【Review】2018年J1第14節 川崎フロンターレVS.柏レイソル

(※全て無料ですので、安心して見ていただければと思います。)
 2018年J1第14節の柏レイソル戦は、2-1で川崎フロンターレが勝利しました。

攻撃に繋がらなかったレイソルの守備
 Reviewの中でディフェンスラインの低さをデータを参考に指摘しましたが、その理由は守備から攻撃への切り替えが整理されていないからだと思いました。柏レイソルの守備はスペースを埋めるのではなく、相手選手にプレスをかけるスタイルであるため、特に中央の選手(この試合では大谷・小泉・キムボギョン)が動き回って守備をします。前半はフロンターレのパスワークがぎこちなかったのもあって、レイソルの守備が機能していました。しかしながらボールを奪った時のレイソルの選手のポジショニングが悪いために、攻撃に転じることが上手くいかず、簡単にボールを失ってしまうという状況が生まれていました。結果的に選手の消耗が蓄積し、ずるずるとディフェンスラインが下がってしまいましたし、再び押し上げようにもその攻撃への転換が整理されていないために低いまま試合を終えてしまいました。試合終盤のハモンロペス、キムボギョンのシュートなどレイソルは前線に豊富なタレントを揃えているにもかかわらず、攻守の切り替えが上手くいかないせいで活かしきれていないように感じました。

中村の意図あるポジショニング
 もちろんレイソルも全く対策していなかったわけではなく、左サイドにクリスティアーノを配置していたのは、彼のキープ力と推進力を生かして守備から攻撃に移行する起点を作ろうとしたためだと思います。実際後半は出来る限りクリスティアーノが高い位置を取ることで攻撃の起点を作っていました。しかしその策を打ち壊したのは中村のポジショニングでした。この日、コンディションが悪い中でも中村の存在感は大きかったと思いますし、その要因の一つがこの点です。中村は左サイドに攻撃が偏っていたこともあって、徐々に右サイドに位置するようになります。そうすることで左右の攻撃の偏りを解消しつつ、さらにはクリスティアーノを低い位置に戻させることに成功します。そのためレイソルは再び攻撃への展開が困難になり、単純なクリアが増えました。この試合のクリア数が42回というのがそれを物語っています。
 このポジショニングによる効果は他にもありますが、効果的だったのは中央にスペースができたことでしょう。トップ下に位置していた中村が中央から消えることでレイソル守備陣が密集しなくなってスペースが生まれ、そこを大島や家長が使うといった動きが活発に見られるようになりました。後半の大島のドリブル突破などもこの影響があったのではないでしょうか。

新戦力台頭の意味
 この試合はJ1初出場の鈴木が結果的に試合を決めましたが、鈴木の出場はフロンターレとして大きな意味があり、一つは技術の再確認です。この試合も全体的にパス技術の低下を感じました。というのもこの試合で途中出場したサブ組の森谷・鈴木のパスが非常に丁寧がゆえに、スタメンの技術不足がよりはっきりと見えました。鈴木はトラップとパスが丁寧で、出し手のタイミングが味方に伝わりやすく、それこそがフロンターレの攻撃の根幹にあるものです。これが改めて公式戦の中で見られたことが、チーム全体の技術の再確認のきっかけになれば良いのではないでしょうか。
 もう一つはチームマネジメントの困難の一つである、競争意識の醸成です。今年のフロンターレの課題の一つとして、スタメンの顔ぶれが去年と変わっていないというのがあります。純粋に選ばれた11人であれば良いのですが、ここまで変わらないと惰性で選ばれているという思いが生まれてもおかしくありません。この思いが蔓延すると特にサブ組の意識低下によってチーム力低下が引き起こされてしまいます。そこは今シーズンの鬼木監督の悩みで、ここまでもスタメンにテコ入れをしようとしていましたが、食いこめたのは守田くらいでしょうか。しかし鬼木監督の抜擢によってサブ組が活躍したという事実は、サブ組も監督から見られているし、スタメンの座は空いていることをはっきりと示すことができたと思いますし、中断期間前にそれを示せたことは大きいと思います。

ボランチの2人
 部分的には局地でのコンビネーションに不安を感じました。特にボランチ2人と左サイドの2人です。ボランチの大島・守田のコンビはまだ実戦経験が少ないのでこれからであるのはもちろんですが、守田はもう若手ではなく、1人の戦力として見るべきだと思うので、あえて取り上げます。この日の守田はビルドアップ時の大島との役割分担がまだ理解できていないようで、試合の序盤で大島がCBの間に入ってビルドアップに参加していたことがそれを顕著に物語っています。ビルドアップの時にはプレッシャーがきつい中盤のエリアでボールを受けることに長けている大島をそこに配置するべきであり、余裕でボールを保持できる最終ラインに配置するのは大島の良さを殺してしまいます。
 最近の大島はゴール前のラストパスにも期待ができるので、今のフロンターレの攻撃のポイントは大島をいかにゴールに近いところで仕事をさせられるかなので、守田の立ち回りはいまいちだったと思います。しかし後半には役割を整理できたのか、守田の良さであるボールを素早く捌ける能力を、大島よりも低い位置で発揮していたので、今後への期待が高まりました。

左サイドの2人
 左サイドの2人とは車屋と左ハーフに入る選手のことで、最近だと主に阿部・長谷川・齋藤(流れてくる家長)らへんでしょうか。この試合で気になったのが長谷川がピッチに入った後の車屋とのコンビネーションで、例えば両者ともタッチライン際でボールを受けようとする動きです。車屋は左利きなので基本的にサイドに寄っている方が選択肢が多くプレーできます。逆に言えば中に切れ込んでしまうと選択肢が狭まってしまうため、あまり好んで中に入りません。その意味で阿部が最も相性が良いと感じていて、なぜなら阿部は右利きで、かつ中に入って周囲の選手と絡みながら攻撃参加ができるからです。つまり大雑把にですが、外を車屋が、中を阿部が担当するという役割分担がシンプルでコンビネーションが取りやすいです。
 一方で長谷川や齋藤の場合はタッチライン際、つまり外の領域でボールを受けようとするので、阿部とは違うプレーを車屋は求められますが、この試合では上手く合わせられていなかったです。これは今後も継続的な課題で、車屋はどんなタイプの左サイドアタッカーにも合わせられるプレーができる幅が必要ですし、日本代表を見据えると当然備えなければならない能力です。例えば今日の鈴木のように、中にカットインして縦パスを入れるようなプレーができるようになると、本人の、そしてチームとしての攻撃の幅が広がるでしょう。

チームの成長余白はあるか
 次節の清水戦を終えればひとまず中断期間に入りますが、その期間を有意義に過ごすためにも、チームとしての成長余白がどれだけあるかが見えることが重要です。そのチームとしての成長余白は、突き詰めれば個々人の集合であるので、次節は各々が現在の能力と今後の可能性を見極める試合になると良いのではないでしょうか。

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