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紺碧のトライアドをお読みいただきありがとうございます。 noteにしては長編ですが、つらつら…
#24 その日は、中田准教授のレッスンだった。ベートーヴェンが残してくれた楽譜という手紙…
#23 「素敵な名前に決まったようね。これからもバンド活動を続けるの?」 前川さんからの質…
第4楽章##22 その日は、紫苑から喫茶クレッシェンドに集合がかかっていた。部屋の電気を消…
#21 海のように広がった自己投影を、渡辺さんのソロが音楽としてまとめてくれた。民族的な…
#20 私達の演奏が始まっても、会場のざわつきは収まらなかった。コンサートホールとは違い…
#19 BGMの再開とともにバーが雑多な音に包まれた。後ろから「よし準備をしよう」と渡辺さんが現れた。両手にいくつもの黒い楽器ケース抱えている。入り口でタイミングを伺っていたようだ。 「何を持ってこれました?ハイハットあります?」 「ある」と右手を少し上げる。とても重そうだ。私はそれを受け取りステージに運ぶ。 「ハイハットとスプラッシュ。それにカホンとボンゴ」 次々と楽器が取り出される。 「よし全体的にラテンフィールで行こう。セットリストも変えるから」と紫苑が告げ
#18 時刻は18:40を回った。紫苑と渡辺さんはそれぞれ楽器の用意に向かった。紫苑はベースア…
#17 当日の集合は17時に大学の正門だった。日はまだ十分に高く、授業を終えて遊びに出る…
#16 ライブの成功と打倒ジャズ研を誓ったところで、お開きとなった。もっとも、後者に熱心…
#15 ライブ本番へ向けての練習は佳境を迎えてきた。ほぼ毎日の練習で仕上がってきている―…
#14 ピアノに座り、周りを見るとまだ多くの人が歩いていた。こちらに顔を向けているが、足…
#13 渡辺さんの条件を満たすべく、私は教養学部棟のエントランスにいる。時刻は昼の12時…
#12「ぜんぜんダメだね」 三人でのセッションは散々な出来だった――ようだ。 そんなに良くない演奏だっただろうか?少なくとも私は気持ちよく弾ききったと思う。 「紫苑は、ベースなんだからバンド全体を下支えする演奏にしなよ。やっていることは完全にフロント楽器じゃん。いまからでもいいから、サックスとかに転向したら?」 「それは断る。僕は僕の音楽を演る」 「そう言うとは思ったよ。『音楽的アイデンティティの探求』だっけ?」 アイデンティ? すでに紫苑は渡辺さんの忠