【休職からの復職体験談】(6)ステップ6.復職直前から復職後
ステップ6.では、復職が決まった後から復職後のフォローまでを解説します。いよいよ本番。嬉しい反面、慎重さが求められる時期です。
私の復職経験をもとに、復職直前から復職後にありそうなことと対応例を書きました。復職のシミュレーションとして読んでいただけると幸いです。
再休職せずに復職後の生活を続けるために、この記事からヒントを見つけてみてください。大事なことは、復職後も健康を保つことです。
※記事内の情報は、自己責任で利用をお願いします。
6-1.復職決定から復職日の直前まで
ペースダウンのすすめ
復職前も生活リズムが重要です。身体に無理をして生活リズムを守っていないか、自分の身体にやさしく聞いてみましょう。復職は決まっているので、無理をする必要はありません。(もちろん、復職が決まる前も無理しないことをオススメします)
私は数々の失敗経験の後、復職が決まった後はリハビリの活動量を減らすようになりました。復職が決まった後は、休息を増やし、昼寝もしました。頭と身体を休めることが、復職後の体調維持につながったと感じています。
周りの人に感謝する
本人の休職・復職は、産業医や産業保健スタッフ、上司や職場の人、人事部門を含む関連部署がいろいろ動いています。本人のために動くことが業務なので、あまり恐縮する必要はありません。ただ、感謝の気持ちはもっておきましょう。
家族にも感謝しましょう。そばで一番支えてもらっています。
6-2.復職日の直前、復職日、復職直後
6-2-1.復職日の直前(緊張する)
復職日の3日前あたりから緊張が高まるかもしれません。緊張するのは「当たり前」です。私は復職日の前夜にまともに眠れなかったこともあります。
事前に主治医に相談することも有効です。薬の力を借りることも選択肢に入れておきましょう。
6-2-2.復職日(緊張MAX。予想よりうまくいくと信じる)
復職当日の朝は、本人にとって一番ツライです。疲れます。私は復職のたびに「二度とやりたくない」と感じます。
復職日は、どんな結果になっても成功です。自分のすべての判断・行動を褒めましょう。
【私の意見】もし職場に入るのが辛くて「帰ろうかな」と思ったら…
「いったん職場に入ってほしい」が私の本音です。おそらく、そのほうが楽なので。
でもそうじゃなく、「入れない」「足が止まる」場合もあると思います。ツライですが、自分で判断してください。
入る。帰る。
どちらを選択しても、ご自身の判断が正しいです。帰宅して、数日間寝込んでしまっても、その時はそれでよいと思います。
まだ、「復帰には早かった」「回復してから今度」とか適当に考えましょう。主治医などに相談し、対策を打ち、次に備えてください。(復職日に不安がある場合、主治医やカウンセラー、支援いただける方に事前に相談しておくとよいです)
6-2-3.復職直後(ペースを抑える)
自分が思うよりペースを抑えて、毎日を過ごしましょう。
出せる成果がなくでもよいから、決められた時間に職場に行き、職場で過ごしましょう。上司も含めた職場の人は、(口に出さなくても、)復職者のパフォーマンス不足をある程度見込んでいます。職場にいれば大丈夫です。
復職後の業務は、慣れればできるようになります。休職前もなんらかの業務を経験していますし、休職中にいろいろ学んできたはずです。自分の想像以上に仕事はできます。(実際は職場によると思いますが、これくらいの気持ちでいるほうが楽です)
復職後、職場の人に感謝を伝える。病気の伝え方は慎重に
●職場の人に感謝を伝える
休職中の業務を代わりにやってもらっています。復職後も業務を教えてもらう場面があります。なので、職場の人には感謝の気持ちを伝えましょう。「ありがとうございます」と言われて嫌がる人はいないはずです。
●職場の人への病気の伝え方
職場の業務の観点で伝えるとよいです。
・会社から指示されている残業制限など
・(私が)どういうときに、(相手に)何をしてほしいか
「〇〇と言えばOK」のような正解はないと思います。役立つ情報を得ながら、相談しながら、自分で良いやり方を試行錯誤するしかありません。
理想は、病名や今後ありうる症状を職場の人に伝えて、その病気の特性を知ってもらえることです。不調の時の対応もしてもらいやすいです。しかし、実際には難しいでしょう。
病気によっては、病名が偏見を生むことがあります。その場合、病名や具体的な症状を伝えないことも大切です。病気の情報は要配慮個人情報であることも知っておきましょう。
病気の人に対する偏見・差別はある。対応を準備しておく
病気に対する偏見・差別が無いのが理想です。しかし私の経験から言えば、心ない言葉を言われることはあります。
「病気のことを理解してもらって、偏見をなくしてほしい」だけを望んで行動することは、個人的にオススメしません。
偏見や差別はあると想定しておいて、自分への攻撃にどう対応するかを考えておくのがよいです。(相手は攻撃と思っていない可能性もあります)
・○○と言われたら、◇◇と言い返す。◇◇をやる
・△△をされたら、☆☆をやる
こちらが黙っていると次から次へと言ってくる人がいるかもしれません。すぐに切り返せる一言を用意しておきましょう。(または、その場からすぐ離れる)
本人が得るべきは「理解」よりも「実際の利益」、と私は思います。
復職日はゴールではない
復職日はゴールではありません。スタートラインと思っておくくらいでよいでしょう。
復職から程遠い状態で休職している時期は、「復職=夢」と感じると思います。私もそうでした。主治医から「復職した人もいるから頑張って」と言われると、「復職日=ゴール」と思えるかもしれません。
自分に合わせて健康に働き続けることがゴールです。
休職の真っ最中に復職後のことは想像もつかないと思いますが、復職後のことも考えておくべきです。(本人は考えにくいことなので、家族など助けをしてくれる人に意見をもらうとよいと思います)
繰り返します。大事なのは「復職後」です。
6-3.復職後のフォロー
復職後も大きく体調を崩すことなく、健康に働き続けましょう。
参考:厚生労働省・労働者健康安全機構「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」p.4 にざっと目を通しておくとよいでしょう。
活動をコントロールする。少し抑えるくらいでよい
●ペーシング(活動の調整)が大事
復職して順調に働いているときも、活動の調整が大切です。気づかぬうちに疲れをためていて、自分の限界を超えてしまうおそれがあるからです。
残業を引き受けるときも、連続してやるのではなく、身体と相談して徐々に増やしていきましょう。
●疲れる前に休息をとる
疲れてから休息をとるのではなく、疲れる前に計画的に休息をとるようにしましょう。
休職期間中に身につけたリラックス法、疲労回復法をやってみるとよいです。
休日に「何もしない時間を計画・実行する」のもオススメです。(ある人からアドバイスを受けてやってみて、予想以上の効果を感じた休息法です)
症状の早期発見、早期対処、早期受診
復職後も「生活記録表」への記録を続けましょう。
不調になったときは、過去の生活記録表を見直して、同じような症状が出たときの対処法を使って回復させましょう。不調時には、なるべく早く受診することも大切です。
服薬、定期的な通院
薬をやめたり減らしたりしたい場合、必ず医師に相談しましょう。可能であれば、復職して数ヶ月は通院間隔を短くして、体調の変化を医師にも細かく診てもらうとよい、と経験から思います。
仕事に慣れる
徐々に仕事に慣れていきましょう。自分のペースでよいです。
本人がもらう仕事について、身体と頭の慣れに従って、段階的に仕事をもらえるとよいのですが、「大量または難しい仕事を振られる」、「やる仕事がない時間がある」のどちらかを、程度の差はあれ経験するはずです。
感情的になっても良いことはありません。問題解決に向けて動きましょう。
いわゆる仕事術に関する本や動画コンテンツが役立つかもしれません(例えば、タスク管理、タイムマネジメント)。身体に無理のないように注意しながら、学んで試していってください。
職場の人とうまくやる
とくに復職後、職場の人にはいろいろお世話になっています。感謝の気持ちも伝えてみましょう。業務に慣れるために、職場の人に質問や相談をしましょう。
復職者が気づいたことは記録しておく。業務改善のネタになる
職場にとって、復職した人でないと気づかないことがあります。(しばらく職場を離れていたからです)
わからないこと、不自然なこと、改善したいこと、など気づいたことが出てきたら、メモしておきましょう。今後、何かの役に立つはずです。
復職した人が気づいたことは、将来の業務改善につながる、と私は考えています。しかし、すぐに業務改善しよう、と焦らないほうがよいと思います。職場は職場の事情がありますので。
就業制限の解除は慎重に少しずつ
復職して順調に3ヵ月、6ヶ月と経っていくと、産業医面談で就業制限(時間外労働や出張などの制限)の解除が提案されることがあります。例えば、時間外労働禁止から、月10時間以内、月20時間以内と増やすケースです。
時短勤務の場合、段階的に勤務時間を増やしていくことが想定されます。
産業医の提案をそのまま受け入れるのではなく、自分の身体に合わせて「思っているより抑えめに」制限をつけておくことをオススメします。健康を保ちながら会社に行き続けることを優先してください。
●(時間外労働の上限などの)就業制限は、主治医に相談する
精神疾患では、復職後6ヶ月でフルに働いてもらうケースを目にします。復職後6ヶ月かけて、業務負荷や時間外労働などを「休職前の100%」に戻す考えです。
会社の人事部門の方や産業医が、ウェブサイトや書籍で事例を紹介しているので、経験的に確立されたやり方だと思います。
しかし病気や人によっては、就業制限を続けなければなりません。例えば、長めの時間外労働をやってしまって、症状が再発し、病欠が増えてしまうことは避けなければなりません。
主治医に「就業制限をどう調整していくか」を相談しましょう。継続が必要なら、(時間外労働の上限などの)就業制限を解除しないことが望ましいです。(ただし、本人や主治医の希望どおりになるとは限りません)
私は主治医と産業医に相談して、時間外労働の上限を(長期に渡って)一定に保った経験があります。
継続を優先する
健康を保って、会社に出社し続ける、働き続ける、家でリラックスできる生活を続けましょう。就業制限などで活動を調整していて物足らないかもしれませんが、「ある程度低い状態で続ける」ことが大事です。(正直、私にはできなかったことです)
復職したら就業規則を読んで、休職期間の通算がリセットされる月数を確認しておきましょう。新型コロナ肺炎の流行など、自分がいくら気をつけていても、再発・再休職するリスクが上がるケースがありますので。
復職後1ヶ月、3ヵ月、6ヶ月、1年、1年半、2年、3年… と、自分をうまくコントロールして働き続ける生活を続けましょう。
終わりに
自分を観察して、自分で考えて、他の人の助けを借りて、行動して、良い結果をつかみ取りましょう。
病気休職から復職した方が、ご自身に合わせて働き続けられることを願っています。
<まとめ>
「ステップ6.復職直前から復職後」では、復職が決まった後から復職後のフォローまでを解説しました。
大事なことは、復職後も健康を保って働き続けることです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次の記事(7)は、もし退職することになったとき、知っておきたいことです。ご興味があればご覧ください。
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