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子どもと討論するということ

はじめに

麻雀研究家が15歳のフェミニストに討論を持ちかけて話題になっている。討論の相手にはクレーム研究家をキャスティングしているらしい。
2019年の流行語に選ばれた「 #KuToo 」の発起人であり、BCCの「100人の女性」にも選ばれた石川優実さんと「Twitter論客」なる肩書きの方の討論会※1 は記憶に新しいが、今回の討論会も表現の自由とフェミニズムについてのものらしい。この討論会の開催に多くのフェミニストが苦言を呈している。

それもそのはず。主催者の麻雀研究家は「(4000円の報酬で)嫌だと思っても、その動画を永久に残す権利をもらう」と公言しており、討論会に関するツイートの数日前には「女子高生のにおいつきローション」を制服姿の女性にかける(ことを推奨する?)写真を嬉々としてツイートする人物であり、取り巻きも「15歳女子●学生集団公開ボコリ楽しみすぎ」とリプライを飛ばしている。安全で意義のある討論会が開かれるとは思えない。

ここで「声をかけられた15歳の女性は、自身の身の安全と将来に広がる無限の可能性のために討論会を辞退するべきだ」とでも結んでも良いのだけど、せっかく筆を執ったのだから自分が日頃考えている大人と子どもの在り方についてつらつらと述べていきたい。

※1 2019年11月日に開催された討論会「これからのフェミニズムについて」。このイベントの充実度については様々な議論が成されているからここでは触れないけれど、石川さんのブログやTwitterに書き込まれた参加者の声を見るに、討論の相手であるTwitter論客氏が怒鳴る場面あり、ミソジニストからの嘲笑ありの会だったようだ。

15歳は子ども?

まず、渦中にいる女性の15歳という年齢について考えたい。
子どもの定義は様々だ。18歳以下の人間、20歳以下の人間、自分でお金を稼いでいない学生……いろんな見方がある。私の専門分野は児童書だけれど、児童書のジャンルであるYA(ヤングアダルト)の対象は26歳までだ、という学者もいるくらいだ。一方で、成人年齢を14歳と定めている国もある。
とはいえ、現代日本で15歳を子どもではないと断言する者は少ないだろう。

じゃあ、私たち大人は子どもとどのように接したら良いんだろう。討論・議論は可能なのか?
おそらく可能だ。というか、ちゃんと議題を設定すればまず間違いなくできる。15歳といえばクラスや部活で同級生と意見を交わし、学園祭を作り上げたり大会に出場したりしている。当然、自分の意思も意見もあるだろう。
大人と15歳が意見を交わし、深めることは十分可能だ。

でも、大人同士が討論するのと同じようにとはいかない。(と、私は思っている。)なぜなら相手は子どもだから。
子どもは子どもであって、「小さい大人」でも「未熟な大人」でもない。大人とは少し違った存在だと私は思う。
まだ人生経験も浅くて、何かあったときに社会的にも金銭的にも責任をとることができない。というか、とるべきでない人たちだ。考えが変わる機会だってたくさんある。未来も、可能性も広がっている。
そんな子どもと討論するとき、大人は十分注意しなくちゃいけない。

大人が子どもと討論するときに気をつけること

さっきも言ったけれど、大人と子どもは立場が違う。
どんなふうに違うかを列挙すると日が暮れてしまうから、人生経験の差に注目してみる。

多くの子どもは家庭と学校(とインターネット)が生活の中心で、交流する人も、触れる考えも限られている。
これは本人の努力ではどうしようもないし、悪いことでもない。成長に合わせた学びを提供してくれて、同じくらいの発達段階にある同級生と過ごせる学校へ行くことはとっても意義のある事だし、社会にポンッと放り出されるよりも、上質な情報を存分に吸収したほうがいいだろう。(と、個人的には思う)

そんなわけで、良くも悪くも子どもは限られたコミュニティの中にいて、人生経験も浅い。
そうした子どもが大学進学や就職をきっかけにコミュニティを広げ、考えが変わるのは自然なことだ。
それに、家庭や学校にいる瞬間も心身ともに成長して学びを深めているのだから、一ヶ月で考えが変わることはザラにある。

子どもとの討論では、経験や情報に限りが有り、考えが日々深化し、未来が無限に広がっている人たちを相手にしていることを大人は自覚してほしい。

成長中の子ども相手だ。知識不足や経験不足をあげつらうべきではないし、議論の最中に立場が変わっても激しく非難するべきでもない。
相手の疑問に真摯に向き合い、丁寧に答え、学び語る姿勢を前向きにとらえる必要がある。これは大人相手でも大切なことだけれど、子どもと討論するのなら、なおさら気をつけるべきだと思う。

もう当たり前すぎて口に出すのもばかばかしいけれど、偏った司会者・対談相手・オーディエンスの前で素顔を晒し、それを永久にネットの海に残しておくことを承諾させるなんてもってのほかだ。

大体、多くの子どもは自分でお金を稼げない。
となると、もし討論の場で名誉毀損にあったり、顔出し配信の末に住所などが割れてストーカーや嫌がらせの被害にあったりしても裁判を起こすのが難しい。引っ越そうにもお金がなければおはなしにならない。

公開討論という形に限っては、子どもが経済的に弱い立場にあることも踏まえなければいけないと思う。

さて、なんだかまだまだ語り尽くせていない気がするのだけど、長くなってしまったので、ひとまずここでおしまい。

ご意見ご感想がありましたら、お好きな形でお送りください。

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