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【休職からの復職体験談】(2)ステップ2.不調になってから休職開始まで

ステップ2.は、予期せぬ病気で仕事に支障が出始めてから、会社が休職を決めるまでです。

・休職までどんな流れで進むか
・何をあらかじめ知っておけばよいか
を私の体験にもとづいて、順に解説します。

<休職前から復職後までの6ステップ>
ステップ1.事前の備え
ステップ2.不調になってから休職開始まで
ステップ3.休職直後からの療養
ステップ4.復職に向けたリハビリ
ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
ステップ6.復職直前から復職後

会社を長く休むことなく回復するのが理想です。しかし、休職して療養に専念することが必要な場合もあります。目次を見ていただき、ご自身に関係ありそうな所を読んでみてください。

「知らなかった!」「確認しなかった!」と後で悔やむことが一つでもなくなると嬉しいです。

※記事内の情報は、自己責任で利用をお願いします。

ステップ2-1.不調で仕事に支障が出始める

(脳も含めた)身体に不調がでて、仕事が思うようにできなくなったらやることを解説します。

2-1-1.健康状態を記録する

●健康記録(生活記録表)のすすめ
自分の健康状態をつかんで、軽い不調のうちに対策すると、仕事やプライベートへの悪影響を抑えることができます。

健康状態をつかんで、不調を早く対策するために記録をオススメします。

<不調時に記録しておきたい項目>
・症状や体調の変化
・不調になるきっかけ、不調が始まるときの症状
・睡眠の変化(寝つけない、途中で寝覚める、起きづらい)
・食事の変化(食べれない、食べ過ぎ、食べにくいもの)
・朝に前日の疲れが回復しているか?
・体調不良で予定がこなせなかったことは?予定外の休息(昼寝など)は?
・頓服薬の服用

(1)ステップ1.事前の備えで取り上げました。「生活記録表」や「睡眠日誌」で検索すると適当なフォーマットがみつかります。手帳やカレンダーアプリにメモしてもかまいません。

健康状態の記録は、医療機関を受診するときの説明に使えます。初診の際、「どうされました?(症状))」「(症状は)いつからですか?」「何か薬を飲みましたか?」と聞かれますので。


2-1-2.あえて休息をとる

目標は「心身の回復」です。会社の視点では「業務遂行能力の回復」になります。

パフォーマンスの低下は、身体が休息を求めている証拠かもしれません。少し休むことをオススメします。ずっと100%で働き続けられる人はいません。頭と身体を休めることを「無理に時間をとって」やってみましょう。

●思い切って休みをとる
体調不良が自分の仕事に悪影響を与えている場合、思い切って休みを取りましょう。「無理して仕事を休む」感覚でOKです。マネジメント能力を発揮する時です。

【自分から休むほうがよい理由】
仕事のパフォーマンス(正確さやスピードなど)が落ちているから
(脳も含めた)身体の疲れがたまっている可能性が高いです。

早く対策すると、早く回復できるから
早めに休むと、休む時間の合計は少なくてすみます。仕事を予定して休むため、職場の人の予定も立ちやすいです。

他人は自分の身体に責任をとってくれないから
自分の身体の状態は他人(とくに職場の人)にはわかりません。他人から悪そうに見えるときは、よほどひどいと思ってください。自分を観察して、早めに対策しましょう。

(注)「休むことの重要性」は、医師からの情報が信頼できます。

<どう休むかの例>
・早退や年休を使って、医療機関(クリニックや病院)を受診する
・セルフケア(筋肉をほぐすなど)
・仕事から完全に離れる時間を作る

自分の業務、職場の状況、お客様の事情があってなかなか休めないのは理解できます。しかし、業務をうまく調整して自分の身体を回復させましょう。

大したことがないと思っていても、深刻な病気が隠れている場合があります。病気は「早期発見」「早期治療」が大事です。

【私の経験】「ただの風邪」と思っていたら深刻な病気だった
どこかでウイルスに感染したようで、高熱+風邪の症状。病院にも行かず、市販薬で症状を抑えて働いていました。(その後20年以上苦しむことになるME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)発症のきっかけです)

その後、風邪をきっかけに身体を動かせないほどの倦怠感を何度も経験しました。検査しても異常は出ず。風邪症状があったので、病院では「風邪でしょう」で終了。「ただの風邪」と思って自分の身体に向き合わなかったことを反省しています。

【反省】不調が続くときは、適切な診断と適切な治療を受けられるまで、医療機関をあたることが大切です。

●アブセンティーズム(病欠)とプレゼンティーズム(パフォーマンス低下)
健康上の不調が仕事に及ぼす影響を表す概念です。会社を休まなかったらOKではなく、心身の不調でパフォーマンスが落ちることも防いでいく必要があります。厚生労働省のコラボヘルスガイドラインより定義を引用します。

Absenteeism(病欠。アブセンティーイズム)
…(中略)…
Presenteeism(プレゼンティーズム)です。
 「プレゼンティーイズム」というのは 聞き慣れない言葉ですが、 従業員が職場に出勤はしている(present)ものの、何らかの健康問題によって、業務の能率が落ちている状況(つまり企業や組織の側から見れば間接的ではあるが健康関連のコストが生じている状態)を指しています。


データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」p.21より抜粋引用(太字は私) 掲載サイト( https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000170819.html )

2-1-3.上司や職場メンバーに相談する

「自分の身体」と「職場の仕事」の両立を考えてみましょう。職場の人に相談するときは、仕事の観点で話すことが大事です。

業務に支障が出そうなときは「早めに」、上司に一報を入れておきましょう。受診や不調で休む場合、代わりの業務を職場メンバーにお願いしてみましょう。誰にでも突発の事情がありえます。

体調不良のときの相談では以下の2点を心がけてください。
・自分の業務を職場としてやり切ること
・自分だけで抱え込んだ業務をなくすこと(突発で休んでも誰かが代行できるように)

「調子が悪いんです。助けてください」で終わらせずに、「今のままだとどんな問題が起きそう」で、「〇〇さんに△△をやってもらえば、□□の業務が助かる(納期に間に合う)」など、言い方を工夫してみましょう。

自分がいなくても仕事が回るようにするように、情報を共有しておくとよいです。依頼された業務を自分だけが抱え込んだまま、突発の休みが続くと、職場に余計な負担がかかります。

仕事は組織でやるものです。「『その人』が『その仕事』を持っている」のではなく、たまたま「『その仕事』を『その人』がやっている」だけ。

自分のパフォーマンス低下は、組織でカバーしましょう。組織として、(社内外問わず)仕事のお客様に迷惑をかけないことが重要です。


2-1-4.医療機関を受診する

不具合は早めに対策するほうがコストは安くてすみます。できるだけ早めに医療機関を受診することをおすすめします。

自分ファーストです。(脳も含めた)身体の回復を最優先しましょう。体調が悪いときは、医療の力を借りてください。

放っておくと手遅れになる病気が隠れていないか、検査や診断を受けることも大切です。

「仕事を休まず、働きながら回復する」が理想です。しかし身体に無理して働いた後、長く休むことになったら、自分・家族、職場に余計な負担がかかります。なので、自分の体調回復を優先しましょう。


【ケーススタディ】早めの受診ができない場合、上司と産業保健スタッフに相談する。医療機関に交渉する

突発の休みが増えていてるのに、医療機関の制約(予約枠など)で受診が数週間も待たされる場合です。

【対応策】
[1] 上司に相談し、医療機関の事情と受診予定日を伝えておきましょう。
[2] 産業保健スタッフへの相談も検討してください。体調不良なのに受診不可の日が続くので。
[3] 待たされている医療機関にも困っている状況を伝えて、解決策を聞いてみましょう。大病院なら患者相談窓口に聞くのもよいと思います。

会社によっては、会社指定の医師への受診命令が下されるかもしれません。就業規則に受診命令のルールが書かれている場合もあります。

【私の経験】
「受診は〇ヶ月に1回の予約制。予約外の受診はできない」という医療機関を受診していました。次の予約までに調子を崩しても、近所のクリニックでは診てもらえない状況。(他に診てもらえる医療機関を探しても、初診が早くて数ヶ月待ち)

病気で休みがちになると、上司は早く受診するよう私に言ってきました(安全配慮上、上司として行うべき指示)。しかし患者の私からは「病院のルールに従います。最短の受診日は○月○日です。待てないなら、会社から病院に直接交渉してもらってもかまいません」と答えるしかありませんでした。

【反省】
◇受診できない状況を産業保健スタッフに相談すると、なんらかの支援をもらえたと思います。
◇ダメもとで医療機関に交渉するべきでした。また、1ヶ月以上に1回の予約受診の場合、病状急変時にどこを受診するかを確認しておくべきでした。納得いかない場合、病院の患者相談窓口にも困っている状況を伝えておくべきです。


【私の意見】わけのわからない症状は「身体疾患」も疑う

(一人の患者の意見です)
【注意】診断や治療については、医師の判断を優先してください。

異様に身体がだるい、眠れない、翌朝に疲れが取れなくなった、休んでも良くならない、といった不調が続く場合…
精神疾患(メンタル疾患)を疑われることが多いです。

個人的には、心療内科や精神科を受診する前に(または並行して)、身体の病気も疑うことをオススメします。内科などで診察や検査を受けることを検討してください。

精神科系の治療だけでは回復しないケースがあるからです。深刻な身体疾患が隠れている可能性もあります。治療の効果を3種類に分けて理由を説明します。

[1]精神疾患(メンタル疾患)の治療だけで回復
メンタルヘルス系のウェブサイトや本でよく紹介されているケースです。簡単に見つかると思いますので、ここでは触れません。

[2]精神疾患の治療に、身体疾患の治療も追加要
どちらか先になったかは不明ですが、両方の治療が必要なケースです。この場合、精神科系の治療だけを続けていても、なかなか良くなりません。私も経験があります。精神科の主治医に身体の病気を相談したり、自分から内科などを受診したりすることをオススメします。

[3] 実は身体疾患
実は身体の病気だったケースです。身体の問題を考えない治療を続けていても良くなりません。上記[2]と同じく、精神科医への相談や内科などの受診をオススメします。

コロナ後遺症では、精神科の治療では改善せずコロナ後遺症外来で治療を受けるケースがあるそうです。コロナ後遺症を数多く診療されている医師の著書から引用します。

…(前略)… いずれもこれまでの感染症や、慢性疾患などの診断や処方では改善をみることがなかった。…(中略)…
私の元に受診した少なくない患者たちは、心療内科や精神科を受診し投薬を受けていたが、改善がみられない人だった。

「新型コロナ後遺症に向き合う」和田 邦雄、中川 学 (著)(‎鳥影社)p.40より引用

【注意】症状がツライ時は、重大な決断は避ける。即答も避ける

身体やメンタルがツライとき、自分の想像以上に判断力が鈍っているかもしれません。重大な決断はできるだけ避けましょう。決断をする際も即答は厳禁です。信頼できる人に相談してからで十分間に合います。ショックを受けている時も同様です。

【私の経験】体調が悪いときは、即答を避ける
体調が悪い時、会社の人が重要な判断を即答で求めてきました。答えずにいると、畳みかけてきました。(私に考える時間を与えないことで私の判断ミスを誘っていた、とも感じます)

私は何とか抵抗して、その場での回答を回避。相談できる人に相談してから答えを返しました。

良い結果にはなりませんでしたが、反射的に即答しなかっただけでも成功と思っています。


【注意】「びっくり退職」はやめよう

がん患者のなかには、診断を受けたことにびっくりして、診断されて間もなく退職を申し出る方がいるそうです。他の病気でも可能性があります。
参考:
・「現役世代のための がん防災マニュアル」(一般社団法人 がんと働く応援団)
・「(厚生労働省)2022年度 治療と仕事の両立支援 オンライン地域セミナー」(https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/ ⇒「シンポジウム」タブ⇒2022)

退職届を会社が受け取ると退職になります。「びっくり退職」を撤回したい場合は、助けを借りてでも会社と交渉すべきです。退職すると、退職した事実は元に戻りません。


【豆知識】退職届と退職願

言葉は似ていますが、意味が異なります。

「退職届」は、「辞めます」と労働契約の解約を伝えること。本人からの辞職です。退職届を会社が受け取ると、退職が決まります。退職を撤回したい場合、会社が認めたときに限り可能になります。

「退職願」は、「辞めたいのですが、了承いただけますか」というお願いです。本人と会社との合意したうえで労働契約を解約することです。会社に「願」を出したら退職できるわけではなく、退職願を会社が認めたら、退職が決まります。

(詳細は弁護士や社会保険労務士が発信している情報をご確認ください)


ステップ2-2.就業規則を確認する

主治医から、「いつまで休める?」、「いつまでに復職の診断書を書けば間に合う?」、「復職のルールはどうなっている?」と聞かれた際、正確に答えられるようにしておきましょう。

とくに「いつまで休めるか」が重要です。例えば、会社のルールで「3ヵ月」しか休めない場合、主治医から「6ヵ月会社を休みましょう」と言われても、最大3ヵ月しか休めません。

<就業規則でチェックしたいこと>
[1]年次有給休暇(年休)
[2]医師の診断書
[3]長期欠勤
[4]病気休暇(100%支給/一部支給/無給)
[5]休職(とくに「休職期間の上限」)
[6]復職
([4][5]は、会社によって「ある/ない」が異なります)

※一度にすべてをチェックしなくてよいです。ただし休職に入る前は、人事担当者に不明点を確認する機会をもつことをオススメします。

2-2-1.年次有給休暇(年休)

・今年度に取得できる日数(取得実績も確認)
・翌年度分の付与日、付与日数、付与条件
・時間単位年休の有無、取得時の手続き
・長期欠勤・病気休暇・休職の期間は勤続年数に入るか?

2-2-2.診断書の提出が必要な条件(休みの種類にによらず)

「(病気やケガで)〇日以上欠勤する場合、医師の診断書を提出すること」などの規定があるはずです(例えば7日以上)。就業規則に従いましょう。

医療機関の事情で診断書の入手が遅れる場合、会社に状況(遅れる理由、受診の予定、診断書の提出日の予定)を説明するべきです。

長期欠勤・病気休暇・休職の間、診断書の提出間隔(例えば1ヶ月に1回)が決められている場合があります。

2-2-3.長期欠勤

会社によっては、休職の前に「長期欠勤(最大〇ヶ月)」と決まっている場合があります。

2-2-4.病気休暇

会社によっては「病気休暇」「傷病休暇」の制度を設けています。賃金が支払われる場合、健康保険の傷病手当金をもらい始める日(受給開始日)が変わるので注意してください。

下記を確認しておきましょう。
・最長の期間
・賃金の支払い有無(有の場合、何%支給か)

参考:病気休暇の説明
働き方・休み方改善ポータルサイト」(厚生労働省)⇒参考資料 ⇒パンフレット⇒「病気休暇制度周知リーフレット(令和4年度)(pdf)」

2-2-5.休職

最低でも下記を確認しておきましょう。
・休職になる条件
・休職期間
・復職後に再び休職する場合のルール
(例えば休職期間の通算。「復職後〇ヶ月以内に、同一疾病(または類似疾病)で休職した場合、休職期間を通算する(休職期間の残りがリセットされない)」)
・休職期間が満了した場合の扱い(退職/解雇)

2-2-6.復職

主に下記を確認しておきましょう。
・休職期間満了にならないためには、いつまでに「復職可能の診断書」を提出すればよいか(注)
・復職のときの手続き(例えば、本人はいつまでに何を出す?)
・試し出勤制度
・復職時、時短勤務などの配慮

(注)「復職可能の診断書」をもらう期限にも関わります。休職期間満了が近くなって、あわてて主治医に診断書をお願いしないよう心がけましょう。


ステップ2-3.予定して長く休む検討をする

不調が戻らず、突発の休みが増えてツライと思います。勤務を続けるか、療養に専念するか、難しい判断を迫られる時期です。できるだけ助けを借りましょう。後で悔やまないために、必要な情報を得ておきましょう。

2-3-1.主治医に相談する

まず、主治医に以下を尋ねましょう。
・主治医の診断内容
・治療の計画、回復の見通し
・他の治療の選択肢(長く休むとできる治療など)

次に、[案1]働き続けながら回復を目指すか、[案2]いったん休んで療養に専念するかを相談しましょう。

【注意】もし、主治医から「退職して療養を専念」を勧められたら…
退職しなくてすむ方法を探ることを強くオススメします。退職を勧める理由を確認した上、主治医に「休職ではダメなのか」を聞いてみましょう。会社の制度をフルに利用してから辞めても遅くありません。場合によっては、別の医療機関を受診することも必要です。

●復帰の難易度は、復職<再就職
私の知る限り、復職と(退職後の)再就職では、「復職」のほうが仕事に復帰しやすいです。病気の退職だと再就職は想像以上に大変なので。

再就職の際、「退職理由」と「問題なく働けること」をうまく説明する必要があります。(参考:転職用の「履歴書・職務経歴書の書き方」「面接対策」をテーマにした本)


2-3-2.家族に相談する

主治医や会社に相談したことは、家族にも共有しておきましょう。療養に専念するかどうかは、家族に相談しておくべきです。

仕事を長く休むのは大事な決断です。自分の想像以上に頭と身体が弱っている時期です。家族にも相談した上で意思決定しましょう。


2-3-3.上司や人事に相談する

主治医との相談結果や、自分の状況を伝え、予定して長く休むかどうかを相談しましょう。悪い情報は早めに伝えて、早く対策をとりましょう。

休みたいときは、病気の説明に「休む必要性」と「回復して復帰できること」を加えることをオススメします。
[1] 病気である
(病気と信じてもらえないような症状の場合、医師や公的機関の情報を見せると有効かもしれません)
[2] 休みが必要
[3] 医療と休みで、働ける状態に回復する(*)
[4] 仕事に復帰したい(*)

(*)インターネット上の情報を見て反射的に「その病気だと働けないのでは」と思う人がいます(私は誤解された経験あり)。断言することに不安があっても、「治療を受けると回復して働けます」と言い切りましょう。

「もう良くならないんじゃない?退職?」と上司や人事担当者に疑われないように注意してください。

【注意】相談したときに「退職を迫られた」と感じても、「辞めたくなければ、自分からは退職をぜったい申し出ない」ことを強くオススメします。


2-3-4.就業規則以外の会社ルールを確認する

会社を長く休むにあたって、人事担当者に休職・復職に関するルールを確認してください。会社のルールに従って休職や復職をする必要があるからです。会社によっては、「休職の手引き」のような冊子を整備しています。


2-3-5.業務引き継ぎの準備をする

目標は、不在時の業務が引継げることです。「(休職しようとする)本人がいないと、職場の業務が回らない」は最悪です。

休息優先で療養している時に業務の問い合わせがくると、ゆっくり休めません(私は経験があります。体調が悪い時に電話でいろいろ聞かれました)。急な問い合わせの対応で症状が悪化すると、回復が遅れるかもしれません。

上司に相談して、業務上引き継がねばならないことは、適切な人に引き継ぎましょう。引き受けた業務を「自分だけが抱え込んだまま」、長い休みに入らないよう注意してください。組織である限り、業務は組織でやるものです。引継ぎに遠慮は不要です。

引継ぎで無理をしないようにしてください
体調の具合で引継ぎが難しい場合、上司に状況を報告して、自分の身体を優先したいと相談しましょう。会社には安全配慮義務(労働者が業務で健康を害さないような配慮をする義務)があります。


【豆知識】「休職しないで休む」と「休職」との違い

私の理解でざっくり書くと…
「休職しないで休む」:労働義務がある日に休む。年休や欠勤。
「休職」:労働義務をなくすが会社は在籍中のまま。休職中は会社の仕事をしてはいけない。

正しい情報は、弁護士や社会保険労務士が執筆した本やネット記事から得るのがよいでしょう。労働法の専門書から休職の定義を引用します。

「休職」とは、最大公約数的にいえば、ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら労働への従事を免除することまたは禁止すること、と定義できる。

「労働法 [第12版]」菅野 和夫 著(弘文堂)p.742より引用

休職のルールは、(休職がある/ないも含めて)会社によって違います。会社の就業規則を確認してください。ちなみに、休職期間中は年休(年次有給休暇)を取得できません(年休は労働義務がある日に使える制度なので)。


ステップ2-4.診断書の提出、会社による休職決定

2-4.は就業規則上の休職について触れます。長期欠勤、病気休暇も大きくは変わりません。

就業規則上の休職は、「診断書を出せば、必ず休職できる」わけではありません。会社が命令するものです。診断書を提出したら、会社は診断書の内容を休職の判断に使います。

2-4-1. 主治医から「休職用の診断書」をもらう

主治医に「休職したい」と申し出て、診断書を依頼します。主治医が書く「仕事を休む必要がある期間」が、就業規則の休職期間の上限以内か確認してください。

2-4-2.会社に診断書を提出して、休職手続きを依頼する

会社のルールに従って、診断書を提出してください。「いつまでに、誰に、どういう方法で」提出しなければならないか、「事前に」最新ルールを確認しましょう。

●診断書の提出で注意すること
提出する前に、診断書の控えコピーをとっておく
・会社の個人情報保護ルールを守る(診断書の内容は要配慮個人情報)


【ノウハウ】提出する前に、診断書の控えコピーをとる

後で診断書の写が必要になるケースがあります。自分の記録のためにも、控えのコピーは必要です。

医療機関が診断書を封緘(封筒に糊付け)して渡してきても、患者本人が開けて控えを取りましょう。心配なら医療機関に相談してください。(「コピーを取りたいから封をせずに渡してください」と受付の人にお願いするのもアリです)

患者である本人が封のしてある状態を開封して診断書の中身を確認しても、何ら問題はありません。…(中略)…
「信書開封罪」にはあたりません

「あなたの障害年金は診断書で決まる!」白石美佐子、中川洋子 (著)(中央法規出版)p.53 より引用

もしコピーを取らずに診断書を提出して、後日「診断書の写」が必要になった場合、会社の人事担当者にお願いしてコピーをもらいましょう。くれぐれも個人情報管理に注意してください。


【知識】診断書の内容は「要配慮個人情報」

診断書の内容は病歴の一部にあたります。病歴は「要配慮個人情報」といって、個人情報のうち特に厳重に管理しなければならない情報です。

診断書の取扱いについては、「こころの耳」( https://kokoro.mhlw.go.jp/ )(厚生労働省)のQ&Aが参考になります。
「Q14:管理職が知っておくべき個人情報保護と安全配慮義務とは?」
「社会保険労務士に聞いてみよう-メンタルヘルスQ&A-/第5回 診断書等の個人情報の取扱いに関する注意点は?」


2-4-3.上司への報告、業務の引継ぎを漏れなく行う

上司を通さずに診断書を提出した場合、「診断書を提出したこと」「休職予定期間(次の見直し予定日)」の2つを上司に報告しましょう。

私の経験上、上司がとくに知りたいのは下記3点でした。
・業務に復帰できるのは、いつ?
・(休むことによる、)業務への影響は?
・業務上、本人だけが抱えていることはある?

業務引継ぎが残っていたら、上司に相談して、できるだけやっておきましょう。もちろん体調優先で(会社には安全配慮義務があります)。


2-4-4.休職のルール・手順の詳細を再確認する

会社によっては「休職・復職の手引き」のような冊子をもらえる場合があります。休職に入る上で確認しておきたいことを下記に示します。不明点があれば、人事担当者に確認してください。

●休職について確認しておきたいこと
[1]会社の連絡先一覧(どういう時にどこへ連絡・問合せすればよいか)
[2]休職から復職までの流れ
[3]休職中の会社ルール(禁止事項、推奨事項など)
[4]本人から会社への報告(誰に、どうやって、どれくらいの間隔で)
[5]会社から本人への連絡方法(誰から、どうやって)
[6]診断書の提出間隔、提出方法
[7]休職期間を延長するときの手続き
[8]休職中に会社が立て替えるお金(社会保険料など)の支払
[9]休職中に会社や健康保険などからもらえるお金
[10]休職中にあり得るイベント(例:年末調整)
[11]会社支給のモバイル機器などの返却要否
[12]復職のルール(復職可能と判断する条件、など)

※休職開始時は、確認できる項目だけでよいと考えます。

【補足】年に5日の年休取得義務
1年に10日以上年休が付与される労働者は、年に5日の年休を取得しなければなりません(労働基準法が定める会社側の義務です)。ですので、年休を5日分取得してから長期欠勤・病気休暇・休職に入る場合があります。

参考:労働基準法の年次有給休暇ルール
働き方・休み方改善ポータルサイト」(厚生労働省) ⇒参考資料 ⇒パンフレット⇒「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(H31.3)(pdf)」パンフレット


2-4-5.休職決定の連絡を受ける

会社が休職を決定したことの連絡を受けます。誰からどうやって連絡されるかは、会社によります。

【私の経験】
休職手続き時の「休職開始日」で仮決定していました。(体調を考慮して、変更がなかったら会社から本人に連絡しない運用)


おすすめの心がけ・行動

不安をうまく使う

不安は必ずしも悪いものではありません。不安は問題を見つけてくれます。問題は解決すればよいのです。問題を早めに対策すると、ダメージは少なくてすみます。

・体調は良くなるんだろうか?
・休んでいる間の生活は大丈夫だろうか?
・無事に復職できるのか?

私が休職中に毎回感じた不安です。私は不安から問題を見つけ、情報や助けを得て復職に向かいました。すべて上手くいった訳ではありませんが、解決思考により余計な不安を減らせたのは事実です。

【私の経験】不安だらけのとき成功
途中で不安なく復職したときは、後で疲れがドッと出て休みがちになりました。不安があって、復職前にいろいろと調べたり相談したりしたときは、復職後の不調が減りました。

私が不安の解消に最も役立ったと思うことは「役立つ情報」です。


症状の悪さや気分の落ち込みは病気のせい

病気か何かが悪いんであって、あなたそのものが悪いのではありません。病気をやっつけましょう。

【私の経験】「病は気から」→「気は病から」
ある人「病は気から。もっと気合い入れたら?」
私「気は病から、です。気合いで治るんだったら、とっくに治ってます」


ルールを守る

ルールは守りましょう。例えば、会社のルール、医療機関のルール、法令です。

自分を大切にすることが療養のコツです。しかし自分の思いだけで周りが動くわけではありません。ルールを守り、相手のことを考えた行動が、確実な復職につながります。


思い込みで判断せず、疑問点を問い合わせる

判断を間違えると、自分だけでなく他の人にも迷惑がかかる場合があります。納得がいかないことは問い合わせましょう。

ルールや手続きには、わかりづらいものがあります。自分が調べてわからないことは、問い合わせて確認しましょう。私は、会社だけでなく、健康保険組合、保険会社にも問い合わせたことがあります。どの方も親切に教えてくれました。

(あくまで個人的な印象ですが、)問い合わせ窓口の方は「待っています」。「不明点がある人は、手遅れにならないように問い合わせる」と思っているのでは、と感じたこともありました。

問い合わせ窓口は、人を助けるためにあります。遠慮なんかしないで、問い合わせましょう。


休職・復職に関する相談先の候補

・家族
・主治医(必要に応じて、適当な相談先を教えてもらう)
・上司、人事担当者
・産業保健スタッフ、産業医(私は人事担当者を動かすとき助けてもらいました)

私は以下に相談した経験がありませんが、参考までに紹介します。
・お住まいの自治体(役所の相談窓口など)
「治療と仕事の両立支援ナビ」/相談可能な支援機関:産業保険総合支援センター(、地域産業保健センター)、大病院の患者相談窓口など。連携している専門家から交渉の知恵をもらえるかもしれません。
・労働局の総合労働相談コーナー(例:東京労働局/労働関係相談先一覧


「やりとりの記録」「手続きの控え」を残す

休職中は複数の所とやり取りがあります。会社(上司、産業医、人事など)、医療機関、健康保険組合、保険会社など。後になって、記録や控えが必要になる場面が出てきます。

自分でやれない場合、家族に手伝ってもらうことも検討してください。

自分から提出する書類の控え(メール等も)
コピーを取り、自分の控えとして保管しておきましょう。発信日も記録してください。コピーを取るのが難しい場合、スマホで写真を撮るのもアリです。家族か誰かに助けてもらいましょう。

●自分が受け付けた書類
受付日を記録して保管しましょう(紙の量が増える場合、時系列に並べておくとよいです)

●電話やメールの類
時系列に確認できるように記録しておきましょう。

パソコンやスマートフォンでやった手続き
スクリーンショットをとるなどして証拠を残しましょう。(後になって、会社から「やった、やらない」の話になった時に証拠を出せます。

自分で整理するのがツライ場合、家族に手伝っていただくことをおすすめします。実は私、資料や情報の整理ができていなくて、後で困ることがあります。


相⼿が言ってくることは決まっている。対応を準備しよう

病気に関して、会社の人や産業医、主治医が言ってくることは、ある程度決まっています。キチンと言い返すことが、メンタルを保つ上でも大切です。事前に想定しておいて、対応を準備しておきましょう。

<最近読んで学びになった本>
・「自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本」司 拓也 (著)(ぱる出版)

●症状を理解してもらえないことを想定する
「倦怠感・疲労感」、「朝起き上がれない」などは本人にとって困った症状です。しかし、深刻な症状として理解されないこともあります。具体的に表現するなど、対応を用意しておきましょう。

【私の経験】(倦怠感がひどくて受診した)クリニックの診察室にて
(「倦怠感」と言っても深刻さが伝わらない感じがしたとき)

私「今は必死で座って必死にしゃべっています。もともと声が大きいので元気そうに見えるのかもしれません。今日まで3日寝て体力をためていました。診察から帰ったら、家で3日くらい寝込むはずです」

(目の前の医師になんとか伝わったようです)

誤解を受けやすい症状を「病気」と理解してもらうために、(公的機関や医師が公開している)病気の説明の紙を見せるのも一案です。


原因は複数の視点で考える

原因は一つではありません。原因を探るとき複数の視点で考えることをオススメします。私はワイナーの原因帰属理論を知ってから、気分が落ち込むことが減りました。

●ワイナーの原因帰属理論
結果の原因を4つに分けて考える方法です。
・いつも(安定)-自分(内的)
・たまたま(不安定)-自分(内的)
・いつも(安定)-自分以外(外的)
・たまたま(不安定)-自分以外(外的)


<まとめ>

「(2)ステップ2.不調になってから休職開始まで」では、予期せぬ病気で仕事に支障が出始めてから、会社が休職を決めるまでの間に行うことや心がけを紹介しました。

ステップ2-1.不調で仕事に支障が出始める
2-1-1.健康状態を記録する
2-1-2.あえて休息をとる
2-1-3.上司や職場メンバーに相談する
2-1-4.医療機関を受診する
・早めの受診ができない場合、上司と産業保健スタッフに相談する。医療機関に交渉する
・わけのわからない症状は「身体疾患」も疑う
・症状がツライ時は、重大な決断は避ける。即答も避ける
・「びっくり退職」はやめよう

ステップ2-2.就業規則を確認する

ステップ2-3.予定して長く休む検討をする
2-3-1.主治医に相談する
2-3-2.家族に相談する
2-3-3.上司や人事に相談する
2-3-4.就業規則以外の会社ルールを確認する
2-3-5.業務引き継ぎの準備をする

ステップ2-4.診断書の提出、会社による休職決定
2-4-1. 主治医から「休職用の診断書」をもらう
2-4-2.会社に診断書を提出して、休職手続きを依頼する
・提出する前に、診断書の控えコピーをとる
・診断書の内容は「要配慮個人情報」
2-4-3.上司への報告、業務の引継ぎを漏れなく行う
2-4-4.休職のルール・手順の詳細を再確認する
2-4-5.休職決定の連絡を受ける

おすすめの心がけ・行動
不安をうまく使う
・症状の悪さや気分の落ち込みは病気のせい
・ルールを守る
・自分で勝手な判断をせず、疑問点を問い合わせる
・休職・復職に関する相談先の候補(とにかく相談してみる)
・「やりとりの記録」「手続きの控え」を残す
・相⼿が言ってくることは決まっている。対応を準備しよう
・原因は複数の視点で考える

体調が悪くて頭も働きづらい時期は、自分だけで判断せず、相談して助けを借りましょう。


ここまでお読みいただきありがとうございました。休職を始めると、ステップ3.以降に進みます。

――【休職からの復職体験談】シリーズ ――
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はじめに
(1)ステップ1.事前の備え
(2)ステップ2.不調になってから休職開始まで
(3)ステップ3.休職直後からの療養
(4)ステップ4.復職に向けたリハビリ
(5)ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
(6)ステップ6.復職直前から復職後
(7)[番外編]もし退職することになったら
(8)参考情報(ウェブサイト、書籍)


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