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【Review】2019年J1第25節 川崎フロンターレVS.セレッソ大阪「マニュアル運転にロマンはあるけど難しいからオートマがオススメ」

はじめに

 2019年J1第25節の川崎フロンターレは、1-2でセレッソ大阪に負けました。これで6試合勝ちから遠ざかっています。負け数はまだリーグ最少という慰めは、引き分け数が最多という事実を引き立てますね。
 先制されても一度は追いつき希望を見せてはくれました。がしかしその後が続かず。展開は異なりますが、ここ2試合と同様に追加点を取れずに徐々に首を絞めていった試合になりました。

先制されたが落ち着いていた川崎

 まず失点したCKのシーンで守備の配置が合っていたかは疑問が残ります。これまではニアサイドにストーンとして小林かダミアンがいたのですが、この時は小林が中央寄りにいたためニアサイドにスペースが生まれていて、そこをピンポイントで突かれました。
 開始早々先制を許す厳しい幕開けになりましたが、選手たちは冷静に立て直します。攻め急がずに相手を押し込む展開に持ち込み、奪われても攻撃に繋がせない守備でペースを渡しません。特に縦パスを出せるし受けれる中村と、ボールを預けるとキープしてくれる家長がいると、こうした展開にはなりやすいです。その一方で押し込んだ後の仕掛けには昨年からの上積みが少ないため、対策されて苦しんでいるのが今年の川崎でしょう。
 とはいえ前半のうちに追いつくことに成功します。狙い通りではありませんが、相手ゴールに向かうクロスは相手にとって嫌なので、ああいったミスは起こります。阿部のシュートはさすがですね。ミスのこぼれ球ではありますが、右から攻撃を始められると左の阿部にポジショニングの余裕を与えられるので、良い位置からシュートを打てるチャンスは広がります。この辺りに右からの攻撃の改善の影響が見えます。

先制したがボールを保持できないセレッソ

 下のコメントにもあるように、先制後のセレッソは狙い通りではありませんでした。本来であればボールを保持されることは許しつつ、奪った後に自分たちがボールを持つ時間帯を作りたかったのでしょう。 レッソとしては奪った後の縦パスを大事にしたかったのでしょうが、メンデスへのパスがズレたり、柿谷との距離感が悪くキープまで持っていけません。

ロティーナ監督「前半はスタートでゴールを決められたのですが、そのあとにフロンターレが明確に我々を支配してきました。ボールを速く動かしてきて、下がってディフェンスをする必要がありました。そのあとに良くなかったのは、ボールを奪った後に簡単にボールを失ってしまって、また守備を続ける必要があった。そういう時間帯が続いてしまいました。」
(引用元:

 一方で守備は、ミスから失点はありましたが、組織的に整備されていました。特に上手いと感じたのがラインコントロール。中央を圧縮しつつ徐々に圧力をかけたいセレッソの戦術の肝の部分です。小林や家長の裏抜けをラインコントロールで封殺することで、最終ラインから前に圧力をかけられる守備設計にしていました。
 最近の対戦と同様、中央を固めてサイドに追いやりつつ、サイドでもプレッシャーをかけた守備で川崎を苦しめます。セレッソとしては守備から攻撃への接続に苦しんではいましたが、結果的には川崎が先に窒息したような試合になりました。

ギアチェンジがぎこちない

 逆転を目指して後半に動いた川崎でしたが、ギアチェンジがぎこちないため上手くいきません(教習でしかマニュアル乗ってませんが)。まずギアを替えるのに手間がかかります。いまの川崎は選手を1人入れ替えただけでは攻め方を大きく変えられません。攻撃を複数選手のセット考えているからです。この試合では長谷川が最初に投入されましたが、あまり効果的ではなく、むしろダミアンが入った後にようやく活き始めました。おそらくダミアンまでを見据えた上での長谷川投入だったと思いますが、そうなるとその間の7分くらいが勿体無かったと感じます。
 別な側面だとギアの替え幅が大きく、ギアを替えてしまうとそれまで出来ていたことが出来なくなります。この試合だと中村を交替後にビルドアップで苦労し、押し込みづらくなっていました。ダミアンにクロスパターンだとこれまでは中村か家長を残していたのでビルドアップの段階でも問題なかったのですが、今回は2人とも交代してしまいました。本当なら家長を残す想定だったでしょうが、長谷川投入の時に阿部と家長を天秤にかけて、ゴールの期待ができる阿部を残したのだと思います。
 仕方なく押し込む展開を再び作るため脇坂を投入します。がそれでもボランチが2枚とも後ろに落ちる形を継続するため、前にボールを配給できません。結局中村の役割が必要な形で進めようとするため、阿部がその代役を誤魔化しながら担っていました。
 交代枠3つを使ってやっとダミアンと小林の2トップを活かす形を作り出した川崎でしたが、時すでに遅し。長谷川から脇坂の投入までの15分間をかけてやっと一回ギアチェンジ出来る、というのが現状です。選手層を厚くして武器を増やしましたが、未だ活かしきれていません。オートマ運転みたいに知らない間にスムーズにギアチェンジ出来るといいですね。

既に精一杯

 マレーシア出張のため2試合まとめて観た感想を最後に少し。一つが守備に余裕がありません。この試合でもCB2人で相手前線2枚に対応する形が多く、負担の大きい守備設計になっています。最近の川崎対策の一つに、SBを外に引っ張り出してCBと勝負というのがあります。そうした対策を分かった上でこの守備設計をしているので、きっと今後もそうなのだと思いますが、失点数が増えている事実を考えると少し不安です。
 もう一つが中村の無理が利かなくなっていることです。最近増えたように思うのが味方のパスミスをリカバリーできない憲剛の姿です。この試合でも守田やマギーニョのパスミスをカバーできません。以前なら体に無理が利いていたこともあってか、そうした場面で奪われることは少なく、むしろ相手が強く食いついてきたところで盤面をひっくり返すようなパスでチャンスに変えていました。
 そしてチーム全体に共通して精一杯やってるのをひしひしと感じます。昨年までの川崎と比べると選手が精一杯やっている、つまりキャパギリギリの状況だと感じてしまいます。4冠を目標にしたために多くの課題を同時に解決しようとした結果、自分たちのキャパシティを溢れてしまったのでしょう。シーズンも終盤に差し掛かった今、対処する課題の選別が必要な気がします。

おわりに

 この敗戦で首位東京との勝ち点差が11に広がりました。残り9試合を考えると結構キツイですね。もちろんこれを諦める理由にしてはいけない一方で、そろそろ冷静な判断が求められる頃でもあり、リーグとカップ、そして今季と来季の取捨選択が見えてくるかもしれません。
 どちらにせよこのギアチェンジだけはスムーズにやってほしいですね。

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