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【Review】2021年J1第37節 川崎フロンターレVS.ガンバ大阪「"ものの"な両チーム」

はじめに

 2021年J1第37節の川崎フロンターレは、4-1でガンバ大阪に勝ちました。セレッソ戦に続く4得点で、リーグ戦最後のホーム戦を勝利で飾ることができました。

 ガンバ大阪は名古屋戦に続いて2連敗。また3試合連続の複数失点で、守備の不安定さが見えた試合となりました。降格圏は脱したものの、来季に向けて一つでも好材料を見つけたいところです。

サイド圧縮で1点返したものの

 開始10分間での2失点はガンバとしても想定外でしょう。決して守備に穴があったわけではなかったと思います。たしかに中央に選手を寄せ過ぎた分、サイドにスペースができていましたが、むしろそこを効果的に利用し、ゴールまで繋げる精度の高さを褒めるべきだったと思います。

 2失点で火がついたのか、15分あたりからガンバのギアが1段階上がります。サイド圧縮の守備に切り替え、川崎にサイドで呼吸を許しません。それによりサイドでの優位を取り戻し、カウンターの機会を作り始めます。試合後のスタッツで「インターセプト」と「スローイン」が増加したのは、サイド圧縮の守備が効果的だったためでしょう。
 1点目はまさに狙い通り。川崎守備陣が整っていないうちに、パトリックと宇佐美で攻め切るのはガンバの十八番です。谷口をかわした後、ソンリョンの股抜きを匂わせつつの脇下シュートは、宇佐美のゴールゲッターの能力を存分に存分に発揮していた場面でした。

 ただガンバとしては運動量を上げてサイド圧縮に切り替えても、主導権を握りきれなかったのは痛かったところでしょうか。井手口と奥野が3センターにプレスをかけることに加えて、小野瀬と福田がボールサイドにポジションを寄せることで守備の強度を上げていました。そのため彼らのスタミナが保つうちに同点まで持っていきたかったのが松波監督の本音でしょう。
 結局後半も川崎の攻撃は防ぎつつも、攻勢に出れる場面を多くは作れない展開が続きます。交代選手を入れて守備の強度を保ちながら時計の針を進めていましたが、踏ん張りきれず。終盤の2失点は、それまでのツケが溜まっていたために喫したものだと思います。

コンパクトに保てないものの

 対する川崎としては、ガンバの守備への解決策が出せないまま試合を進めていたように見えます。ガンバのサイド圧縮守備に加えて、ロングボールでの前進によって、全体をコンパクト&高い位置で保つことが難しい展開になりました。

車屋「相手がロングボールで対応してきて、それによってコンパクトにできなかった。失点でみんな少し後ろに重くなっているような感じがした。相手もそれでロングボールをけってセカンドボールを狙う。それを徹底してきた。」
(引用元:

 そうした展開でも相手に主導権を渡さないような粘り強さは見せましたし、それこそが今年の優勝を支えた原動力だったと思います。それは1対1の勝率を落とし過ぎないことや、タッチライン際でマイボールにするなどの細かいプレーの積み重ねによるものでしょう。
 ロングボールの応酬となってもセカンドボールを拾い続ける球際の強さは、就任以来鬼木監督が言い続けてきたことであり、それを体現した試合となっていました。実際、ボールを落ち着かせることはできなかったものの、ガンバに攻撃の隙を見せなかったのも事実だと思います。だからこそ後半も崩れずに2-1のリードを保ったまま時計の針を進めることができました。

山根「相手のコートでボールを握って押し込む作業が必要だった。行けそうなときは行ってもいいが、それですぐに相手ボールになったり、ゲームが切れることも多かった。ゆっくりとトーンダウンして、長い時間、相手陣地でサッカーをするのが大事だったとも思っている。」
(引用元:同上)

 もちろん、山根の言うように押し込む作業が必要だったのも事実だと思います。ただそれが難しい時に、すぐに代替案に切り替えられるのが川崎の強さです。それが前節のセレッソ戦でも触れた「試合の流れを共有する力」だと言える気がします。

PA内の駆け引きで決めるダミアン

 セレッソ戦に続いて2ゴールを挙げたダミアン。ここ最近はPA内での駆け引きの巧さがゴールに直結しているように感じます。山根のアシストが素晴らしいのはもちろん、相手より先にシュートが打てるポジションを取っていることが、ゴール量産に繋がっているのでしょう。
 ダミアンはPA内にボールが入る時の予測が敵味方含めて誰より早いです。ぜひハイライトを見てほしいのですが、一歩目が相手DFよりも早いことがよくわかります。たとえば1点目のシーンでは山根にパスが蹴られたくらいで動き出しており、一方でガンバの菅沼は遅れを取っています。そのためラストパスが出た時点で勝負が決まっています。

 加えて、シーズン終盤のダミアンで特徴的なのが相手の背後を使うプレー。相手を背負うのと裏への抜け出しの比率が、肌感覚ではあるものの、増えた気がします。これは山根や登里などのSBとのイメージ共有が進んだからだと思います。実際に得点に繋がったのも拍車をかけたでしょう。
 しかもダミアンの裏抜けはPA内でボールを受けられるので、相手DFからすると厄介でしょう。普通ならDFを引き離せずに距離を取るためにPAから外に出てボールを受けることが多いです。小林や知念などもその傾向はあります。他方でダミアンはポストプレーのスキルが高く、相手を背負って受けることを厭わないため、過度に距離を取ろうしません。そのためPA幅から外に出ずに、PA内でボールを受けることができます。

おわりに

 ダミアンはこれで得点王争いでトップに並びました。ライバルは横浜F・マリノスの前田大然。奇しくも次節は横浜との対戦ですので、直接対決で決まることになります。チームとしてダミアンにアシストしつつ前田を抑えて、得点王の援護射撃ができるのか

 これでガンバ相手にリーグ戦6連勝となりました。加えて、かつての敗北を返し切り、リーグ戦で負け越しチームが無くなりました。感慨深いですね。慢心せずに勝ち越し数を増やしていきましょう。

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