【Review】2018年J1第32節 川崎フロンターレVS.セレッソ大阪「一戦一戦の積み重ね。優勝がちらつきつつも。」

 2018年J1第32節の川崎フロンターレは、1-2でセレッソ大阪に敗れましたが、サンフレッチェ広島も負けたため、優勝が決定、見事J1二連覇を達成しました。おめでとう!!
 とはいえ試合には負けたので、ここでは優勝を一旦片隅に置いて、冷静に試合を振り返ります。まずセレッソのモチベーションが低そうだとプレビューでは予想しましたが、そんなことはなく、目の前で優勝させないという意気込みを感じました。失礼しました。。。

機能しない二つの武器
 この試合の最大の敵は芝生でした。水は巻かれてたようですが、芝が深く、ボールスピードを上げられません。川崎は普段なら最終ラインでのパス回しで相手守備のズレを作り、それを活かして攻撃を展開します。しかし今日はボールよりも人の方が速い場面もあり、セレッソ守備陣形にズレを作れません。セレッソとしては今日の川崎のビルドアップは脅威でなかったでしょう。
 今日のようなピッチコンディションだとテクニックの差がはっきりと出ます。ショートパスに関しては守田が一番上手かったと思います。全体的にピッチの影響を受けずプレーできており、さすが優勝チームのボランチといったところでしょうか。逆に大島中村は中距離でも浮かした球を配給、球筋を変えることでピッチに適応してました。
 ピッチの影響もあり、パスワークによる崩しが機能しません。それでも今季勝ててきたのはもう一つの武器、前線からの守備があったからですが、この試合ではセレッソのパスワークにいなされ続けます。PK獲得が唯一成功したシーンでした。
 セレッソはGKキムジンヒョンが積極的にパスワークに参加することで、常に川崎のプレッシャーに対して数的優位を作ります。口で言うには簡単ですが、メンタル的に難しい役割をうまくこなしてたと思います。ワントップの阿部は攻撃時にいろいろな場所に顔を出しますが、そのせいで守備位置が安定せず、いつもより前線からの守備が難しい状況でした。知念がワントップに入った後はだいぶ整理されてましたが。

セレッソのテンポ
 セレッソはゆっくりとしたテンポで試合を進めようとします。前半からキムジンヒョンがボールを保持し、ただ時計を進めていたのが印象的です。川崎からボールを奪ってもカウンターを連発せず、基本は自陣でのキープを優先しますし、最後尾キムジンヒョンまでボールを下げて、時間を作って攻めの態勢を整えます。
 守備の場面でも、相手陣地ではにはプレッシャーをかけません。自陣入ったあたりから杉本と柿谷のツートップが寄せにくも、基本はパスコースの限定で、サイドに誘導するだけです。そのサイドでは水沼と田中が豊富な運動量でスペースを埋めており、攻略が容易ではありません。こうしてセレッソは攻守の切り替えを発生させず、手堅く試合を進めていきます。

光明が見えた右サイド
 徐々に去年のルヴァンを思い出すサポーターも多かった試合展開だったと思いますが、川崎は右サイドから崩しにかかります。川崎が左から右サイドにボールを回したとき、セレッソ左SHの田中の守備が緩い部分を突こうとします。田中は中央の守田や中村にアプローチに行ってしまい、エウシーニョをフリーにしてしまいます。この辺りは急遽出場した影響があったでしょう。エウシーニョを最終ラインの背後に送り込むことで何度かチャンスを作った川崎ですが、今日は家長とのコンビネーションが噛み合わない場面が多く、たとえばセレッソの1点目直前は家長がエウシーニョと息が合わず、コミュニケーションを取ろうとした隙を突かれています。
 こうして徐々に機能不全に陥っていく状況を打開しようとした鬼木監督の判断は、家長を左に、阿部を右に配置します。おそらく左にセレッソ守備陣を寄せさせて、右のエウシーニョに素早く展開するのが狙いだったと思います。70分過ぎの大島からエウシーニョへのサイドチェンジを狙ったと思います。ただこれも上手くはまらず。左サイドには運動量のバケモノ水沼が待機。家長がいても優位にボールを保持できません。その後鈴木齋藤の投入で攻撃の活性化を狙い、ある程度押し込むことには成功したものの、最後まで右サイドの攻略はできず。
 この試合で外と内の使い分けができなかった理由の一つに、知念のポジショニングがあります。知念はできるだけ背負って受けたいのか、ボールホルダーと垂直な関係でポジショニングするため、川崎の攻撃に奥行きはできますが、横幅が上手く作れません。そのため斜めのパスを入れることができず、セレッソはボールと知念の両方を見ながら守備ができるので対応しやすいのです。
 外でボールを保持しているときには、知念がボールサイドに極端に寄るクセがあるため、サイドに圧力はかけられますが、その分ボランチとCBの間のスペースを作る動きが少なく、この試合は中村が良い位置でボールを受けるシーンが少なかったです。こうして普段通りの攻撃ができなかったのが敗因の一つでしょう。

目の前の試合に集中する難しさ
 鬼木監督をはじめ、今年の川崎は特に目の前の1試合を戦うことを強調してきました。その積み重ねが二連覇をもたらしたと思います。ただ今日に限ってはそのスタンスにブレが見えてしまったなと、それがいまの川崎の弱みだなと感じたのが同点直後です。
 ただ目の前の1試合を考えたなら、ロスタイム直前に同点に追いついた、という状況で、川崎のDNA的にそのまま逆転を目指したでしょう。しかし優勝を意識して、そのままドローで終わらせるという選択肢がちらつきます。実際追いついたタイミングで鬼木監督は広島の状況を聞いていたようですし、中継でも家長がベンチから何か伝えられているのが映されました、おそらくそれでしょう。ここで「34分の1」から「優勝決定戦」とこの試合の意味が変わっていきました。

中村 「最後、勝ちに行くというか、守る必要はないと思っていた。追いついた後だったし。その時間、相手も集中が切れていた。 」

(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2018 明治安田生命J1リーグ 第32節 vs.セレッソ大阪」<http://www.frontale.co.jp/goto_game/2018/j_league1/32.html>)
奈良「終了間際、自分はベンチを見ていたのでドローでも決まる雰囲気は感じていたが、バックスタンドのサイドは伝わってなかったと思う」
(引用元:同上)

 意思統一がうまくいかないのはこれまでの、そしてこれからの川崎の課題として残ります。今季だと第16節札幌戦は3点目を取りに行くのか、守るのかと意思統一ができなかった試合で、ああいった試合の終わらせ方というのはまだまだ甘さがあります。この課題に対処した時がカップ戦優勝のタイミングでしょう。


 さて見事二連覇を達成した川崎、中村が強調していましたが、本当にすごいことです。Jリーグ後発組というのもポイントです。今季の振り返りや、優勝の意味などはシーズン終了後にまた書きたいと思います。
 残り2節ですが、もうすでに三連覇への道は始まっています。どういったメンバーで、どういった戦術で臨むのか。楽しみにしたいと思います。

改めて優勝おめでとう!!

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