【Preview】2018年J1第31節 川崎フロンターレVS.柏レイソル「天皇杯を引きずらずに。新井の誕生日を忘れずに。」

 2018年J1第31節の川崎フロンターレは、ホームで柏レイソル戦です。前回対戦は鈴木の移籍初ゴールでの2-1の逆転勝利、守田や鈴木といった新戦力がフィットし始めた試合でした。
 首位の川崎と17位の柏で、かたや優勝、かたや残留を争うチームの対戦です。このような対戦は、がむしゃらに来る下位チームを正面から受け止めて負ける上位という構図が割と起こります。というかつい先日ジャイアントキリングを起こされた悪夢が脳裏にこびりついている方もいるでしょう。普段通り1/34として臨むことが求められます。

中村航輔の復帰か
 さて柏の現在地は10勝3分17敗の勝ち点33で17位と、降格圏です。昨季4位、ACLの同志だったことを忘れてしまいますね。さらに前節は同じ残留争いを繰り広げる名古屋に0-1で負け、崖っぷちに追い込まれてます。
 そんな柏にも吉報、中村航輔がミニゲームに参加したようです。7月18日の第16節東京戦で今季2度目の脳しんとうを起こしたために、復帰に時間がかかっていました。Jリーグが定める脳しんとう復帰プログラムは全部で5段階で、先日のミニゲームはおそらく接触ありのステージ5に該当するため、復帰が可能な段階まできています。単純に比較はできませんが、中村航輔の出場した13試合の平均失点が1.23に対して、桐畑の17試合の平均失点が1.76と約0.5点の差があり、柏の守備の再建には不可欠な存在でしょう。

シュートを打たれるし、止められない柏守備陣
 低迷の原因の一つが失点の多さで、ここまで46失点と川崎の24失点のほぼ倍です。クリーンシートが4試合しかなく、攻撃陣へのプレッシャーが強いです。
 被シュート数が多く、被シュート成功率が高いのが柏の守備の特徴です。そもそも柏は被攻撃回数が126.2回とリーグで2番目に多く、これは攻撃回数に起因しています。126.7回で1位の攻撃回数は柏の積極性の表れではあるものの、その分試合中の切り替え回数が増え、結果的に守備の回数が増えてしまいます。守備力が高ければ問題ないのですが、実際にはシュートを許してしまっているのが柏の課題でしょう。
 ただでさえ多い被シュートの成功率が高いので課題は一層深刻で、11.1%でリーグ14位の悪さです。もちろんこの数字には様々な要因が関係しますが、大きな要因としてはやはりGKの能力があり、中村航輔の不在が響いていると考えられます。以上まとめると、柏は頻繁な攻撃の応酬を選択しているけれど、相手に多くのシュートを許し、それらを止めきれていない、といったところでしょう。

手数をかけないサイドからの攻撃
 先ほど柏の攻撃回数の多さを取り上げましたが、加えて支配率が49.9%なのを踏まえると、一回の攻撃にあまり手数、時間をかけていないことがわかります。しかしその割にはシュート本数が14.8本で3位と、シュートまでこぎつけています。
 なぜ多いのか、それは柏のシュートまでのパターンによるものでしょう。柏はクロスからの得点割合が23.68%でリーグで4番目にその割合が高いです。さらにクロスの本数が18.5本で2位と、サイドからのクロスを主軸に攻撃を組み立てています。
 ではどのようなクロスかというと、アーリークロスと呼ばれるような、敵陣浅い位置からのクロスが多いことが予想されます。30mライン進入回数が42.6回で11位なのに対し、ペナルティエリア進入回数は15.8回で5位と高い数字が出ています。ここから柏は深い位置まで進入することはせず(できず?)、サイド攻撃を展開していると思われます。実際前回対戦でも小池から伊東への斜めのパスで川崎最終ラインは切り裂かれました。ああいった斜めのパスやドリブルなど、斜めに切れ込む攻撃を一つの形としているでしょう。
 ということで、柏の攻撃はサイドを起点に、浅い位置からゴール中央に切り込むことを志向していそうです。川崎とは異なり、ゴール前まで早くボールを運び、クリスティアーノや瀬川といったストライカーにチャンスを増やすことを目指していて、その結果シュート本数が増えていると考えられます。

阿部のコンディション次第か
 直近の天皇杯の反省を活かせるかがポイントです。セットプレー二発とカウンター一発に沈んだ山形戦は、今季の川崎の弱さが全て出たような試合でした。トーナメントを勝ち切る集中力がまだないことを証明してしまいました。
 こういった不甲斐ない試合には、阿部がいたらなぁと。彼は稀有な存在で、チームを引き締められる選手です。中村とはまた違ったタイプで、チームに良い影響を与えられる選手です。彼のような、勝つための雰囲気を作れる選手を内部で育てられていないのが今の、そしてこれからの川崎の課題でしょう。とはいえ意図的に育てられるかは不明ですが。
 戦術面では柏の右サイド、つまり左サイドの守備が焦点になります。小池と伊東のコンビは柏の強みで、前回のような失点は避けたいところ。川崎のとって負傷していた車屋と阿部の復帰は良い報せです。特に阿部は先ほど書いた通り、川崎にはないパーソナリティを持った選手ですので、欠かせないですし、守備への貢献度の高さはピカイチです。ここ数試合は齋藤が左サイドハーフに入っていましたが、今節は阿部をチョイスするのではないでしょうか。左SBは車屋の調子次第でしょうが、登里を起用するのでは。ポジショニングと対人守備の部分では登里に軍配が上がると思いますし、無理に怪我明けの選手を使う必要はないでしょう。
 最後に我らが長老中村憲剛が38歳のバースデーを迎えました。仙人にランクアップを目指すそうです。そんな仙人に隠れてしまったのが30歳を迎えた新井章太の誕生日です。中村の翌日に一つ歳を重ねた新井は、山形戦退場のソンリョンに代わって出場すると思います。新井は今季リーグ戦に二度出場しましたが、どちらも勝てていません。ひっそりと3度目の正直を狙っているのではないでしょうか。是非ともバースデークリーンシートを新井に。


 

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