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真理子のリアル人生劇場 波瀾万丈    第3話〜再会・不倫・そして別れ〜

前回の〜真理子のリアル人生劇場第2話〜恋愛〜の続きです。

まず産まなかった命へ謝罪と祈りをささげます。


Mを同時期に愛した2人の女が一方母となり、その一方であたしは産まない選択という罪を背負った。


そして一般的な見方をすれば、他の人と結婚したMにとってはあたしは2番の女なんだろう。

それでも・・何番であろうと・・そこに愛はあった・・というのが私の真実だ。

そしてMと別れてあたしの心は停止した。
何も感じなくなっていた。

それでもその間新しい出会いに踏み出そうと努めてみたけど全然無理だった。


そしてMと別れてから1年・・・又、あたし達は逢ってしまった・・・今度こそは不倫と知りながら。


2度目の出逢いから、Mの意識ははっきりと変わっていったのを感じた。

Mという舟に正妻とあたしという愛人を乗せて舟が沈むまで共に航海するのだという決心を感じた。


随分、非常識な決心だと思うが、あたしにもどおしてもMが必要でMでなくてはならなかった。

あたしとMの関係は次第に公然となっていき、Mの妻も知っていたと思う。


何て罪な事をしたのだと後々には悔いるが、当時24才位のあたしは実年齢よりも社会性は低く、常識というものに欠けていて、“愛”だけしか見えない、そんな女だったんだ。


そしてあたしにはMがどおしても必要だった。

だけどもMみたいに覚悟を決めた訳じゃなかった・・・いつか別れなければいけないんじぁないかって・・・でもできない・・って思いは堂々巡りしてた。

不倫をしていながら不倫を恥じていた。

Mを愛する気持ちといつかは別れなければという想いに揺れながら・・・別れられないまま、あたしは33才になっていた。

その月日の中であたしなりに他に目を向けようともした・・・でも、Mじゃなきゃだめだったんだ・・・Mと別れるという事は愛のない人生を生きるという事だと思えた。

あたしが33才になるまでの日々、Mはお正月と日曜日以外ほぼ毎日あたしの部屋に来た。

Mは実業家だったから忙しかったが睡眠時間がない日も夜中になっても、必ず来た。

時々、将来が不安になって絡むあたしに、死ぬまで一緒だと言い続けたM・・・でも、聞きたかったけど聞くことが出来なかった事があった・・・Mの妻はどう思っているの?

いつだったかMが「年とったら一緒に過ごそう」と言った時があったが、それはどおいう意味なのか・・・怖くて聞く事もできなかった。

そうしてあたしはMに囲われて社会とほぼ遮断された長い月日をおくって社会性のないまま箱入りおばさんになっていた。


〜運命の岐路〜

景気の波に乗ってMの会社は大きくなっていったが、高景気が終わり何年も経った頃、急激に広げた負債に会社は傾き出していた。

そしてMがある日言った。
「会社があぶない。倒産したら大変なことになる。一度親元に戻って今後の目処が立つまで待っててくれ。必ず迎えに行くから」と。

Mから離れて暮らす不安とあの地獄のような親元に戻れというのかと胸が締め付けられるような苦しさを感じた


そしてあたしは再び、捨てた筈の町に戻ったのだ。

その頃には父親は地元で仕事も成功して地元の名士として知らない人もない程になっていた。

一度Mはあたしの父に会って話した事があり、父はMとあたしの事は知っていた。

そして父は、父が持っている家(父と継母の自宅ではない)に住ませてくれて、父の会社で働かせてくれた。

あたしは大人になってからあらためて親と再会したのだ。

18才まであたしを殴った父はこの再会からは一度も殴らなかった。
これまでの月日、父にも色んな事があったようだった。


それにしても、何故あたしはこの時Mの言う通り育った町に帰ったのかと後に思った。

Mと住んでた町であたし自身が仕事を見つけて小さな部屋に引っ越して自立して生活するという選択肢があったではないかと。

でも囲われて社会と接点のない暮らしをしてきたあたしはおそろしく世間知らずで社会性もなく常識さえない人間になっていて、常識的に判断などできなかったのだ。


いや、囲われて居たからだけではなくて
あたし自身、元々、世間でいう常識というもののない人間だったのだ、当時はそんな自覚もなかったけど。


あたしにとってその時自分が感じた事があたしの真実。
あたし以外の全ての人がそれを否定してもあたしの世界の外の事としか感じない人間だったのだ。

そんな一般でいう常識というものの無いあたしだから、19〜33才までの日々、Mとの愛を疑った事もなく生きてきたんだと思う。


親の会社といっても実質父は経営のみで現場には殆ど居なかった。
現場の責任者からは親の会社である事は公言してはならないと言われたし、歓迎されてないと感じた。


その中でも好きなおばさんが居た。

彼女がある時言った

「真理ちゃんがこの会社に入ってくるという話になった時、真理ちゃんのお母さん(継母)と△△さん(会社現場の責任者)が電話で話しているのを聞いちゃったの。

△△さんが『そうなんだね、わかった、あたしが追い出してあげるから』とお母さん(継母)に言っていたんだよね。
知っておいた方がいいと思って話すよ」と。

あたしは哀しかった。
△△さんが継母にそのように話していたという事は、
継母があたしに父の会社から出ていく事を望んでいるという事だ。

そういえばあたしが家を出て東京にいた頃、妹(継母と父との娘)がまだ小学生であたしのところに遊びに何回かきて、「またおいで」と言ったあたしに妹が「真理ちゃんのところに行って欲しくないってお母さんが言うの」って言った事があった。

そうなんだね・・・哀しくて胸がギュッと締めつけられた・・・やっぱりあたしが邪魔だったんだなって・・・。

あたしがこの街に戻って来たのは(同居はしてなかったが)、継母にとって迷惑だったんだ・・・。
やっぱりこの街からいずれ出て行こう。

それでも生活の為、父の会社で嫌がらせに耐えながら真面目に働いたつもり。
Mは1ヶ月に1〜2度訪ねて来たけど会社が大変そうで今にも倒産しそうらしかった。

でもあたしも辛い日々だった。
仕事先で嫌がらせをされて辛い時はMへの不信感が芽生えた。
何かあった時にはこんな風にあたしは放り出されてしまうんだ、そして正妻とはそのままの生活を続けて行くんだと。

待つ自信も揺らいできた。

1年が過ぎて。

あたしはもう待てなくなっていた。

孤独の中でMとの愛に疑問を持ち始め、悲観した。

そしてあたしは決めた・・・もう戻る日を待つまい、と。

あたしは先に進むよ。

又、誰かと出会って愛して、結婚して、うん、そうするからね、心には色んな思いはあったけど、そう決めたのだ。

そしてあたしは、いい人が現れたら結婚するよ、とMに告げた。
それでもまだその時点ではMと別れた訳ではなかった。
時々来ていた、どんな思いできてたのか・・・。


〜Mとの別れ〜〜

Mの会社が再興できたとしても戻らないと決めてから
あたしは婚活し始めた。

その中でKと出会った。
婚活で出会ったのに、Kは「結婚はしたくない、離婚経験したから」というスタンスだった。

海外で生活していたというKは謎の雰囲気があって魅力的だった。
あたしとは異質なものを感じたし、理解し合えなさそうとも感じたけど惹かれた。
すらっとして背もあり、見た目も魅力的でMとは全く違うタイプだった。

でもこの人とは苦労する、と直感した。

あたしは直感が強かったと思う
そして“危険”は避けたかった。

あたしにとって“危険”とは・・あたしの中の危険。
精神的に追い詰められた時、瞬間的に出る反応・・・あたしのそれは衝動性と怒りの爆発だ。

大人になって気づいた事、それは父が瞬間的にカッとなり暴力を振るったりしたのは、父自身止められない父の持って生まれた衝動性と攻撃性であり、あたしもそれを受け継いでいる気がした。

そしてあたしは、あたしの中の怒りのマグマを爆発させないような相手を無意識に選んできた・・・今までは。

Mと過ごした14年の日々私の心は愛情という面で満たされていて怒りとは無縁だった。

でもKと会うとあたしの中のマグマが沸々とするのを感じた。
それでもその危険に飛び込んでみよう、と思った。

父親のような愛で包容してくれたMはあたしにとって擬似父親だったのだ。
Mから与えられた社会から遮断された生活は、子宮の中の温もりのように安心していられた日々で、本当の親からは決して得られなかった子供時代の愛もそこで貰った。

結婚はできなかったけど愛を貰ってあたしはやっと親離れする子の地点に達したのかもしれなかった。

そしてあたしはこれから初めて心身ともに自立して大人になって生きていくべきなのだ。

Kとの出逢いはあたしの第一歩なのだと。

あたしはいい事も辛い事も自分の心で受け止めて、考えて、乗り越えて、ベターな関係へと育てていく、そんな努力をするべきだと。

Kに感じる危険はKの何かがあたしのコアな部分に触れてくるという事。

Mに会う前、あたしの心には誰も居なかった、親も友人も、付き合っていた彼氏さえ。

Mは一瞬であたしの心の扉を開けて、あたしの心の穴を埋めた・・・でも今は・・実体がなく抱きしめる事の出来ない亡霊のようにあたしの中に存在してる。

あたしは一旦目を閉じて・・自分の意思でその亡霊に別れを告げて思い出にかえる・・・そして目を開けた時には何にもとらわれていないあたしになって前に進む、そう決めた。


それからあたしとKは結ばれて身ごもった。


あたしはもうずっとMとは会っていなかったけどさよならは言ってなかった。

そんな時Mから電話があった・・・あたし結婚するよ・・子どももできた・・・沈黙の後、Mの嗚咽が聞こえた・・・。

「真理子に会ってから俺は真理子、真理子、の日々だった。
でも何も罪もない彼女と別れる事もできなくて結局真理子と一緒になれなかった。
それでも真理子にとって俺以上の男はいないと思う。
でも結婚という生き方を選択するって決めて子どももできたなら・・幸せになんな。
でもこの先真理子がどおしても困った事があったときには言ってきな、何としても助けるから」

うん・・うん・・あたしの頬にとめどなく涙が流れていた・・・何の涙かわからない・・・。

嫁ぐ娘と父親にも似た2人の関係になっていた・・。

それから数ヶ月後にあたしはKと挙式した。

続く

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