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ニャーと鳴くあの子はもういない。【2】

2022年の夏。私は契約社員の仕事を期間満了で退職し、次は正社員を目指すぞ!という気持ちで求職活動をしていました。


新卒の就活経験ほぼなし&正社員未経験の私にとってはそれなりにハードルが高く、就職アドバイザーさんの力を借りて、正社員内定を勝ち取るまでにまるっと2か月かかりました。
ですがこの頃は毎日家にいたので、散歩などでボスと触れ合う機会がグンと増えました。
うだるような暑さのなか、ボスはいつもいる道沿いのアパートに付属している日の当たらない駐車場で、いつも身体を地面にべったりとくっつけて涼んでいました。
涼んでいたと言っても、30度をゆうに超えている昨今の夏……。
家にいたほうがいいんじゃない?と心配になるほどの暑さです。
私を見つけても細い声で「ニャー」と鳴くか、(すみません今日無理です)とばかりに無言を貫かれたりもしました。笑
こんな状態でも絶対外にいるのは野良猫出身のたくましさゆえか……と妙に感心してしまいました。

熱中症で亡くなってしまわないかと心配した夏を超え、秋そして冬。
私は2か月かけてやっと叶った正社員雇用の会社が絶望的に合わず、短期間で退職。友人の紹介で短期バイトをしていました。
こんなことになるなんて思ってもみませんでした。決断に至るまですごく悩みましたが、退職後は週4でバイトしながら、一念発起してそれ以外の日を簿記試験の勉強にあてました。

そうしてまた、思わぬ形でボスに遭遇する機会が増えたころ。
ボスの「ニャーニャー」に負け、ついに私はボスの首から背中を撫でてみました。
初めて撫でたときの感触は今でも忘れられません。
うっすら凹凸を感じる骨、そして柔らかな毛並みに改めて<生き物>を感じました。
撫でてもらうまでは「ニャーニャー」と鳴くのに、撫でられているときは目を瞑って無言なので、これで大丈夫かな……と思うこともしばしば。
たまにボスを撫でている人を見かけると、専用ブラシで顎をぐりぐりされて「ゴロゴロ」と鳴いていたので、僅かにジェラシーを感じつつ……。
それでもまた違う日に会うと「ニャー」と呼ばれるので
まぁ良かったのかな、と思うことにして2回に1回くらい撫でさせてもらってました。

この頃はボスの瞳に違和感を覚えることがあり(なんとなく目線が合わない)、お年寄り猫だからいつか突然いなくなってしまうのかなと思い、
その時がいつ来てもいいよう会えたときは写真を撮るようにしていました。
冬毛なのか少しずんぐりむっくりでした。

2023年2月後半。散歩から帰ってきた母が「ボスの具合が悪そうだ」と言いました。
毛玉を吐いていて近づいたら苦しそうだった、と。
動物の知識はない私ですが、『ちいかわ』のハチワレちゃんが毛玉を吐くイラストを見たばかりだったので「猫の生理現象っぽいよ」と教えつつ、少し心配になりました。
別日にボスを見かけて近くに寄ると、ケホケホと咳をしていました。
人間以外の咳を見たことがなかったため、ちょっと新鮮に感じつつ「大丈夫ー?」と声をかけてみるも(すみません今日無理です)と去っていきました。

3月はじめ。暖かい日が増え、ボスは体調も回復したのか、いつものように陽だまりで寝ていました。
この頃のボスは足音などの気配で誰かきた!と「ニャー」と呼ぶことが多く、私は背中だけでなく顎回りのなでなでにチャレンジ。
ひょんなことから知れたボスの本当の名前を呼べば(なにー?)と見上げてくる姿が可愛くて、なるべく本当の名前を呼ぶようにしてみたりしました。
穏やかな日々でした。

【3】につづく


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