ニャーと鳴くあの子はもういない。【1】

あまりに突然のことで、これが最初の(内容のある)投稿になるとは思ってもみませんでした。
お話するのは、私と隣家の猫のだいたい10年の話になります。

ちょうど1か月前、隣家の飼い猫が亡くなりました。交通事故だそうです。
この猫との関わりを忘れたくなくて、自分のための備忘録として文章を書きます。

10年程前、両親の離婚があり、10代の私と40代の母は静かな暮らしを求めて
今も住んでいる街に引っ越しました。
住みたてのときはかなり大変で、どこからか侵入してくるアリの退治や、
ベランダ(1階なので庭。雑草すごい生える)は暫く人が住んでいなかったこともあり野良猫の糞尿場となっていました。
これを何とかストレスなく暮らせるレベルまで持ってくるには1年以上かかりました。
※ちなみに、野良猫被害に困っている方には<竹酢>が一番有効です。トゲトゲや超音波はするっとすり抜けてきます。※

ベランダへの野良猫の出入りが減ったころ、隣家の方に可愛がられた1匹の猫が飼い猫に昇格したらしいという話を母から聞きました。

白地にグレーのハチワレ猫。
ぱっと見ではオスかメスかも分からなかった私と母は
とりあえずうちの周りに野良猫が入らないよう頑張って統率してほしい思いから、勝手に「ボス」と名付け呼んでいました。

ボスは飼い猫になって以降も外にいて、夕方になると隣家のおば様に抱きかかえられて家に戻っていきます。
なので土日の昼間なんかは家を出てすぐの道で鉢合わせることが多く、
母は「動物は目をそらしたら負けだ」と言って、よくボスがその場を立ち去るまで睨み合っていました。
私はボスが道行く人に撫でられているのをちょくちょく見ていたので
「撫でたいなぁ。でも人の家の猫を勝手に撫でるのも……」と思いつつ母の後ろでちょっと睨んでみてました。
車通りも少ない道なので、ボスも自由にのびのびと過ごしていたようでした。

そんなかんじで数年が過ぎ、私は社会人、ボスはお年寄り猫に。
あるときからボスは私や母を見つけると「ニャー」と鳴くようになりました。
この頃は、ボスも統率がとれなくなってきているのか、野良猫が少し増えたように感じましたが(繁殖期などは鳴き声がすごい)糞尿被害はとくになかったため、私も母も徐々にボスとの物理的・心的距離は縮んでいったように思いました。
「飼い猫になってから太ったよね笑」とボスが我が家の話題にあがることもしばしばありました。

お年寄り猫になったボスは、陽だまりでごろーんと寝ていることが多く
人が通るたび「ニャーニャー」と鳴いて(撫でて、撫でて)と言っているようでした。
ボスの近くでしゃがむと、こっちに来て匂いを嗅いできます。
「ボス―」と呼ぶと、絶対に名前は違うのに「ニャー」と返事をしてきます。
まだ撫でることには抵抗があったため「撫でないよー」と言うと、それにもまた「ニャー」
「ニャー」しか言わないボスですが、仕事もしていたので休日に会えたらラッキーなボスとの交流がささやかな癒やしになっていました。

【2】につづく。


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