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初めてのSAJ参加レポート。これからの10年はまだまだ見えない…のでみんなで作ってこ。

はじめに

 はい、行ってきました「SAJ2020」。2019年に開催レポートを見て存在を知って来年こそはと思ってましたが、2020年は参加することができました。
 「Sports Analytics Japan」は今年で6回目を迎え、成熟してきた感じですかね。スポーツアナリティクスを中心にしつつ、その周縁領域も巻き込んだ多くのセッションを楽しむことができました。
 イベントレポートは多分後日出る?とは思いますが、簡単に知りたい方はグラフィックレコーディングでまとめられてます。公式Twitterから追ってみてください。

全体の感想

 さてまず全体の感想ですが、初参加のSAJに感じたのは業界に漂う閉塞感でした。いきなりネガティブですみません(笑)。たまに聞こえてくる「一緒に頑張っていきましょう」だったり「仲間を増やしていきましょう」もこうした閉塞感を打破したい気持ちの表れだったのかもなと。
 先行きが不透明な理由の一つが「データをどう現場に落とし込むか」に苦労しているからでしょう。聞く限りだとたしかに多種多様なデータセットを用意でき、かつそれらを容易に加工できるようになっています。プロだけでなく高校レベルでも活用されています。
 ただそこから先のデータ活用の可能性を示したものが少なく、これまでの改善に留まったものが多かった気がします。まだ試行錯誤の途中なのでしょうが、これからどう活用していくのかの未来を描いている人が多くはなかったです。もちろん表に出せないだけかもしれませんが。
 こうした理由からか、全体テーマの「HACk THE DECADE」が各セッションに通底していない印象を受けました。「これからの10年」よりも「これまでといま」にフォーカスを当てたケースが多かったです。
 初参加のSAJからは未来の見えなさを感じました。ただこれは別に悪いことではなく、フェーズとしていまはこれまでの積み重ねを改めて見返して、未来をみんなで描こうとしているタイミングなのでしょう。

評価基準をどう生み出し、扱うのか

 さていきなりネガティブな雰囲気出してしまいましたが、各セッションに目を向ければ興味をそそるテーマが多かったので満足度は高かったです。個人的に1番のヒットは音楽業界のセッションでした(下画像)。

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 このテーマに込めた渡辺さんの狙いは「評価基準をどう生み出し、どう扱っていくのか」でした。そこから音楽業界の評価基準をアップデートしてきたビルボードに行き着く目の付け方はすごい…。
 音楽業界ではかつてCD売上枚数が主な評価基準でしたが、いまはそれだけでなくむしろ再生回数の比重が大きくなっています。これは業界のゲーム(ルール)が変わったからで、原因の一つはネット配信技術の発展です。
 データの使い道の一つである評価ですが、その際には評価対象の実情に合っているかを検証しなければなりません。ひいては評価対象を取り巻く環境、ルールを熟知していないと困難です。
 ところが、他のセッションで現場にどう使ってもらうかが課題に挙げられていましたが、現場に必要な評価指標を提供できていないのが実情のようです。
 評価基準の作り方はきっとデータとにらめっこしても見えてこないと思います。評価基準を生み出すためには私たちがいまスポーツをどう見ているのかに自覚的になる必要があります。そこから別な視点を探していく作業が必要になるのではないでしょうか。

現場の意思決定に有意義なデータ提供を模索する

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 続いてこちらはサッカーの事例から現場でのデータ活用の実態を紹介するセッション。
 ここでの主な話題はどう現場にデータを提供するかでした。課題は大きく二つで、一つが情報受信側のキャパで、受け取る側の時間制約の問題です。サッカーの場合ハーフタイムは15分ですが、移動や休息を考慮すると情報伝達に使えるのは約5分。その中で取捨選択して伝えることに苦心しているようです。どこかの海外サッカーで、試合中に選手に紙のメモを渡してましたが、こうした実情を踏まえると有効な解決策な気がします。
 もう一つが現場が必要なデータかどうか。当然アナリスト側もサッカーを知っているため的外れなデータを提供することは無いでしょう。とはいえ最終的に意思決定する選手や監督がいま本当に求めている情報を提供するのは難しく、そこの見極めができるアナリストが必要とされているとのことでした。
 余談ですが、印象的だったのが西内さんのアイディア、「無線だったらサポーターが妨害電波流して邪魔できる」(こんな感じのことを言っていた)。流石に無理ですね的に流していましたが、情報戦の性格が強まっていけば妨害の一手はありえそうです。
 実際に同セッション内で、後半開始5分経ってから選手を交代することには相手を混乱させる意図があるとの話がありました。これは相手が処理すべき情報を多くすることで有利に立とうとする戦略です。言い換えると相手の受け取る情報へのアプローチで、これがどんどん拡大していけば嘘の情報を流したり、電源を落として情報そのものを与えない、みたいなこともありえるかもしれないなと…妄想ですが。

意外と相性が悪いけど、どうする??

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 最後に紹介したいこちらのセッションは、Sport、Social、Sponsershipの3つが最近は一緒に語られることが多いけど「実は仲が悪いよね?」という石井さんの問題提起からスタート。これはずっと感じていたことで、表舞台でよくぞ言ってくれた!!と心の中で思ってました。
 この3つのSの関係は俯瞰してみると意外と対立する矢印が多いことに気づきます。にも関わらず万能感のある「社会」と関連づけることでなんか価値のある感じになっていると二人は感じているそうです。
 この話はわりと2000年初頭のCSRだったり、1980年代の社会貢献に日本企業が取り組んでいた流れに近いように思います。多くの日本企業が右にならえで社会に正の影響を与える取り組みを行うけど、それってなんのためにやるの?がはっきりしていない。それでも多くのお金が使われるのはすごいことですが。
 スポーツも社会同様に万能感があり、Jリーグ内でも多様な価値観が入り混ざって、組織運営が大変とのこと。サッカーが政治的と言われる所以は、こうした多様な価値観を包括してしまう魅力の負の作用からなのでしょう。
 その解決策として米田さんがそれらの目標や価値観の関係性を見いだすことを提案していたのは興味深かったです。実際Jリーグでも3つの目標(価値観)が対立しないように、それぞれの繋がりを目に見える形で認識させることを目指しているそうです。
 これは統合報告の思想を汲んでいて会計士らしい発想だと思います。統合報告はざっくり言えば非財務情報を財務情報に紐づけて評価する報告のことで、ESGなどの非財務情報の重要性が高まっており、今後制度化されていくでしょう。
 統合報告ではビジネスモデルをベースに置いて財務情報に非財務情報を関連づけることで、これまで可視化されなかった非財務活動を評価しようとします。既存の価値観と新たな価値観の軸の交差点を探ろうとする米田さんの試みは、多分この統合報告から来ています。現状困難の方が多いとは思うけれど、ぜひとも応援したい取り組みでした。

おわりに

 冒頭で閉塞感と書きましたが、階段の踊り場にいるイメージです。決して否定的なわけではなく、ここからどう進むのかが楽しみになりました。
 直近ではどうやって現場の人たちに使ってもらうかを考えていくことになるのでしょう。そのためには現場のデータへのリテラシーを上げていく必要があり、アナリスト教育系コンテンツが増えていきそうな予感がします。
 それではこの辺で。

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