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ママ友なんていなくても死なない

子供を産むまで、わたしの世間は最小限だった。
学生時代からの気の合う友達や、夫とその友達。趣味の延長みたいなもので入った会社の人たちは、つまり「趣味の合う」人たちばかりで、わたしはいわゆる「類友」とだけ付き合って日々を過ごしていた。

ところがどっこい。

息子を育てるようになって、「ママ友」という新しいカテゴリーの人間関係をはじめることになった途端、わたしにとって人付き合いは一気に面倒なものになった。

「ママ友」の共通項は、子供がいることだけ。
生まれも育ちも、仕事も趣味も、考え方から何からバラバラな人間が集まって、仲良くいっしょに子育てしましょうなんて、そもそも無理があるのではないか。

とくに学生時代から「グループ」に属することがあまり得意ではなかったわたしには、ママ友の輪の中に入ること自体が苦痛でしかなかった。

結論から言うと、ママ友なんていなくても死なない。

つらい思いをしてまで付き合う必要なんてまったくない。
子育ての情報は、ネットにもあふれているし、必要なことは行政や医療機関に聞けばたいていのことはわかる。おしゃべりする相手だって、わざわざママ友をつくらなくても他にいる。

そんなわけで、わたしは積極的なママ友付き合いはしない。
最低限、挨拶や世間話はするし、誘われれば、のこのこと顔を出す。
自分から連絡をとることはないけれど、そういう態度でいれば、それでかまわないと思ってくれる人だけがわたしと付き合ってくれる。

それでいいと思っていた。

だけど、

あるきっかけから、5人組のママ友グループに属することになった。

全員、たぶんわたしと同じようなタイプ。
ママ友なんていなくても死なないひとばかり。

だから普段はまったく何の付き合いもしていない。
わたし以外のママ同士が特別に仲が良いという話も聞いたことがない。
挨拶や雑談はするけれど、LINEの交換さえしていなかった5人。
だけど、ある日、話が盛り上がった勢いで、子供を夫や両親に預けてママだけで飲みに行こうよ!という、いきなり大胆な付き合い方をはじめることになった。

そんでもって、まー、この飲み会が楽しかったの!!

子供がいない状況でゆっくりお酒やおしゃべりが楽しめるというのはもちろん、このママたちが、わたしにとっては最高のひとたちだった。

みんな謙遜しない。自分の子供や夫のことを褒める褒める!
それに対して全員が素敵!天才!ヨッ大統領!と囃す囃す!

何このママ友付き合い、めっちゃ楽しい!!

あー、わたしはほんとうはこういうことがしたかったんだ。
自分のしあわせな話をして、いいねと言ってもらって、
他人のしあわせな話を聞いて、いいねといっしょに喜ぶ。

たったこれだけのこと。これだけのことがしたかったんだよ。

ママ友なんていなくても死なない。
死なないけれど、ここは楽しい。

それ以来、このポジティブフェスなママ飲み会は定期開催されているけれど、飲み会以外ではわたしたちは相変わらず、そっけなく付き合っている。
コロナの影響で集まることもできなくなり、グループLINEは最後にやったお正月の飲み会の日以来、だれも何も発言していない。
だけど、そんな付き合い方がわたしには最高に心地いい。

ママ友なんていなくても死なない。
そう思い続けてきたわたしにできた、最強のママ友たち。

今度、みんなで集まれたら何を話そう?
どんな素敵な話が聞けるかな?わたしはどんな話で褒めてもらおう?

そんなことを思いながら、わたしは生きている。

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