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東大の値上げがなぜ問題かを地方の視点から考えてみた

初めに

 私の記憶が正しければ、5月頃から東大の授業料値上げが話題に上がっており、このことに義憤に駆られた学生たちが安田講堂前でキャンプデモを行う事態に発展した。また、この値上げは様々なニュースやブログで取り上げあげられるなど、かなり注目を浴びている。

しかし、この値上げが地方にどのような影響をもたらすのかについては、管見の限り、詳しく述べられていないように思えた。よって、このことについて簡単にではあるが記述してみる。


問題1:値上げは学生の質を下げる

 学費が上がるとどうなるかという問に対して、私がまず最初に提示する答えとして、学費のための出費が増えると答える。そして出費が増えると、それまでの学費の価格でギリギリ東大に通えていた人が通えなくなるという問題が起きる。

この問題がなぜ問題となっているかについては、東大の値上げのニュースなどを見ればすぐに理解できることだろう。

しかし問題はここで終わらない

東大が値上げを実行すると他大学、特に国公立の大学もその動きに追従するだろう。なぜならこの記事でもわかるように大学の運営はすでに限界をきたしており、一度値上げをしてしまえば他の大学もそれに追従するからだ。

実際に、東大が値上げを発表した後、国立大学の一つである広島大学が値上げを発表した。このことから、この値上げの波は東大だけでは収まらず、全国の国立大学もこの流れに続くことが予想できる。

ところで、東大といえばエリート、エリートといえば金持ちというイメージがあるため、東大の値上げならまだ大丈夫なのではないかという意見もあるが、仮に東大が大丈夫だったとしても地方ではそうはいかない。

よりハンデを背負う地方大学生


値上げを実施する場合、その金額は東大と同様の10万程度になるだろう。年間で10万円追加されることになるため、4年間の在学期間においては40万円の追加負担となる。一方で、地方では最低賃金がおおよそ900円程度であり、都市圏では約1100円程度だ。この差からも、東京で働く人が支払う40万円と地方で働く人が支払う40万円の価値には差があることが明らかだ。

学生がアルバイトで学費を稼ぐ場合、都市圏の学生が働く時間は約90時間程度で済むが(それでも多すぎる)、地方の学生は約111時間追加で働く必要があり、約20時間余分に働かないといけない。

また、この値上げによって40万円余分に必要となる場合、親が子供を大学に通わせることをためらう可能性が高まる。国公立大学は本来、私立大学に比べて費用が安く、貧しい家庭でも大学進学が可能なレベルの金額だった。これにより、貧しくても優秀な人物や高い意欲を持つ人物が大学進学することができていた(優秀であれば何でもいいというわけでもなく、様々な人がいてこそ優秀な人が輝くということを追記しておく)。

しかし、学費の値上げによって親の経済状況では学費が支払えなくなると、学生は自ら働いて学費を稼ぐ必要が生じる。しかし先ほど示した通り、地方では都市部に比べて余分に働く必要がある。そのような状況下では、よほど優秀な人物であっても、アルバイトなどの労働時間が勉強時間を奪ってしまう限り、十分な能力を発揮することができない。

もちろん、労働時間の増加はどの国公立大学においても同様の問題だが、値上げは地方の学生により深刻な影響を与えることになる。しかし、いずれにしても、学費の値上げは間違いなく学生の学習の質を低下させる結果となるだろう。

問題2:地方国立大学はどうなるのか?

 多様性が下がるという点で値上げは非常によろしくないが、東大といえば学歴の頂点だというイメージが存在しているため、それでも人は集まるだろう。では地方国公立はどうなるのだろうか?

今までの地方国立大学は安くて近いという観点から女性でも親の認可を得やすかった。しかし今回の値上げで全国の国立大学の授業料が上がるとなると、少なくとも「お買い得」と言えるほど安くなくなる。

先ほども述べたように地方と都市圏ではそもそも貰える給料がかなり違うため、同じ10万でも重みが全く異なる。経済的に貧しい家庭であれば、親は子供に「申し訳ないが大学には行かずに働いてくれ」と言わざるを得ない。

そうなれば子供に残された選択肢は、大学に行かずに働くか、アルバイトをして学費を稼ぐか、奨学金を借りるかの3つになる。どちらにせよ大学に通うにはかなりハードルが高くなり、よっぽど大学に行く熱意がなければ就職ということになる。

もし就職せずに大学に進学するとしても、常にバイトをしないと行けないのでより勉強時間が取れず、大学での勉強が疎かになり、そのような状態では他の経済的に余裕のある家庭出身の学生と比較すると、満足に勉学に励むことが出来ない。

就職した場合、就職することになる。単純に思えるかもしれないが、就職するとなると大学には行かないということになる。大卒と高卒の一番の違いとして給料面の待遇の差がある。

結局のところ、進学しようがしまいが、授業料を親が支払えなければ、生涯年収は下がるだけだ。

無視される地方国立

このような状況ではある程度経済的に余裕のある親は、地方大学に行くぐらいだったら子供にもっと勉強させて旧帝大などの名のある大学に行かせたほうがいいのではないかと考えるだろう。

なぜならどうせ値段は一律に上がるだろうし、それならばより「お買い得」な大学に行かせることを希望するからだ。進学者も、どうせコストがかかるのであれば、より設備の整った大学に行ったほうが、自身の今後の役に立つと考えるからだ。

また、親の協力を得ずに進学する場合においても、どっちみち苦労することは確定しているので、どうせ苦労するのであれば、今後により活かせる方を選ぶようになるのではないだろうか。

更に、少子化によって大学進学者数が減ることで、名門大学に入学するための必要学力が減ることで、この流れは加速することが推測できる。

そのため地方国立大学は今よりも見向きもされなくなるのではないかと考える。そして旧帝大などの名門大学は都市圏に集中しているため、都市集中の傾向が今以上に強まると考えられる。

結論

 拙文では東大の値上げがなぜ問題視されているのかという理由を、学生の質を下げる点と、地方大学がより蔑ろにされる点の2点から説明した。

この文章を読んでもらってわかるように、私は東大の値上げが地方国立に非常に強い悪影響を引き起こすと考えている。

東大の値上げについてのコメントを見てみると、「東大に通える人はお金持ちだから……」というコメントを見かけるが、それは問題が東大だけで完結するというナイーブな視点に基づくものであり、自分の関心事として見ていないという時点で非常に稚拙な発言であると断言したい。

なにか問題について考える時、問題について答えるのではなく、問題がもたらすものについて考えるほうがより建設的であり、私はその考えのもとこの文章を書いた。そのため、突発的に書いたので至らない部分も多いが、伝えたいことは十分書けたと思うので、このあたりで筆を置くことにする。


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