知らない間にだれかの推しになっていた

息子の保育園生活も残すところ、あと1日。

マジでこの日がくるんだなあ。
いつかいつかと思っていた日がくる。人生、これのくり返しよ。

なんて言いながら、わたしも息子を保育園にどっぷり預けてるワーキングマザーってやつなわけで。息子の卒園にはもちろん気をもみつつも、いやいや、つーか年度末なんですわ。クソ忙しいんですわ、仕事。って、そっちにも気を配らなきゃならんっていうね。しんみりしてる暇もない。社畜ママ、絶好調。

今日もいつも通り仕事を終えて、バタバタと息子を保育園に迎えに行って。
これこそ、平和な「ザ・日常」。

息子を連れて保育園の門を出たところで、お迎えに来た同じクラスのママとすれ違う。普段と何も変わらない雰囲気で「こんちゃー」って挨拶をして歩き出したところで、そのママが踵を返してわたしたちに向かってきた。

「あのさ、ずっと言おうと思ってたんだけど…」

え、

な、なななな、なに!?
ずっと!?なに!?言おうと思ってた!?

わ、わたし、何かやらかした?それとも息子?
あわわ、やっべー。まったく心当たりないけど、これはアレか?高速平謝りのパターンか?それともジャンピング土下座か?どっちにしろ、とりあえずチャクラ練っといたほうがいいかな?

瞬時にビビってがっつり身構えるわたしに、ママは言った。

「あのさ、息子くんファミリーって、何か見てるといつも楽しそうでさ。息子くんと、ちまきさんと、だんなさんと、3人がいっしょにいるところ見るのがすごく好きで。ずっと、いいなって思ってて。わたし、この家族好きだなーって、見るたびに思ってたの。何て言うか…推してた。勝手に推しにしてた」

な、

なんそれ!!!!


念のために練ってたチャクラ全放出でZAZY発動。

もう意味わからなすぎて、思いっきり照れ笑いしながら「なんそれ!!!!」って保育園の門の前でシャウトするわたし。

ママもいっしょになって笑う。

「卒園するまでに言いたいって、ずっと思ってたの!言えてよかった!」

う、うれしすぎる!
うれしすぎるけど意味わからん!何だよ、卒業間際に告られるってこんな感じなん!?陽キャじゃないから知らなかったけど、めちゃくちゃうれしいじゃん!もう浮かれポンチでどうしたらいいかわからんから、もう一回言わせてくれ!

なんそれ!!!!


しつこくZAZYになるわたしに何を思うのか、「ふふ、それだけー」と言って、ママは保育園の中へ入っていく。
慌てて「ありがとう!うれしい!」と、その背中に叫んだら、ふり返って笑顔で手をふってくれた。

か、かわいいじゃないか、あいつぅ。
一回くらいデートしてやってもいいけどな!

ずっと、って言ってたなあ。
ずっとオレ(たち)のことそんな風に見てたのかよ…全然気づかなかったぜ。まったくよぅ。

この年齢になってこんなにときめくことがあるなんて思いもしなかった。そして、そんな状況で自分がZAZYになるなんて思いもしなかった。
もっと気の利いた返事がしたかった…。なんこれ、なんこれ…。

「なーにー?」

明後日には小学生になる息子。
母がいきなりZAZY化しても動じないなんて将来有望としか言いようがない。きみの前途は明るいぜ。

「お母さん、うれしいこと言われちゃった」
「そうなんだー」

ただ大好きなひとたちと楽しく暮らしてたら、それを見て好きだと言ってくれるひとがいた。何の努力をしたわけでもないのに。

めっちゃオトクだね!特売!特売!ラッキー!ラッキー!


あんなひとになりたいな。
好きっていう気持ちを素直に、相手に伝えられるひと。

そんなひとに出会えて、わたしは最高にしあわせだ。

そんなご縁をくれたのも、この保育園だったんだ。
ほんとにここに6年間通えてよかったよ。

これからも目まぐるしい日々は続いていくけれど、わたしはわたしらしく大切なものを大切にして生きていれば、きっとまたこんなラッキーでハッピーで、ザズィーな出来事があるんじゃないかな。

この保育園で出会ったすべてのひとに、ありがとうの気持ちでいっぱい。
それもこれも、あのママがくれたやさしさのおかげ。ラストに最高のプレゼントをもらって、あたたかい気持ちで卒園できる。

最後に、ひとことだけ。

(Z)ずっと、(A)あなたと、(Z)ずっと、(Y)吉本。



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