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【創作】草生えるw 2/5【小説】

■本編 第二章 火曜日

◆通勤路は糞の撒かれた地雷原。
俺の名は「幌別(ほろべつ) 曽我(そが)」。
22歳、高卒会社員。


今日は火曜日、今は朝。
休みまで後4日。後4日…
世界が燃えれば良いと思う。

今朝も鉛のように頭と気分が重い。
朝一番に口からいつでもゲロ吐けそう。

昨日SNSで話題になっていた植物の異常成長は更に顕著になっている。
ほとんどの道路の段差、アスファルトの継ぎ目から植物が生えていて、踝くらいまで成長している。
低木の街路樹も歩道に侵食し、ただでさえ人口密度が高まって他人との距離が近くて不快な朝の歩道を更に狭めている。

明らかに異変が発生しているのに調べる事や警戒する事より「いつも通り」を最優先する社会。
気色悪い。
そう思いながら俺も歩く。職場に向かう。
「いつも通り」なんかじゃなくていい。
糞みたいな「いつも」なんかより俺は俺の安全が一番大事だ。

◆ワタシキレイ?
心底うんざりしながら、そして他人との距離が最大になるように舵を取りながら、動く糞だらけの糞みたいな通勤路を足早に駅に向かう。
この糞糞ロードにちょくちょく落ちてる流れを気にせず他人の顔を見てニヤニヤしながらノソノソ歩いている頭出来損ない真糞には反吐が出る。

歩いている俺の目の前、右手方向を歩いて来ていた女が意味もなく一歩左に動いた。
俺がそのまま直進していたなら女にぶつかっていただろう。
何か期待するように俺の顔を見上げた女を右に大股一歩サッと動いて避けてとっとと通り過ぎる。
はい、うんこ。

この手の道糞には慣れたのでもうわざわざ目もやらないし驚かない。
流れを無視して人の顔見ながらノロノロ歩いて邪魔になってる糞より更にちょっと糞なだけの、そこまで珍しくもないうんこ。
特別な自分と出会った他人がドキッとするのを確認したいらしい。
今のはたまたま女だが、老若男女そこそこいる。
本人は自分の特別を確認したいらしいが、割りとありふれたうん行為の一つだ。

◆ボクオモシロイヨ!
ホームもホームに向かう階段も、電車自体も超満員だ。
他人と当たり前のようにくっつかなければいけない状況に辟易する。
何か事件や事故が起こればホームや階段から落ちたり押しつぶされたりで重症者や死者がいつ出てもおかしくない。
シベリアに捕虜を運んだ列車や奴隷をアメリカに運んだ船の短時間版だこれ。
ウンチプリプリーノ!
そして、このストレス空間で更に他人を苦しめる地獄の鬼のような奴等がいる。

喋る事で力を誇示しているつもりなベチャベチャ喋りオバハン。
ベチャベチャと言う擬音が当にピッタリな話し方するオバハンがリアルに存在してるの笑えないけどわろてしまうわ。
その予備軍丸出しのJKアピール女子高生。
お前の事とかどうでも良いです。
道に犬のうんこ落ちてたー!並に糞の役にも立たんクソ情報ノーサンキュー!

奇行オジサンに出会うと最悪だ。
しばらく気分が悪い。
さっきから、老けてるくせにやけに幼い面をした小太り小男が、異様にキラキラした目で下から小首をかしげながら俺の顔を覗き込んだりバッと目をそらしたりを繰り返している。
気持ちわりいなと思いつつ、その汚物を見ていたら、その内ムスッとした顔になってやめた。
不機嫌になられる意味が分から…なくはない。
多分コイツは爺さん婆さんか高齢の親に育てられた人間で、思い付き奇行を取れば相手から「あらそれなあに〜?」「アハハハ、この子は面白いね〜?」と、ご機嫌取りとコミュニケーションの切っ掛けを与えられて生きて来た人間なのだ。
死ね。心から君に贈るよ。
なんで俺がよりによって家で甘やかされてた育ち損ないのお守りをしなきゃいけないのか。

通勤は正に糞の地雷原を進む行為。
妖怪百鬼夜行。朝だけど。

◆妖怪無限列車から開放されても行くのは別の地獄である。
駅にほど近い地下2階、地上9階建てのそこそこ大きいオフィスビル。
地下は駐車場でビルの横手に人間が駐車場へ出入りするのに使う階段がある。
この建物の5階に入っている客先のフロアの中にウチの会社の一部門が丸々出向している。
まあそこに何の意味も面白味もない。
覚えていただく必要も無い設定だ。

職場は職場で異様に狭い区画に島を作ってぎゅう詰めに机を並べている。
仕切りがある分ブロイラーのケースの方がマシでは?と思える空間で、仕事している自分のすぐ横に他人の顔がある状態だ。
ここにいる間、気が休まる瞬間も無い。

換気は悪いし、コロナでもインフルでもノロでも誰か一人持ち込んだら終わる。
実際フロアの人間がバタバタ感染症に罹った事もある。
それでもどこが変わったのか分からんマイナーチェンジ以上の環境改善はされていない。
空いてるスペースはあるのになんでこんなにぎゅう詰めるかって言ったら、満員電車同様、他人を苦しめたい奴がやってるんだろう。
離して机配置する事もテレワークにすることも時短もやればできるけど、他人が苦しんで無いと自分が損した気になる奴がやらせてるんだろう。

そう言う奴は職場に来たら仲間が居て嬉しいだろうだの、人との関わりが持ててだの、糞みたいな言葉、いや、糞そのものを吐く。
口からうんこ。

ひとりが嫌なのも、誰でもいいから誰かと居たいのもアンタから出たアンタの気持ちだ。
他人はそんな事思っちゃいない。
なぜそれをタテに他人から奪えると思うのか。
と言うか、人との繋がりだの絆だの言う奴に限って人が苦しんでるのと人から奪うのが好きだ。
お察しする。

席についてメール確認したら客先の部長から午後のミーティング招待が来た。
【重要】とか付いてる癖に何のミーティングか書いてねえ。
ただでさえ憂鬱なのにルーティン以外の仕事ぶっ込まれるのスゲェ嫌。
とうせ今より悪くなる事しか無いからな。
更にその時迄何の事だか分からん事で思わせぶりに関心を拘束しようとする人間はウザい。
まあ知らんしどうでもいいけれど。

◆これは本当に休みなのか?
昼休みだ。ウンザリする。
まだ3時間しか経ってない。
休み明けてもまだ5時間もこのムカムカする時間が続くのに、休みも糞もないわと思う。
これからの時間を思うと心が重くてちっとも休まらない。
これは本当に休憩なのだろうか?
休めない休みなんて無くして、その分早く帰らせてくれないものか。
そもそも食事休憩取らなきゃいけないような長時間の拘束をやめて6時間労働とかにしたらいいだろう。
長時間拘束前提の水増し薄々労働もやめて。
労働施設を開けておく固定費も減るし、労使Win-Winじゃないか。

…絶対しないんだろうな。死ね。

そう思いながら公園についてまたゲンナリした。
昨日は踝丈だった草が、ベンチの座面近くまで伸びている。
マジかこれ。
無理やりベンチに座ってるオッサンとか居るけど、居心地悪くないのか?
ダニとかノミとか怖くないのか?
昔ノーテンキに「草むらで寝っ転がる」をやったらデカいダニ拾った事があるから警戒してるんだよな。
食われる前に気付けたけど、オーバーじゃなくホントに草むらは都市部の公園なんかでもダニだのノミだのヤバいんだよ。

仕方なく、ベンチの置かれた土の地面のエリアからコンクリートで地面が覆われたエリアへ移動したが、ここも段差などのアスファルトの継ぎ目から草が伸び、僅かにコンクリートを持ち上げたり壊したりと侵食が始まっている。

コンクリート製の大きな階段部分は俺と同じ休憩所難民の皆さんで埋まっていた。
休み時間まで他人が隣に居る状態で過ごしたくない。
人と離れて立てる場所に移動して置き換え食を啜り、スマホで時間を潰した。
ああ疲れる。
午後の仕事?知らんわ。
馬鹿馬鹿しい。

◆ダレカホメテ!ウラヤマシイッテイエ!
疲れ切って職場に戻ると、露出の多い服装の太ましい客先社員の女が俺の隣の席のなんでも大人しく聞く同僚相手に寄ってきて、明るく面白いワタシについてアピールをし始めた。
隣の同僚は大人しくなんでも聞くが、頷くだけの赤べこなのが物足りないのか、そもそも俺をロックオンしてるのか、チラチラこっちの反応伺って来るのが鬱陶しい。

しかも、この人の考える明るく楽しい人像がちょっとおかしい。
ウェーイ!とかのつもりなだろうが、変な奇声を上げながら変なポーズで騒いだり、普通の人間が普通の場面でやったら浮くような、漫画かアニメの登場人物じみたセリフを連発してひとりで楽しそうにはしゃいでいる。
友達が多いと言ってるが、その中の誰も太った寸足らずな二十代後半女性の、頭がおかしい人にしか見えない言動を窘めないのか。
信じられないな一切どうでもいいけれど。

稀によく見る放置児童もこれやるよな。
全然知らん大人相手に寄って来て一人で変なテンションで、ミテミテ!ボクコンナニアカルイヨ!オモシロイヨ!スゴイ!?スゴイ!?コンナタノシイコガイタラナッテオモウデショ!?って騒ぐの。

しまいに俺が他の人との雑談時に欲しいと最近こぼしたガジェットを手に入れた話を大声でしだした。
うわぁ、気持ち悪。
フィクションの登場人物や芸能人じゃあるまいし、相手と話さず一方的に手に入れた情報でなんかしてもキモいだけなんだよ。

元からおかしいのもあるだろうし、褒めに飢え過ぎて褒めを通り越した羨望が欲しい所に来てるんだろうな。
強制的に見せられた他人の人格のゲロ部分に辟易したので席を外す。
5分も消えてれば大声で喋るのも虚しくなってどっか行くだろう。

席に戻るといなくなっていた太子さんがまた来て同じ事を始めたので即また席を外す。
露骨結構。こんな奴に俺の精神を1ミリでも消費されたくない。

再度席に戻るとまた来た。
マジか、今日しつこいな。気色悪い。
休み明けだと何か溜まってるらしく、いつもテンションおかしくてしつこいんだが…、そういや昨日居なかったなこの人。
何があったか知らんと言うか、関心無いけど、この人にとっては今日休み明けなのか…

うわぁ…となってた所に、別部署の元ギャル集団が大声で話しながらこっちに来た。
憑き物が落ちたようにポロッと剥がれて何処かに消えた太子さん。
本物の陽キャは苦手なのな。
サンキュー、元ギャル共!つーかお前らもうるせえ。
ホント糞みたいな環境だよ。
能率落とす事しかねえ。

◆隣の奇行氏
と思ったのもつかの間、隣のオッさんが横振り返ってチラチラ見てくる。
なんですか?と言っても何も言わないが、チラチラ見てきて勝手に何か考えてニヤニヤする。
ウンコチラチーノ!

上司は仕事の相談や質問にクソみたいな態度取るくせに、自分のメンタルの具合で馴れ馴れしくして来るような💩。
変な癇癪もよく起こしてる。
なぜ病院に行かないのか、この手の💩は。
上司じゃなければ仕事の事もなにもコイツと一切口きかないし、太子さんとは接点も持たないし持ちたくないし、オッさんとは目も合わせない。
と言うか、仕事の事でも極力関わりたくない。

◆真っ黒黒透け
その関わりたく無い💩上司と共に客先部長開催のミーティングに参加。

吐き出された糞の内容をまとめると、
・ある資格を取るのを前提に
・昇給も無しに
・名ばかり役職リーダーになって
・チームを纏めて運用しろ
・資格勉強は業務時間外でね
・資格の受験料は出せないけど、君の将来に役立つ事だから
・試験は3ヶ月後だけど君ならやれるよね?

「やりません。」即答。
以降、頑として会議室の時間制限いっぱい譲らず終わらせた。
「要領だけはいいから期待したのに。」とか聞こえよがしの当てこすりと悪口が聞こえる。うん、ちね!
「ね、言ったでしょ?ちょっと頭は良いけど、アイツは協調性ないから駄目ですよ。」俺が嫌いでそもそもこの話受けさせたく無かったらしい上司がウキウキ声で追い悪口してる。
うんちがつながったおだんごうんち!
うんちれんかん!

グレーどころか完全ブラックでワロタ。
要するに資格持ちをそれ用の待遇で募集も雇用もできないから、手持ちの誰かに時間も費用も自己負担でやらせようとw
うんちうんちうんちっちwww
やる訳無いし、やっちゃ駄目だろ。
やったらこれが当たり前になって慣習化して他の人も被害に合う。

◆悪魔に魂を売り渡す。
なんてのは、さしてファンタジーでもオカルトでもなく、社会の中でカジュアルに行われてしまっている事だ。
例えばそれは、あいつより凄いと言われたい、マウントを取りたい、前向きだと思われたい、明るいと思われたい、タフだと思われたいなどと言う浅ましい要求から理不尽や搾取を許したり、迎合するその瞬間である。

急遽、俺の隣の席のオッさんが呼ばれて戻って来た。
あの話受けちゃったらしい。
客先部長と💩上司が一々俺と比べてオッさん持ち上げて褒めてるし、オッさんはチラチラニヤニヤ俺を見てる。
こうしゅうはくうんこくさいくうこう!

ニヤニヤしてるオッさんの頭の中で今どんな世界が広がってるんだろう。
知りたくもないが。

と言うか、オッさんは普段から言われた事すらやらず自分から確認もせず、ニヤニヤ過ごして仕事遅れまくる人なのに、自主的に勉強して資格取るとか大丈夫なのか?
誰かに押し付けられさえすればよくて、後の事はどうでもいいのか?
誰も気にして無い!?

こんな要領で企画するだけ企画してダメになったプロジェクトいくつか見たし、それでダメージ無いなら良いけど、その都度ゴタゴタしてるのに何回繰り返すんだろう。
こう言う馬鹿な事やめたら労働時間減らせるんじゃないのか…?

◆酒で«一方的に»腹を割って糞を見せてくる💩。
とてもとても濃いグレー色企業の弊社だが、流石にご時世的にも人件費的にも無意味な残業の奨励まではしていない。
しかし、ブラック💩上司がおそらくスタンドプレーのサービス残業やサービス飲み会を圧迫開催したがる。
しかも奢りですらない。
週末の休日2日間を楽しく過ごせるだけの金を飲み会費の名目でカツアゲされた上で💩上司の「真面目で情熱的故に時々チョット熱くなり過ぎちゃうけど、仕事を離れたら面白親しみオジサンなところもある俺」劇場のエキストラ兼観客にされるのだ。
流石に一部を除いて避けられるようになっているが、避けられるようになった切っ掛けを俺のカツアゲボイコットだと思っている💩に嫌われている。
そんな中、今日も定時に終わるように仕事を組んで定時になったらタイムカードを押して職場を飛び出た。

また外は真っ暗だ。
街灯に照らされた夜桜の美しさだけが俺を慰め…!?
ナニコレ怖!!
満開通り越して歩道の天井になる勢いで街路樹として植えられている桜の花が広がり咲いている。
いや奇麗は綺麗だけどね。
街頭の明かりが透ける桜の天井。
…よく見えないが、こう言う枝の伸び方する?桜って。
帰って私用携帯でSNS見るのが楽しみだ。

…💩は飲み会で普段の糞みたいな態度が帳消しになると考えているようだが、真逆だよ。人を舐めすぎている。
自分は若い頃、オッサンに馴れ馴れしくされて嬉しかったのか?それで好意が湧く事ありましたかね?と聞きたい。
いや聞きたくない。
糞みたいな返事しか返って来ないだろうから。
朝から晩まで耳に糞を捩じ込まれてもううんざりだ。
奈良公園の鹿じゃねえ。

◆ストレス空間で更にわざわざストレスを発生させる地獄の鬼や妖怪のような連中は多い。
自己顕示、劇場型、他害癖、要するに躾されてない5歳児だ。
偉そうな癖に、偉そうな奴に限って5歳児うんこメンタル垂れ流し。
甘やかされた結果か放置された結果か知らんし知るつもりもない。
しかし、実際こういう連中は社会で許されて存在している訳で、つまり躾なんて要らない物だった訳だ。
家庭も学校も通勤通学電車も職場も逃げ場の無いところに5歳児妖怪と人間を閉込めて人間に妖怪のお世話係を押し付けて苦しめるためだけに存在する檻だ。
何の良い所も無い。
自分は子供時代に禁止矯正された事をむしろ偉そうな顔でやってくる妖怪の機嫌取りや操縦なんか誰がするものか。

◆最初は親切面で始めてやがて糞に切り替える。
宗教とか弱者ビジネスみたいだな。

社会を作って計画生産し、強い動物から集団で身を守る。
自分の健康で強い期間に社会に奉仕をするかわり、自分が弱った時には社会から守られる。
そこで止まっていられれば社会は素晴らしい仕組みだった。

しかし、なんにしろ仕組みに託けて子から弟妹から異性から他人から搾取しようとする輩がすぐに現れる。
男なら女なら子供の癖に、○○じゃないとおかしい、○○するのが当然、○○してくれないなんて貴方は酷い人だ。
そして、社会からドロップアウトした人を指して「ああなりたくは無いでしょう?」と脅かす。
煽って縛って罵って脅かして、人を自分の思い通りにしようとする。
学校や職場や家庭は彼らの格好の餌場で、そしてそう言う奴らの思い通りになり過ぎだった。

社会や仕事自体を否定する訳では無い。
自分が休日に気分良くカフェを利用したり交通機関を利用して面白いものを見にいけるのも人が働いているからだ。
自分がその恩恵を受けているように自分も社会に労働力や技能やサービスを提供しなければならない。
それは解る。

しかし、その義務になんの喜びも楽しみもない、やらなければいけないだけの事ならば、その時間は最小化されるべきなのだ。
そして、それに託けて妖怪に人間が搾取されないようにすべきなのだ。
社会が社会であって地獄では無いのなら。

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