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”PLAN75”を観て〜同年代で想う老いるということ〜

 

心待ちにしていた映画が上映されて、早速、観に行った。今年の仏・カンヌ国際映画祭新人監督賞(早川千絵監督)を受賞し世界の映画祭で話題になった。
 

75歳から本人の意志で生死を選択できることが国会で可決。それにまつわる高齢者の生き方を描く力作だ。


上映時間20分前にシアターについて驚いた。座席が一番前の2席しか空いていない。慌てて発券ボタンで購入する。
入場者はほぼ60代、70代と思われる人々。中には夫婦らしいカップルも多く見られた。
やはり高齢者にとっては他人事ではない作品らしい。
 


(ここからはあらすじと結末)



主人公は78歳で一人暮らしの女性。仕事はホテルの清掃をしている。ある時高齢を理由に退職に追い込まれる。次の仕事を探すが思うように行かずに、住居まで追われる羽目に。辿り着いたのはプラン75の申請。国が死への旅立ちを世話をするシステムだ。
申請を受ける側のスタッフや相談員は若者たち。その対比が今の時代を象徴している。申請をするとまず10万円の給付金があり自由に使って下さいと説明される。リアル過ぎて怖い話。
そのお金を使って、相談員の若い女性と夫と行ったボーリング場で遊ぶ。最後の晩餐は上寿司の出前。手順を踏んでいるうちに、スタッフの若者たちの胸のうちに戸惑いが起こってくる。最終施設まで行った主人公だが、寸前で生きる選択をして施設から逃れる。その終わり方で観てる側も救われた。
何とも言葉にはできない複雑な想いで劇場をあとにした。
 




数日前に90を超える知人と電話で会話した時に、俺たち生きてることが邪魔なんだよな。医療費も増えるし、国のためにならない。安楽死を認めるべきだと思っていると真面目に言われて驚いた。そんなことを本気で思っている人がいるんだと・・・
 
高齢化社会が進む日本。2025年には5人に1人が75歳以上になるという。老いるということに切実な問題を投げかける映画だった。
  
 

若いときには誰も自分が75歳になった姿を想像できない。年金生活になったらどうなるかさえ考えていない。
私もその一人だった。その時が来て初めて年金事務所に行き受給する内容を知った。それでも実感がわかなかった。
やがて年金生活が始まり、夏のボーナスが出ないとわかった時に、あぁ年金生活者なんだ!と気づいた。
必ず誰にでも訪れる加齢。老いることが悲しみの道に繋がらない社会であって欲しいと願う。


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