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【メンタルストーリー】自分に非があると思う人2

前回までのあらすじ

社会人になって半年の咲は、上司の下で仕事に取り組んでいましたが、同期に比べて周りと打ち解けている感じがしません。

ある日、仕事で報告書を書くことになります。いつもと通り、上司に完成させた報告書を持っていくと、やり直しをくらいます。

必死にこらえようとしましたが、トイレで一人になった瞬間、涙があふれ出します。帰宅後咲は、今日一日起こったことを振り返り、自分の行いのダメなところを出していました。

人間関係には多かれ少なかれ誰でも悩むときが来ます。しかし人より人間関係で悩みやすく、深く長くそれと付き合っている人達がいます。咲もその一人のようです。

理由や要因は本当に様々で、ひとくくりにしては言えないのですが咲のパターンを見ていくことで、これを読む人の自己理解につながるかもしれません。※このストーリーは完全にフィクションで登場人物は架空のものです。

第一話はこちら
https://note.com/765635/n/nc8c4bfb5948d

なぜ咲はそのような性格になったのか。

今日はそれについて、幼少期の環境に注目して考えていきたいと思います。

咲の両親との関係

咲の父親は彼女が生れた時、すごく喜びました。しかし母親が咲の世話に没頭するようになると、父親はあまり子育てに関与しなくなります。
父親は仕事が忙しいということで、普段帰りは遅くなり、休日もあまり家にいることがなくなりました。

母親は専業主婦で、咲が小学校・中学校のときはPTAにも積極的に参加をする、教育熱心な母でした。

父親が仕事で不在のことが多く、ほとんど一人で咲を育てていた状態でした。母親は咲を溺愛して、咲が学校で困っていないか、つまずいていないかいつも気にしていました。
咲が学校で少し友達とトラブルになった時は、担任を家に呼びクレームをつけることで半ば強制的に咲に非がないことを認めさせたこともありました。

母親は、「自分のいう通りにしていたら大丈夫だから。安心しなさい。」というのがいつもの口癖でした。お母さんの言うことを聞いていたら機嫌がいいと咲は信じていて、母親の言うことをできるだけ聞くようにしていました。気が付いたら友達関係についても、母親に相談してアドバイスを細かくもらわないと不安になってしまいました。

高校受験で

咲は中学に入り、成績はトップクラスにいました。このまま行ったらあのこがれの公立高校もチャンスがあるかもしれないと担任に言われ、咲は嬉しくなりました。

家に帰って早速母親にそのことを話すと、「公立は考えなくていい、私立に入ってしっかり勉強を見てもらって、いい大学に入るのよ」と言われました。最初は受け入れようとしましたが、どうしても公立高校への思いがまだ心に残っていました。

しばらくして、次第に母に対して、嫌いな一面がたくさん見えてきてしまいました。
母親の言うことに対して反発したいという気持ちがみるみる大きくなって、受験のことを話しているときに、「もう私にかまわないで!」と言ってしまいました。
咲は気持ちがスッキリしたと同時に、お母さんを傷つけてしまったという思いや、お母さんに嫌われたらどうしようという思いが出てきました。
母親はそんな咲に対してひどく叱り、「もう家に帰ってこなくていい!」と強く言い放ち、咲が出ていったあとカギを閉めて入れないようにしました。咲は今まで見たこともないような怒り方を見て、母親にすぐに謝り、家に入れてもらい、そのあとも何回も謝って母親の機嫌を取りました。

結局受験は母の言う通り私立に絞り、無事合格。母親は「ほら、言ったでしょ?正解だったのよ。」と言いました。

つづく

※この物語はフィクションで、登場人物も架空の人物です。

咲の性格には、両親との関係はどのように関係しているか


まず生後3か月~幼少期の養育者との関係までさかのぼります。

生後3か月ごろ、初めての自分以外の人と認識するのが、一番近くにいる養育者です。赤ちゃんは生まれたばかりで自分では何もできないので、養育者に対して、泣いたり、声を出したりしてメッセージを送ります。それに養育者は応えあげることで、赤ちゃんが満足したような様子を見て、養育者もうれしくなります。これを繰り返すことで、2人の間には取って替えられない特別な感情である「愛着」が生れてきます。

咲に関しても、少なくとも母親とは、そうした愛着らしいものが形成されていたように感じます。
しかしこの愛着は、不安定なものとして、咲の中に定着しているようです。

不安定な愛着とは

数年がたって養育者は子どもを育て続けていきますが、子どもが成長していくにつれて、子どもが養育者にとって思い通りにいかなくなることが増えてきます。

咲の家庭でもそうですが、親は子供に対して自分の言う通り、思い通りになっている時は、愛情を注ぎ、咲が母親の意に反することをしようとすると、激しく怒ったり、機嫌が悪くなったりします。

そうすると子どもは、いい子にしていれば愛してもらえる、逆にそうしなければ愛してもらえない、大変な目に遭うといういわば恐怖政治のような環境で育つようになります。

だんだんと、子どもは、親の顔色を一生懸命に窺って、機嫌を取るようになり、機嫌を損ねると自分のせいだと考えるようになってしまうのです。

子どもにとって、最初の人間関係は養育者とのもの。最初はそしてそれが世界のすべてです。そこで培われた人間関係の種となるものは、その後何十年もその後の人生に影響を与えていきます。


人間関係を形成する種は養育者との関係にある

仕事上で上司や職場の人とのかかわりで、なぜかいつも不安になっていた咲でした。
・上司の機嫌や顔色が気になる
・上司からの報告書のやり直しの指示に対して、自分を否定されたように感じる
・周囲と自分を比較しすぎる
このような咲の人間関係を象徴する特徴はやはり、母親との関わりが一つの要因になっていると考えられます。

同じ環境で育てば必ずそういう性格になるか


そのような疑問が浮かぶのですが、答えはそうではありません。

同じ家庭で育ったきょうだいが全く違う性格になることの方が多いくらいです。
しかし、不安定な愛着の中で育つ子供たちは同じ咲と同じような性格傾向や、同じでないにしても対人関係上で辛さ、しんどさを抱える人が多いと言われています。

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