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【休職からの復職体験談】(4)ステップ4.復職に向けたリハビリ

ステップ4.では、自宅で体調よく生活できるようになってから、復職の手続きの手前までを解説します。復職に向けてリハビリをする時期です。私の経験をもとに、リハビリを考えるためのヒントを書きました。

<休職前から復職後までの6ステップ>
ステップ1.事前の備え
ステップ2.不調になってから休職開始まで
ステップ3.休職直後からの療養
ステップ4.復職に向けたリハビリ
ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
ステップ6.復職直前から復職後

目次から気になる所を見ていただけると嬉しいです。ご自身に合うリハビリをやってみてください。

※記事内の情報は、自己責任で利用をお願いします。

復職に向けたリハビリのコツ

リハビリの目標は「家で体調よく生活できる」と「会社で仕事ができる」の2段階ある

家で体調よく生活でき、かつ、会社で仕事ができるようになれば復職できます(*)。

復職すると、単に仕事ができるだけではなく、健康を保たねばなりません。家だけで生活するのと、仕事に行くのとでは身体の負担も違います。脳の疲れも大違いです。

休職するまで心身が痛んだのですから、「健康と仕事を両立できる状態」に近づけるため、徐々に慣らしていくリハビリが重要です。

(*)参考:「治療と就労の両立支援ガイダンス」遠藤 源樹 (著)(労務行政)


最適なリハビリは、人と仕事によって異なる

復職に向けたリハビリは、ご自身の業務や職場環境によって何をやればよいか違ってきます。外での体力仕事と、外部とのやり取りがないパソコン仕事とでは、必要なリハビリも異なります。

復職に向けたリハビリの前に、以下を書き出してみて整理するとよいでしょう。
・業務をやるために何ができればよいのか(スキル)
・頭と身体がどういう状態になっていたらよいのか
・リハビリとして何をやればよいのか


リハビリの内容は、自分で判断する

リハビリの量・質・期間は人によって違います。厳しい言い方になりますが、自己責任が問われます。人に言われた通り続けるのではなく、自分の判断で調整することが大事です。


体調には波がある

復職までの体調は波があります。私の経験では、リハビリ期間に良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、体調が回復していきました。だんだんできることが増えていきます。負荷を上げ過ぎて体調を大きく崩さないよう、慎重にリハビリを進めましょう。


現在地を知り、目標を知り、目標に向かう

リハビリは、問題解決と同じやり方をとるとよいでしょう。
・現在地を知り
・目標を知り
・現在地から目標に向かう策を考え、やってみる


ステップ4-1.今の自分を把握する

● 生活記録をチェックする
「身体活動」と「頭脳活動」に分けて、今の自分の状況を把握しましょう
・今、「何が」「どれだけ」できるのか
・復職に足らないところは、何があればできるようになるか
・負荷がかかり過ぎると、自分の身体はどうなりそうか
・調子を崩したとき、どうやって回復させるか

●書籍やインターネットで情報収集する
リハビリを考える時期になったら、リハビリをどうすればよいか、書籍やインターネットで情報収集するとよいでしょう。大きめの書店や図書館に行ってみるのもオススメです。

収集した情報を使って、今の自分はどれくらいのレベルか、を見つめ直してみるとよいでしょう。


ステップ4-2.復職可能の基準を確認する

リハビリの目標を定めるためです。会社や主治医に「復職可能と判断する基準」を確認しておくことは、リハビリを考えるためにも重要です。

4-2-1.会社が「復職可能」と判断する基準

できる限り、産業医や人事担当者に判断基準を確認しておきましょう。会社の判断基準を聞けたら、主治医に伝えてください。会社の条件に合わせて、主治医が治療計画や処方薬を調整する可能性があります。

【私の経験】
産業医や人事担当者に判断基準を聞いたとき、細かい条件は教えてもらえませんでした。ケースバイケースで判断するからとのこと。

試し勤務(休職扱いのまま職場に出勤して、復職できるか評価してもらう制度)ができる場合、どのレベルまで回復すれば「試し勤務」に入れるかも確認することをオススメします。


4-2-2.主治医が「復職可能」と判断する基準

主治医も判断基準をもっています。私の経験では、医師によって基準が異なります。遅くとも自分が復職を考えられる体調になってきたら、主治医に確認しておきましょう。


復職可能の判断基準の確認に公的機関のガイドラインを活用する

私の経験です。一般的な「復職可能の判断基準」を知りたかったとき、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(*)」を見つけました。丁寧に書かれていて、休職した本人が読んでも役立つ内容です。((*) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html

私は、上記の手引きをもとに、主治医と産業医、人事担当者に復職可能の基準を確認した経験があります。

○職場復帰可否の判断基準○
 職場復帰可否については、個々のケースに応じて総合的な判断が必要です。労働者の業務遂行能力が完全に改善していないことも考慮し、職場の受け入れ制度や態勢と組み合わせながら判断しなければなりません。なお、判断基準の例を下記に示しますので参考としてください。
<判断基準の例>
・労働者が十分な意欲を示している
・通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
・決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
・業務に必要な作業ができる
・作業による疲労が翌日までに十分回復する
・適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
・業務遂行能力に必要な注意力・集中力が回復している   など

厚生労働省・労働者健康安全機構「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」p.6より引用

↑↑↑【私の意見】
<業務に必要な作業ができる>、<業務遂行能力に必要な注意力・集中力>については、「復職可能」なレベルを判断しづらいです。私は休職中のリハビリで、復職可能と判断してもらえる証拠を積み重ねることにしました。

【私の経験】通勤+勤務+家での生活で、健康が保てるか?
通勤+勤務をやっているくらい頭と身体を動かしても、体調が良いまま保てていたときに復職手続きをすると、スムーズに復職できました。「心の健康問題…職場復帰支援の手引き」の記載にも合っています。

産業医向けの書籍を読むと、同様の判断基準が見つかりました。

◇復帰可否の判断のポイント
3つの条件
(1) 医学的に就業に耐える状態である。(完治は必須ではない
(2) 本人が職場復帰の意思を示し、復帰に向けての準備を行っている。
(3) 職場も職場復帰を受け入れる準備がある。

「産業医ガイド 第2版」日本医事新報社
  第4章 産業メンタルヘルス 10.職場復帰判定 より引用
(太字は私)

原則は現職復帰(例外もある)

ガイドラインや書籍を確認する限り、復職は現職復帰(原職復帰と表記される場合もあり)が原則です(もちろん例外あり)。

現職復帰するか?(職場は?業務は?)
私の経験では、会社の人が「治った?」「元通り働ける?」と問うてくることがありました。その理由を「現職復帰の原則」に照らして考えてみます。

休職前と復職時の組み合わせは下記4つに分けられます。
[1] 「同じ職場」「同じ業務」(狭い意味の現職復帰)
[2] 「同じ職場」「異なる業務」(広い意味の現職復帰)
[3] 「異なる職場」「同じ業務」
[4] 「異なる職場」「異なる業務」

忘れてはいけないことは「復職の目標」です。目標は、健康に働き続け、業務で結果を出すこと。目標を達成するために、職場や業務をどうすればよいかを考えてみましょう。自分で考えを事前に整理しておくと、会社との話もスムーズにいきます。

■「同じ職場」か「異なる職場」か

●原則は「同じ職場」に戻る
環境が変わるとストレスが増えるので、同じ職場に戻す考えです。

メンタルヘルス不調で休んでいた人が職場復帰する場合には、まずは元の職場(休み始めたときの職場)に戻すのが原則です。新しい環境に適応することが心理的な負担になるためです。

厚生労働省「こころの耳」/「用語解説:現職復帰の原則」より引用

ただし、職場環境の問題で体調を崩した、休職前と同じ職場に戻るのは難しいなどの事情がある場合、会社に変更を相談してみましょう。

●異動後の環境変化が休職の原因と思われる場合は「異動前の職場」に

順調に働けていた「異動前の職場」に戻すケースもあるようです。

… 異動等を誘因として発症したケースにおいては、現在の新しい職場にうまく適応できなかった結果である可能性が高いため、適応できていた以前の職場に戻すか、又は他の適応可能と思われる職場への異動を積極的に考慮した方がよい場合がある。

「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省、労働者健康安全機構)p.20 より引用

■「同じ業務」か「異なる業務」か

●原則は「同じ業務」に戻る

傷病休職からの復職要件の一つに「治癒」があります。この治癒については、原則として、従前の業務を通常の程度に行える健康状態に回復したことを意味すると解されています。

「人事・労務トラブルのグレーゾーン70」杜若経営法律事務所 (著)(労務行政)p.192より引用

ガイドラインを見ると、本人の経験やスキルを活かす観点でも、同じ業務に戻すことが推奨されています。

これまでの経験やスキルを使い仕事を続けるために、まずは今の職場内での業務調整ができないか、労務・人事課担当や上司に相談します。

健康管理と職業生活の両立とワークブック(難病編)」(pdf)(厚生労働行政推進調査事業「難病患者の地域支援体制に関する研究」班 作成
)p.15より引用(群馬県難病相談支援センター ⇒ 「治療と仕事の両立に関すること」に掲載)

私の復職経験では、「同じ業務」といっても、最初のうちは負荷を減らしていました。再発防止のためです。

●「通常の程度に行える」は交渉できる
復職時点で「通常の程度」の100%到達していなくても、ある程度期間をかけて慣らしていけば「通常の程度」となる見込があればよい考え方もあります。人事担当者向けの本で解説されていますので、人事部門の人は知っていておかしくない話です。
参考:「人事・労務トラブルのグレーゾーン70」杜若経営法律事務所 (著)(労務行政)

●一般的に「段階的復帰」が推奨されている

イ 職場復帰後における就業上の配慮
数ヶ月にわたって休業していた労働者に、いきなり発病前と同じ質、量の仕事を期待することには無理がある。… (中略)…
このため、休業期間を短縮したり、円滑な職場復帰のためにも、職場復帰後の労働負荷を軽減し、段階的に元に戻す等の配慮は重要な対策となる。

「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省、労働者健康安全機構)p.20 より引用 (太字は私)

↑↑↑【私の経験】
復職面談前に上記の「職場復帰後における就業上の配慮」を読んでいました。公的なガイドラインで「段階的復帰」を勧めているので、復職面談時に自信を持って会社と交渉できたのは確かです。会社の人が納得しなかったら、上記の手引きを見せるつもりでした。

厚生労働省が進めている「治療と仕事の両立支援」では、職場復帰支援プランに段階的復帰の例が紹介されています。
参考:
(厚生労働省)治療と仕事の両立支援ナビ
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(pdf)
企業・医療機関連携マニュアル(pdf)

●「同じ業務」に戻るのが難しい場合

労働契約によって、3パターンに分けてみます。
[1] 職種や業務内容は特定されていない
[2] 職種や業務内容は特定。変更の可能性あり
[3] 職種や業務内容は特定。変更なし

[1] 職種や業務内容を特定されていない契約
正社員の多くがこのケースにあたります。
休職前と同じ業務に戻れなくても、「本人ができる業務で(軽易なものでも)」、「会社でやれる業務があれば」復職は拒否されません(絶対ではないですが)。もちろん会社と本人で話し合い、合意することが必要です。

片山組事件の最高裁判例がもとになっています。詳しくは、「片山組事件」で検索いただくと確認できます。弁護士による解説が分かりやすいです。
参考:
「人事・労務トラブルのグレーゾーン70」杜若経営法律事務所 (著)(労務行政)p.192-193
「メンタルヘルス不調による休職・復職の実務と規程」柊木野 一紀 (編)(日本法令)p.118

[2] 職種や業務内容は特定。変更の可能性あり
自分の希望によらず、労働契約に決められた「変更の範囲」内で変更する可能性があります。

2024年4月から労働契約で「就業場所・業務の変更の範囲の明示」が義務化されます。とくに、「入社のとき」「有期雇用で契約更新するとき」、契約上の「就業場所・業務の変更の範囲」を確認しておきましょう。
参考:
(厚生労働省)リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(pdf)」
(上記の掲載サイト)「…労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)( https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html )」

●職場の事情により、復職後は別の業務を担当する場合もある
休職中に他の人を割り当てていて、人員配置をそのままにしたい場合です。復職した人は休職前とは別の業務に割り当てられます。(私も経験しました)

[3] 職種や業務内容は特定。変更なし
休職前の業務に戻れない場合、とくに契約上の「職種や業務内容」では働けない場合、復職は難しくなります。

しかし、あきらめは禁物です。
働くことを希望する場合、自分にできる業務で復職できないか、会社に相談・交渉してみましょう。
参考:(厚生労働省)治療と仕事の両立支援ナビ「相談可能な支援機関」


リモートワークのみで復職可能かは会社のルールによる。交渉は可能

会社の就業規則を確認してください。

(私が得た情報では、)リモートワークがある会社でも、病気休職の場合「会社から出社を指示されたら、すぐに問題なく出社できる状態」を復職可能の条件にしていることがあります。

私の経験では、
・起床リズムを保てない
・薬の副作用(*)で集中力が低下する
などの問題を人事担当者が懸念していました。(なので、リモートワークのみ可能では復職を認められない、との説明)

(*)【私の意見】薬の詳細は産業医のみに話し、人事担当者には業務に必要なことのみを産業医から伝えてもらうのがよいと考えています。薬の名前からイメージが独り歩きすることを防ぐためです。産業医からは安全配慮の観点も含めて伝えてもらえるので、人事担当者が納得しやすいです。


ステップ4-3.リハビリの相談

人によって言うことが違います。主治医と意見がぶつかることもあるでしょう。「リハビリとして何をどれだけやればよいか?」の問いに100%の正解を言ってくれる人はいません。ただ、第三者の意見をもらうことは重要です。

4-3-1.主治医への相談

医療のプロである医師に知恵を借りましょう。復職に向けて、身体と脳の動きをどうやって上げていくか、リハビリの内容や注意点を相談するのがオススメです。看護師などからアドバイスを得られるかもしれません。

あなたの身体のプロは、あなたです。

どんなに偉い人から言われたことでも、自分の頭で判断して、自分の身体で確認して、修正しましょう。私の経験上、悪くなったら「患者のせい」と言われます(本当は患者だけの原因ではないと思うのですが)。

リハビリで強すぎて身体に大きなダメージを受けると、寝込む日が出るなどして、回復や復職が遅れる結果になりかねません。無理をしすぎないように注意してください。


4-3-2.会社への相談

会社によっては、産業保健スタッフ(か人事担当者)が復職に向けたリハビリに役立つ情報をもっているかもしれません(こんなリハビリが良かった/悪かった。こんな施設がある)。聞けたら聞いておくとよいでしょう。

(私の希望)
会社での休職・復職事例をもとに、産業保健スタッフがリハビリをアドバイスするような支援があると、復職もスムーズにいくと思います。


4-3-3.家族との相談

リハビリによって、やっていた家事がおろそかになる場合、家族と相談してリハビリのスケジュールを決めましょう。

追加でお金がかかる場合、「事前に」相談しておきましょう。


リワークプログラム(対象:精神疾患)

精神疾患なら、リワークプログラム(以下、リワーク)も可能です。医療機関で相談するとよいです。(私はリワークの利用経験がありません)

もし私がリワークを使うなら、事前に産業医や会社の人事担当者に相談します。インターネット上の情報を見る限り、リワークは場所によってやることが違うからです(負荷と時間)。リワークをやったからといって、自分の会社に復職できるレベルになったとは限りません。

精神疾患でない方でも興味のある方は、リワークの内容を調べ、リワークのようなリハビリをやるとよいでしょう。リワークプログラムを自分でやることを「セルフリワーク」と呼ぶこともあるようです。

私がウェブサイトや本で読んだところ、リワークは下記3点に役立つようです。
・自己理解(自分の長所短所、どういうときに自分に何が起きるか、自分で何をやるか(対処)、職場の人に何をやってもらえれば防げるか(配慮))
・メンタル面でのトラブル再発防止(今回不調になった原因を探り、解決策を考える)
・認知のゆがみに気づき、考え方のクセを修正すること


ステップ4-4.リハビリの計画・実行・振り返り・調整

リハビリは計画通りにやるだけでなく、振り返りと調整が重要です。リハビリをやるなかで、一時的に体調が悪くなることがあるからです。負荷を上げ過ぎて体調を大きく崩すと、回復が遅れてしまう可能性もあります。

リハビリの負荷と休憩の入れ方を試行錯誤しながら進めることになるでしょう。

身体のことは主治医に相談する

病気や本人の状況によって、最適解は異なると思います。病気のことは、医師のほうがよく経験しています。医師の意見を大事にしましょう。


通勤訓練

通勤が伴う仕事の場合、「問題なく通勤できること」が復職のために必要です。自信をもって通勤ができるよう、だんだん負荷を上げて訓練しましょう。無理は禁物です。

「訓練」ではなく「(どこまでできるのかの)確認」のつもりでやると、オーバーペースを防げます。

●図書館を使う通勤訓練例(私の経験を少し改変)
通勤は片道60分(うち電車30分)
<全体を通じての注意>
しんどくなったら、すぐに帰って休息する。
もう少しいけるかな、と思うくらいで止める。
<1週目>
1日ごと((月)(水)(金))。出発は普段の出勤より30分前(以降同じ)。電車は途中下車(乗車15分)。カフェで読書したら帰宅。
(注:ラッシュを避けると負荷が減る)
<2週目>
1日ごと((月)(水)(金))。職場の最寄駅まで行ってすぐ帰る。
<3週目>
1日ごと((月)(水)(金))。職場の最寄駅を経由して図書館に。昼まで図書館で過ごして帰る。
<4週目>:3週目+図書館で15時まで。
<5週目>:4週目+週5日((月)~(金))
<6週目~>:5週目+図書館で16時→17時→18時、と増やしていく。疲れを感じたら時間を短縮する。
<主治医に復職可否判断をしてもらう頃>
週5日((月)~(金))。職場の最寄駅を経由して図書館に。通常の終業時刻+30分まで図書館で過ごしてから帰宅。

もし身体がだるくなってしまって訓練の予定がこなせなかった場合、落ち込まないでください。ある意味で成功です。実は、疲れのセンサーが上手く働いているからです。不調時に上手く調整する練習です。

復職可能の診断書を書いてもらう前には、ラッシュ時の通勤・退勤ができるようにしておきましょう。

【注意】休職中、会社への立ち入りが禁止されている場合があります。会社の中には営業秘密もあります。会社のルールは守りましょう。

●図書館、カフェなど
「図書館に行って、数時間本を読むこと」はよいリハビリになります。とくに最初のうちは、自分の読みたい本を自分のペースで読めばよいです。休憩も多めに取りましょう。誰も注意しません。

業務に関係する本で、休職前は読めなかった本をじっくり読むのもオススメです。知識が深まり、復職後の業務に役立ちます。

カフェでリラックスしながら読書するのも、オススメです。ただ、カフェインのとりすぎに注意しましょう。

復職後の仕事のやり方について、役立ちそうな本を紹介しておきます。以下以外にも多くありますので、ご自身で探して読んでみてください。

<コミュニケーションに関する本>
・「キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ」横山 信弘 (著)(すばる舎)
・「上司へのすごい伝え方」斉藤 由美子 (著)(秀和システム) ⇒ キーワードは「ソーシャルスタイル」

<仕事術に関する本>
・「究極の判断力を身につけるインバスケット思考」鳥原 隆志 (著)(WAVE出版) ⇒ キーワードは「インバスケット」
・発達障害の人向けの仕事術に関する本
 ⇒ 脳に負担のない工夫が紹介されています。発達障害でない方も、使えるノウハウを見つけてみてください。

<仕事のミス防止に関する本>
・「仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方」宇都出 雅巳 (著)(クロスメディア・パブリッシング)
・「ミスしても評価が高い人は、何をしているのか」飯野 謙次 (著)(日経BP)


オンライン講座の活用

現在、動画で学べるオンライン講座がいろいろ出ています。無料で公開されているお役立ち動画もあります。仕事に役立つ内容と思う講座は、受講を検討してみてもよいでしょう。休職前や復職後に比べ、学習にかけられる時間が確保できますので。

【!】もし高額な講座を受講する場合、事前に十分に検討することをオススメします。多額の出費は、家族などと相談してからにしましょう。

パソコン作業に慣れる意味では、オンライン講座の動画視聴から始めるとよいです。疲れたら止めて休憩できますし、集中と休憩の練習もできます。


資格試験の学習

休職中に資格試験の学習をすることには賛否両論があります。私は「自己責任でやるなら賛成」です。

労力とお金がかかるので自己責任でやらねばなりません。メリット・デメリットを考えてやることをオススメします。資格試験の学習をやるなら、熱中して身体に無理をしないように、また、復職予定とうまくバランスをとって進めましょう。

●休職中に資格試験学習をやることのメリット
[1] 脳トレになる
[2] 体系的に知識を学べる
[3] 復職後の業務に関する資格なら、復職後に役立つ

[1] 脳トレになる
私が資格試験学習で感じた最大のメリットは脳トレです。復職後も、脳トレをやった自信のおかげで安心します。時間にプレッシャーがかかる業務を急に振られたときも、資格試験と同じ感覚でこなせました。

資格試験では、大量の知識を詰め込み、決められた時間に問題を読んで正答を出さねばなりません。試験準備をすることで、記憶することや、集中して頭脳労働をすることに慣れていきます。

[2] 体系的に知識を学べる
資格試験のテキストを眺めてみてください。試験範囲が体系的に整理されています。体系的に知識を得ておくと、全体を見た判断ができます。

[3] 復職後の業務に関する資格なら、復職後に役立つ
復職後の業務に関係する資格なら、なお良いです。職場に戻ってから使える知識や関連資格を探してみてください。資格試験に合格すると、会社での評価が上がる可能性があります。

●休職中に資格試験学習をやることのデメリット
[1] 試験日に向けて無理をしがち
[2] 復職より試験を優先してしまう
[3] 業務に関係ない資格だと、復職意思を疑われる可能性がある

[1] 試験日に向けて無理をしがち
例えば試験日が1年に1回と決まっている場合、試験日に合わせて学習を集中してやらなければなりません。脳や身体のキャパシティを超えて、長時間の学習をしてしまうことがあります。すると、体調を大きく崩して復職が遅れるかもしれません。集中力が高く、負けず嫌いの方はとくに注意してください。

[2] 復職より試験を優先してしまう
復職のためにリハビリをしています。試験準備で復職が遅れたら、本末転倒です。

[3] 業務に関係ない資格だと、復職意思を疑われる可能性がある
資格を取って転職(または独立)したいんだね、と思われないように気をつけましょう。

学習法については、自分に合うやり方を見つけてみてください。休職中はいろいろ試せるチャンスです。
<資格試験学習に関する本>
・「なるほど! 合格勉強術」宇都出 雅巳 (著)(実務教育出版)
・「暗記が苦手な人の 3ステップ記憶勉強術」宇都出 雅巳 (著)(実務教育出版)⇒キーワード「高速大量回転法」(私に役立っている学習法です)


仕事を想定した訓練

通常、図書館ではパソコンを使えません。図書館では、資格試験の学習ができる自習スペースも限られると思います。

通勤訓練と組み合わせて、自宅で訓練スケジュールを組みましょう。例えば〇時~〇時と時間を決めて、会社の勤務時間と同じように過ごしてみてください(資格試験学習、オンライン講座、パソコンで資料作成など、自分が決めたことを時間内に実施)。

休職前・復職後の業務を想定して、パソコンで作業してみるのもよいでしょう。ただし、会社の情報セキュリティルールを守ってください。


同じ職場・同じ業務での復職が難しいときは、早めに相談する

(リハビリがある程度進んだ後、)「現職復帰は難しい」と本人や主治医が判断している場合、「どういう業務で、どういう職場なら、健康を保って業務の結果を出せるか」検討しましょう。

次に、復職手続きを始める前に、上司や人事担当者、産業医に伝えて交渉しましょう。会社も職場や業務を変える準備が必要になるので。


【私の提案】自分を追い詰めないように注意して、再発防止を考えてみる

復職した後に、同じような症状が再発して再休職することは避けたいです。職場の負担が増えますし、自分や家族に迷惑がかかります。

休職前や休職中を振り返って、休職の再発防止を考えてみましょう。精神疾患の復職に関する本では、休職に至った原因を分析して再発防止策を考えるワークが紹介されています。

ただ個人的には、休職に至った原因を追い求めて「過去」だけに集中することはオススメしません。復職後をどう乗り切るか「将来」を考えて対策を考えるべき、と私は経験から感じています。

過去のツライ経験を思い出して分析するのは、疲れるし落ち込むので。「これからどうするか」の前向きな考えで進めるほうが、具体的な準備をしやすいです。
【注意】過去の振り返りでメンタルが非常につらくなった場合、医師や公認心理師への相談も検討しましょう。

●復職後のトラブルのシミュレーション
心の体力があるときのみ、復職後にどんなことが起きそうか、どう対応するかを気楽に考えてみてください。
[1] 想定トラブル(どんなときに、自分はどうなる?仕事はどうなる?)
[2] 自分でできる対策(対処)
[3] 主治医などに頼る対策(予定外の通院など)
[4] 職場にお願いする対策(配慮、業務調整)

[1] 想定トラブル
どんなときに調子が悪くなりそうですか?(時間の余裕がないとき?低気圧?連続作業?)
症状が出たとき、仕事にどんな影響が出ますか?

[2] 自分でできる対策
調子が悪くなると、自分に出る症状は?
症状が出たら、どう対処しますか?(休憩の取り方、頓服薬など)

[3] 主治医などに頼る対策(予定外の通院など)
通院治療で回復できるなら、どういうスケジュールでやるか、考えてみましょう。

私は通勤訓練の終盤に、職場からの臨時通院をシミュレーションしていました。実際、復職直後に不調を感じたとき、退勤時に通院。シミュレーションをしていたので、疲れが少なかったように感じます。遅刻や病欠も防げました。

[4] 職場にお願いする対策(配慮、業務調整)
仕事への悪影響を減らすために、職場の人に何をやってもらえばよいですか?


休職前の自分と今の自分は違う。確実に成長している

休職中の心身は、休職前と同じではありません。休職中の治療やセルフケアによって一段と強くなっています。自分で気づかないうちに、いろいろ学んで成長しています。


おすすめの心がけ・行動

外出先で言われることに備える(「今日は仕事お休み?」はただの挨拶)

平日の日中に外出が増えると、いろんなことを言われます。ただ、「仕事をせずに休んでいる人を責めている」わけではありません。差しさわりのない回答を準備しておきましょう。

【私の経験】「今日は仕事お休み?」
平日の午前中。リハビリがてら、お店で買い物。
ある店員さん「あら~。今日は仕事お休み?
(日曜日にときどき話していた店員さん)
(休職がバレてるかな?と思って一瞬ビビった。けど、お店には関係ない。客とのコミュニケーションだろう。ただの挨拶

私「今日休みです。今日は天気がいいですね(と話をずらす)」
(今日も明日も明後日も休みなんだけど、今日「は」と限定していないから、ウソは言っていない。店の売り上げに貢献した。客として胸を張っておけばよい)

※冷静にみると「考えすぎ」です。自宅生活が長くて久しぶりに外出すると、意外に不安を感じたようです。


完璧を目指さない。限度を知る

「自分ができること」「医療ができること」「会社ができること」には限度があります。自分の現実を直視し、うまくやっていくのが成功のコツです。

私が限度を知らずに求めた完璧に反論していきます。
×完治したい。症状をゼロにしたい
例えば精神疾患に「完治」は使われません。よくて「寛解(症状がほぼなくなった状態)」です。症状の可能性をゼロにするのは難しい病気もあります。

現在の医療の限界のせいで、回復がある程度で止まってしまうことがあります。医療は日々進歩しているので、回復をあきらめないことも大切ですが、今の体調でうまく生活することも重要です。

×再発しない
(治療や回復に年月がかかる)慢性疾患では、再発(良くなってから再度、症状が出る)、再燃(良くなり切る前に、症状が悪くなる)がつきものです。復職後も再発がありえると思って、事前に対策しておくことをオススメします。

×復職後すぐに力を発揮できる
気持ちは大切です。しかし、仕事をしていない期間があります。100%健康だとしても、ブランクから復帰してすぐ100%の結果が出せるわけではありません。もちろんリハビリをやって、100%に近づける努力は必要と思います。

×元の職場で元の業務に100%戻れる
休職前の業務や職場環境のうち、身体に負担がかかっていたものがあるかもしれません。自分の力を職場で発揮するために、苦手な業務を避ける、環境を変えるなどの対策が有効なこともあります。そのほうが会社の利益になり、自分のキャリアアップにもなるでしょう

健康に働き続け、業務で成果を出すことを考えてください。


予想どおりいかないと思っておく

私の経験です。
・休職から復職後にかけて、想定外のことが「突然」起きました。
・体調が回復していない時期はとくに、視野が狭くなります。
・想定外のことに考えなしで対応すると、ミスすることがあります。

予想していないことが起きたときは、他の人の助けを借りて、冷静に判断しましょう。


<まとめ>

「ステップ4.復職に向けたリハビリ」では、復職手続きの手前までに行うリハビリについて、注意点や心がけを書きました。

■復職に向けたリハビリのコツ
・リハビリの目標は「家で生活できる」と「会社で仕事ができる」の2段階ある
・最適なリハビリは、人と仕事によって異なる
・リハビリの内容は、自分で判断する
・体調には波がある
・現在地を知り、目標を知り、目標に向かう

ステップ4-1.今の自分を把握する

ステップ4-2.復職可能の基準を確認する
4-2-1.会社が「復職可能」と判断する基準
4-2-2.主治医が「復職可能」と判断する基準
・復職可能の判断基準の確認に公的機関のガイドラインを活用する
・原則は現職復帰(例外もある)
・リモートワークのみで復職可能かは会社のルールによる。交渉は可能

ステップ4-3.リハビリの相談
4-3-1.主治医への相談
4-3-2.会社への相談
4-3-3.家族との相談
・リワークプログラム(精神疾患の方は検討の価値あり)

ステップ4-4.リハビリの計画・実行・振り返り・調整
・身体のことは主治医に相談する
・通勤訓練
・オンライン講座の活用
・資格試験の学習
・仕事を想定した訓練
・同じ職場・同じ業務での復職が難しいときは、早めに相談する
・【私の提案】自分を追い詰めないように、復職後の再発防止を考える
・休職前の自分と今の自分は違う。確実に成長している

■おすすめの心がけ・行動
・外出先で言われることに備える
・完璧を目指さない。限度を知る
・予想どおりいかないと思っておく

リハビリの正解は人の数だけあります(突き放した言い方で申し訳ありません)。リハビリについて「何を、どれくらいの負荷で、どれだけやるか」は、ご自身で試行錯誤しながら正解を見つけていってください。。


ここまでお読みいただきありがとうございました。次はステップ5.で、復職手続きの段階で何をやるか、何を心がけるかを解説します。

――【休職からの復職体験談】シリーズ ――
(下線のリンクをクリックすると記事が開きます)

はじめに
(1)ステップ1.事前の備え
(2)ステップ2.不調になってから休職開始まで
(3)ステップ3.休職直後からの療養
(4)ステップ4.復職に向けたリハビリ
(5)ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
(6)ステップ6.復職直前から復職後
(7)[番外編]もし退職することになったら
(8)参考情報(ウェブサイト、書籍)

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