海外での授業 中国

台湾での一年間の修行を終え、日本で二年間、勉強・研究という名のモラトリアムを満喫しました。しかし、それも終わりを迎えます。

終わりを迎える時点で、デジャブです。大学卒業前と同じく、就活も何もしていないところに、修論の副査をしてくださった先生から、中国行きの話をもらい、即決しました。

赴任先は、中国の東北部、北朝鮮やロシアに近い地でした。

今回は、専任教員ということで、授業だけではなく、会議はもちろん学生の卒論指導なども多く担当しました。

赴任してまず驚いたのは、会議の光景です。会議室に日本語担当の教師が全員集まり、主任がいろいろと話をしている最中に、

「テレテレレ~ン」

とても陽気な音楽が鳴り響きました。

ある教師の携帯電話の着信音でした。公的な場所で、携帯電話をマナーモードにしていないことにも驚きでしたが、それよりなにより、そのまま普通に電話に出て話したことには絶句でした。

あとで聞くと、別に驚くことではなく、よくある光景だとのことでした。

それから、大学の院長を交えた食事会というものが頻繁に催されました。私たち外国人教師は、いわば大学のマスコットのようなものです。日本語に全く関係のないイベントにも駆り出されます(外国人教師も出席しているということが、大学のPRになるということでした)。その食事会は、平日のお昼にも何度もありました。そこで、同席した教師たちが普通に「白酒」(中国のお酒で、アルコール度数は低いもので三十度ちょっと)を飲むのです。そのあとも授業がある教師もいれば、授業はなくとも、もちろん勤務時間内です。しかし……、悲しいかな、院長直々の献杯を断ることは不可能に近いことでした。そんな時は、口に含んで、そのあと吐き出し、コップに残っている「白酒」は、捨てたりしていました。文化が違うと、ここまで考え方が違うのかと、とても衝撃的でした。


加えて、授業運営に関わる驚きもたくさんありました。

まずは、日本で出版されている教材の無断コピー、教材として配布ということが、当たり前のように行われていたことに驚きました。コピーの教材でも学生からは教材代をかなり徴収します。だったら、正規の教材を配布すればよいものをと何度も思いました。中国人の同僚教師にその旨をぶつけたりもしましたが、仕方のないことだと言われました。大学もそのような方法で資金を得ているのだと。

中国では当時少なかった私立大学の運営という面を考えれば、理解ができる部分もありましたが、やはりコピー教材は紙の質が劣悪で、学生の学びを中心に考えれば、これはよくないことだったと思います。


それから、期末試験などの試験監督のいいかげんさにも閉口しました。

例えば学生が携帯をいじっても何も言わない教師がいるのです。それどころか、カンニングを容認している(むしろ、全員合格してほしいという気持ちからか、助け合ってみんなで合格しようというような風潮が強かったです)教師も多く、同じ日本語担当の中国人教師に、何度となく、嫌になるほど、日本ではありえないことだというのを説明しました。中国において当時は、カンニングは助け合い行為であり、不正行為ではありませんでした。今も納得はいきません。しかし、郷に入ればなんとやらで、私は我慢して理解してもらえるまで説いて回るしか方法はありませんでした。2003年に赴任し、二年経ったころには、少しは理解してもらえるようになりましたが、この闘いは、とても滅入りました。



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