証明)
・雇用保険の失業手当(離職票)

[1] 国民健康保険への切替え⇒「健康保険 資格喪失証明書」など
お住まいの市区町村の情報を確認してください。健康保険の資格を喪失した証明が必要になります。

市区町村によっては、「健康保険 資格喪失証明書」のフォーマットがあります。会社の人事担当者に郵送でお願いする際、「会社指定のフォーマットで作成いただいてもかまいません」などと説明しておけばよいでしょう。

[2] 国民年金の手続き⇒ 退職日が分かる証明書
扶養に入らない場合、2号(会社員)から、1号(自営業など)に変更する手続きが必要です。

お住まいの市区町村の情報を確認してください。国保の手続きに使う「健康保険の資格喪失証明書」を使える場合もあります。不明点があれば、退職手続きをする前に役所の窓口に問い合わせるとよいでしょう。

[3] 雇用保険の失業手当⇒ 離職票
基本手当の申請をハローワークにする際、「離職票」を会社に発行してもらう必要があります。

すぐに働けない場合も、失業がもらえる可能性があったら「離職票」の発行手続きを退職時にやっておくことをオススメします。「離職票」の発行は人事担当者の業務の一つです。遠慮する必要はありません。

(雇用保険法施行規則 第16条)
(離職証明書の交付)
第十六条 事業主は、その雇用していた被保険者が離職したことにより被保険者でなくなつた場合において、その者が離職票の交付を請求するため離職証明書の交付を求めたときは、これをその者に交付しなければならない。...(後略)

e-GOV法令検索 雇用保険法施行規則 より引用

保険証は退職日まで使える。退職日の翌日からは絶対使わない!

健康保険の保険証は退職日まで使えます。退職日当日に急病になる可能性は否定できません。退職日を過ぎてから返却することをオススメします。

逆に、退職日の翌日からは「退職した会社の保険証」を絶対使わないでください。後で、健康保険組合と医療機関の間で余計な処理が発生するからです。

退職してすぐに医療機関を受診する予定があれば、医療機関の窓口で事前に相談しておくとよいでしょう。


会社経由で入っている民間保険

会社経由で入っている民間保険も手続きを求められます。退職に伴って、保険料が変わるかもしれません。一方、退職後も団体扱いになり、他で入るより保険料が安くなる可能性もあります。保険会社に確認することをオススメします。


会社から退職金をもらえる場合、退職所得控除額を確認しておく

勤続年数が長い方は確認をオススメします。所得税を考えると、年金でもらう(年間いくらで何年かもらう)より一時金のほうが、得になるかもしれません。
参考:国税庁/よくある税の質問/No.1420退職金を受け取ったとき(退職所得)


退職後の会社への連絡先

退職後に問い合わせや書類の依頼をするときの連絡先を確認しておきましょう。「退職の案内」に記載されているはずです。

退職してしばらく経った後は連絡しづらいかもしれません。しかし、必要になったら遠慮せずに会社の担当者に連絡して、お願いしてください。会社の担当者は、退職者からの問い合わせや依頼を受けるのも業務の一つです。


5.退職直後の手続き

退職して間もなく、(1)健康保険、(2)国民年金の手続きをする必要があります。

(1)健康保険(公的医療保険)の手続き

[1]家族の扶養、[2]国民健康保険、[3]任意継続のどれかになります。

[1] 家族の健康保険の扶養に入る場合
(手続き期限:退職日の翌日から5日以内)
家族に扶養に入れる手続きをしてもらってください。国民年金の手続きも同時になります。

家族の会社には、保険証(健康保険被保険者証)をいつ頃もらえるかを確認しておきましょう。

通院する医療機関には、保険が切り替わることを話して、新しい保険証をもらえるまでの手続きを相談してください。医療機関に事情を話せば、3割負担で処理してもらえることがあります。最悪でも、いったん10割を自己負担しておいて、後で7割の返金を受けることができます。

[2] 国民健康保険に加入する場合
(手続き期限:退職日の翌日から14日以内)
必要な書類が準備できたら、お住まいの市区町村窓口で手続きしてください。会社から書類が届かない場合、会社の人事担当者に状況を確認しましょう。

役所の手続きは郵送でできる場合もあるので、身体に無理をしないようにしてください。もし、書類の関係で期限を過ぎそうな場合も、役所の担当部署に連絡して、対応方法を聞く方がよいです。

●保険証はすぐもらえる?⇒代わりに使える証明書は、すぐもらえる
加入手続きが出来たら、保険証(被保険者証)が来るまで医療機関で使える「加入証明書」をもらえます。(窓口で手続きしたら、その場で発行されます)

●失業による保険料減免
失業手当の申請(求職の申込)をした後、特定受給資格者または特定理由離職者とハローワークが認めた場合、保険料の減免を受けられます。市区町村の窓口で説明を受けることをオススメします。

【注意】失業を理由にした保険料の減免に、失業手当の申請後にもらえる「雇用保険受給資格者証」が必要かどうか確認してください。

●他にも保険料が減る制度がある
市区町村のウェブサイトや窓口でご確認ください。

●経済的に保険料の支払いが厳しい場合
市区町村の担当部署に相談することをオススメします。所得の減少に対して保険料を減らしてもらえる制度はあります。役所に何も言わずに保険料の未納が続くと、督促などの処置が取られることを知っておいてください。

[3](退職した会社の)健康保険の任意継続
(期限:退職日の翌日から20日以内)
入っていた健康保険組合(または協会けんぽ)で手続きをしてください。、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することになります。
参考:協会けんぽ/会社を退職するとき


(2)国民年金加入の手続き

[1]家族の扶養(3号)、[2]国民年金(1号)に分かれます。(60歳未満の場合)

[1]家族の扶養(3号)に入るとき
家族に、扶養に入る(3号)手続きをしてもらってください。健康保険の扶養と同時に手続きをします。

[2]家族の扶養に入らず、20歳以上60歳未満なら、国民年金(1号)に変更
(手続き期限:退職日の翌日から14日以内)
国民年金への加入手続き(正確には、2号(会社員など)から1号(自営など)への変更)が必要です。市区町村の役所窓口で手続きをしてください。

参考:日本年金機構/国民年金に加入するための手続き

●国民年金の保険料を払うのが厳しい場合、保険料免除・納付猶予制度を利用する
国民年金の保険料を払わないでいると、障害年金や遺族年金の権利を失う可能性があります。失業等による特例免除制度もありますので、市区町村の役所窓口などで相談してみてください。
参考:日本年金機構/保険料免除・納付猶予制度

国民年金の保険料を支払わないでいると、督促を受けます。
参考:日本年金機構/国民年金保険料の強制徴収


6.退職後の手続き

雇用保険(失業手当)の手続き

●会社から「離職票-1、離職票-2」が送付される
添付されたリーフレットをよく読んでください。わからない所はハローワークにお問い合わせください。
参考:
ハローワークの「離職されたみなさまへ~求職者給付受給手続きのためのリーフレット」(愛知労働局のサイト https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/pamphlet_form/_121786/_122012_00002.html

「離職票-2」に会社が書いてきた離職理由も確認してください。

●失業手当の受給手続き
自分が住んでいる所のハローワークに行って手続きをします。(ハローワークのリーフレットでは「求職者給付」と書かれています)

●病気で退職したと言った場合…
ハローワークの窓口担当者から、「もう働ける?」と聞かれたら、(少々不安があっても)「働けます」と自信をもって即答しましょう。また、「医師の就労可能証明書」をもらうよう指示されることもあります。

●退職して1ヶ月以上働けないときは、失業手当の期間延長手続き
しばらく働けそうにないときで、待たされる期間(待期)ともらえる日数(所定給付日数)を足すと1年を超える場合、延長手続きをしないと損をします。

通常、失業手当をもらえるのは、退職日の翌日から1年間の間です。延長手続きをすれば、最大3年間(計4年間まで)延長できます。上記リーフレットの「すぐに働けないとき」でご確認ください。

●退職して1ヶ月以上働けないときは、教育訓練給付の延長手続きも確認しておく
教育訓練給付金をもらえる可能性があったら、ハローワークの窓口で手続きを確認しましょう。失業手当の延長手続きと同じ用紙です。

参考:教育訓練給付については、厚生労働省の「教育訓練給付制度」を参照してください。(とくに「教育訓練給付の支給を受けたい方へ」リーフレット p.2)


(6ヶ月以内に忘れずに)確定拠出年金の手続き

(会社で企業型確定拠出年金(DC)に加入していた方が対象です)
退職する際、確定拠出年金の手続きについての案内をもらえます(会社によっては、退職後に郵送されるかもしれません)。退職後の選択肢は下記3つです。
・再就職先で企業型確定拠出年金に入る
・個人型確定拠出年金(iDeCo)に変える
・脱退一時金をもらって脱退する(条件あり)

●退職後6ヶ月以内に手続きが必要
退職後6ヶ月放置していると、国民年金基金連合会に自動的に一時保管され、本人は何もしていないのに手数料を取られます。手続きを忘れないようにしましょう。
参考:iDeCo公式サイト/就職(転職)・退職された方へ

期限が6ヵ月後なので余裕があります。その分、忘れやすいのでご注意ください。


(退職後、年が明けたら)確定申告を検討する

退職後に確定申告の時期(令和4年分所得税の確定申告期限は令和5年3月15日)を迎える場合、確定申告をするものと思って準備することをオススメします。1月になったら、国税庁 (nta.go.jp)のサイトをチェックしておくとよいでしょう。

●年末調整をせずに年を越した場合
退職前に納めた所得税の精算が済んでいません。納め過ぎていたら、その分戻ってきます。

●治療で医療費がかかっている場合
「医療費 ― 保険などで補填される額」が10万円以上の場合、医療費控除を受けることができます。確定申告をすると、所得税を納め過ぎていた分は還付されます。詳しくは、 国税庁 (nta.go.jp)などでご確認ください。

生活支援の情報を知っておく

お住まいの市区町村役所や社会福祉協議会などで情報が得られると思います。
参考:
・(新型コロナ感染症)くらしや仕事の情報|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 「生活と雇用を支えるための支援のご案内」など
求職者支援制度のご案内 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)


7.仕事への復帰に向けて動く

主治医の協力を得て回復へ向かう

退職後しばらくは、ゆっくりするのが良い場合があります。一方、退職後のブランク(働いていない期間)が長くなると再就職しづらくなる情報を目にします。

退職後の診察で、主治医が退職した状態のまま「現状維持」させるように感じることがあるかもしれません。その場合、ある程度の期間で仕事ができる状態に回復できるよう、主治医に治療方針を相談することもオススメします。

本人の生活を無視した医療はありえません。経済的事情(例えば、仕事ができないと生活が困る)などを含めて話してみるとよいと思います。

自分の体調や将来の仕事を考えながら、仕事への復帰に向けて徐々に回復を目指しましょう。


「働く上で体調は問題ない」状態を目指す

転職本を読んでいると、病気で退職してブランクがある場合、「(応募時点の)現在は、働くことに問題はない(*)」と言い切ることを勧める記載が見つかりました。転職本に書いていることを考えれば、病気で退職して再就職するケースは少なくないといえます。

(*)「働くことに問題はない」は、フルに働ける意味ではなく、応募する仕事の条件(勤務時間など)で問題なく働ければよい、と私は理解しています。

「働く上で体調は問題ない」状態になれば、再就職できる可能性が高まります。退職すると気持ちの面でもツライですが、回復して働ける状態になる希望を持っていてください。

「治療のおかげで体調がすっかり回復し、健康管理スキルも向上しています。(応募する条件だと)働くのに何の問題もありません」と言えるくらい自信をもてる日が来ると信じています。


再就職に向けて、情報収集をする

心と身体に無理をせず、徐々に情報収集をしていってください。
例えば…
・転職に関するネット記事を読む
・転職本を読む
・転職サイトなどで求人情報を確認する
・再就職支援をしてくれる所(ハローワーク、転職エージェントなど)で情報を得る


自分がやってきた仕事を振り返り、今後の仕事を考える

いわゆる自己分析です。再就職活動で使う応募書類(履歴書、職務経歴書)の元ネタになります。転職本などを参考に、自分がやってきた仕事を振り返ってみましょう。

・経験(何を何年やった?)
・スキル(何ができるようになった?):経験した業界・職種のみで使えるスキル、どんな業界・職種でも使えるスキルに分けるとよいでしょう。
・知識(何を知っている?資格は?)

キャリアコンサルタントや転職支援者などに支援を受けているなら、仕事の振り返りを手伝ってもらうのもオススメです。今後どんな所で働ける可能性があるかも相談できるとよいでしょう。より自分にあった業界や職種が見つかるかもしれません。


今後必要になるスキルや資格を考える

必要なスキルを磨いたり、資格を取ったりすることが、今後の仕事に大きなプラスになることがあります。

講座の受講や資格の取得には、ある程度のお金と時間がかかります。さらに、(オンライン講座も含めて、)教材やスクールの類はセールストークがうまい、と私は感じます。

高額な講座は、心理テクニックを駆使して購入に誘導してくると思っておくくらいでよいでしょう。多額の出費をする前はとくに、家族と相談することをオススメします。

ハローワークでやっている職業訓練や、雇用保険の教育訓練給付金がもらえる講座もあります。役立ちそうなものがないか、検索してみるのもよいと思います。


再就職活動で病気のことを話すのは必要最低限にする

「再就職活動で、病気のことをどこのレベルまで話せばよいのか?」は、自分と相手によります。

個人的には、病気のことを話すのは必要最低限に留めるのがよいと考えています。雇う側は、病気の人ではなく、仕事ができる人を求めているからです。さらに、雇う上で必要なことは採用担当者から聞いてきます。

病気の経験や、病気で退職した経験は貴重です。経験で得られたものも多いと想像します。しかし再就職の際、病気を前面に押し出すと、採用されにくいかもしれません。応募先の採用担当者に、「また病気で休まないか、辞めないか」「安全配慮義務の観点で大丈夫か」の不安を生じさせるからです。

また、採用側に病気の人を嫌う人が一定割合いると思ってください。私の経験では、病気のことを話した瞬間から面接官の対応が露骨に変わったことがあります。

●企業は応募者に病歴や健康状態を聞くことがある
採用側の企業は、業務上必要で合理的な理由があれば、本人の病歴や健康状態を聞いてきます。採用担当者は、雇った後の安全配慮(労働者の安全と健康を守る義務)も気にしています。

参考:
・「採用がうまくいく会社がやっていること」福留 文治、児玉 里美 (著)(かんき出版)
・「人事・労務トラブルのグレーゾーン70」杜若経営法律事務所 (著)(労務行政)
・厚生労働省「公正な採用選考を目指して」( https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/
 ⇒ 就職差別を避けるために、適性・能力に基づいた採用基準にすることを求めています。
「公正採用選考をめざして」リーフレット(pdf)
 ⇒「就職差別につながるおそれがある14事項」の中に「⑭合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」があります。

●求人応募のとき、自分の病気をどの段階で伝えるか?
私が本を読んだり、人から助言を受けたりしたところ、下記3案あります。ご自身と応募先の両方を考えて判断してください。
[1] 応募書類に書く
[2] 面接でこちらから言う
[3] 面接で問われたら、問われたことのみに答える

[1] 応募書類に書く
文例は、いわゆる転職本から探すとよいと思います。書く時の注意事項について、転職本から引用します。ポイントは、「応募している現在は問題ない」と言い切ることです。

応募書類をチェックしてくれる人がいれば、チェックしてもらうべきです。ハローワークの相談窓口でも応募書類を見てもらうことができます。

...、ブランクの理由が精神的なものを含め健康上の問題が起因している場合、その旨を簡潔に示し、”現在はどうなのか”をはっきり書いておくべきでしょう。親の介護など近親者の問題であった場合も同様です。

「カリスマエージェント直伝! 履歴書・職務経歴書の書き方」細井 智彦 (著)(高橋書店)p.126より引用

(ある人がアドバイスを受けた文例)
病気の療養のため、前職をやむなく退職しました。新しい治療を取り入れたため現在は回復しており、...に記載の労働条件であれば業務に支障はありません。...自己管理の大切さを痛感しており、この反省を今後に活かします。

(一部を省略・改変)※応募書類に書かずに、面接で上記のような内容を言うのも一案です。

[2] 面接でこちらから言う
言う内容については、[1]応募書類、[3]面接を参照ください。こちらから言うと面接官が驚く場合があるので、後のフォローも考えておきましょう。

[3] 面接で問われたら、問われたことのみに答える
面接に関する本やネット記事で情報を得ることをオススメします。面接対策を指導してくれる人がいれば、伝え方のアドバイスを受けておきましょう。面接本番に役立ちます。

(以下、個人的な意見です)
退職歴があると、退職理由を聞かれます。病気が理由と答える場合、「身体を壊してしまい、療養のためにやむなく退職した。治療を受けて今は回復している」くらいの表現で答え、相手の反応を見るのが良いと思います。

退職理由を答えると、その理由について突っ込んだ質問があります。病気のことを話さないといけない時は、退職した時点の病状ではなく、「現在の」健康状態に誘導するのがよいと思います。「今は問題ないのね」と思ってもらえるように。

もちろん、仕事の経験やスキル、応募先での仕事を中心に話せるよう誘導できればベストです。

誤解を生みやすい病名の場合、病名でなく、差しさわりのない症状で答えるのも一案です。(例えば、ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)と言わずに、「ウイルスに感染した後、後遺症のようになり、身体に無理がきかなくなった」くらいの表現に留める。言った後に何を聞かれるかは相手次第)

●治療を継続しながら働くことは当たり前
通院について聞かれたときも、就業時間内に通院する必要がなければ詳しく説明する必要はないと思います。

言う必要があっても、例えば「就業時間に通院する予定はない」、「再発防止の意味もあって定期的に通院しているが、業務に支障はない」、「退勤時か会社休日に通院する」くらいの表現で。

また、病気を抱えて通院しながら働いている人は、意外に多くいます。自分とうまくつきあって、仕事もやっていきましょう。

治療を継続しながら働くことについて、厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」を見ておくことをオススメします。


<まとめ>

「(7)[番外編]もし退職することになったら」では、復職がかなわず退職するとき、退職を決めるまでのチェックポイント、退職の手続きや注意点、退職前後の心がけを解説しました。

1.(退職を決める前)退職を回避できないか再確認する
・なんとか退職しないことをオススメする理由([1]なんとか復職できる可能性があるかもしれない、[2]自分から退職を申し出ると、退職で話が進む、[3](一般的に)病気で退職すると再就職が難しい(復職と比べて))
・業務上災害(労災)ではないか、を確認する
・退職を決断する前に相談する

2.退職を決めた後の心がまえ
・損を減らし、得を増やす
・主治医と相談して、治療方針を見直す
・退職で気分が落ち込むのは当たり前と思っておく

3.退職手続きの前にチェックすべきこと
(1)退職までに医療機関を受診しているか
(2)傷病手当金の退職後継続受給ができるか
(3)雇用保険の失業手当(基本手当)はもらえるか
(4)雇用保険の教育訓練給付金をもらえる権利があるか
(5)年休(年次有給休暇)の取得実績と残り

4.退職手続き
・退職後の健康保険をどれにするか決める(家族の扶養、国民健康保険、任意継続)
・会社の案内に従って手続きをする
・会社に証明を依頼する
・保険証は退職日まで使える。退職日の翌日からは絶対使わない!
・会社経由で入っている民間保険
・会社から退職金をもらえる場合、退職所得控除額を確認しておく
・退職後の会社への連絡先(退職後の連絡や依頼は遠慮しなくてよい)

5.退職直後の手続き
(1)健康保険(公的医療保険)の手続き
(2)国民年金加入の手続き

6.退職後の手続き
・雇用保険(失業手当)の手続き
・(6ヶ月以内に忘れずに)確定拠出年金の手続き
・(退職後、年が明けたら)確定申告を検討する
・生活支援の情報を知っておく

7.仕事への復帰に向けて動く
・主治医の協力を得て回復へ向かう
・「働く上で体調は問題ない」状態を目指す
・再就職に向けて、情報収集をする
・自分がやってきた仕事を振り返り、今後の仕事を考える
・今後必要になるスキルや資格を考える
・再就職活動で病気のことを話すのは必要最低限にする

退職することになっても…
・知らなくて損をすることを、一つでも減らしてください。
・知っていると得することを、一つでも多く知ってください。
・退職したら落ち込みます。必要以上の落ち込みはなくしましょう。
・退職を再出発への第一歩にしていただきたいです。

体調が回復し、再び働けるようになることを心から願っています。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

――【休職からの復職体験談】シリーズ ――
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はじめに
(1)ステップ1.事前の備え
(2)ステップ2.不調になってから休職開始まで
(3)ステップ3.休職直後からの療養
(4)ステップ4.復職に向けたリハビリ
(5)ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
(6)ステップ6.復職直前から復職後
(7)[番外編]もし退職することになったら
(8)参考情報(ウェブサイト、書籍)


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