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【小説】フラッシュバックデイズ 13話


この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

13話 アムステルダム旅行 後編


老舗のコーヒーショップでアムステルダムで楽しみにしていた一つのスペースケーキを見つけた俺はテンションが上がった。
思ったより小さなサイズのチョコレートマフィンはマリファナの味などなく、普通に美味しく食べられた。
「え、全部食べたん?」「大丈夫か?」
姉二人は少し驚いた様子だったが、俺は大したことはないだろうとタカをくくっていた。

注意しなければいけない事は分かっていた。
ジョイントやパイプのように肺で吸収する分にはある程度効きを調整できる。効き過ぎていたらそれ以上は吸わなければいいだけだ。
だが体内で摂取するクッキーやスペースケーキは調整が出来ない上、
効きが1~2時間後に一気に現れる。
おそらく昨晩のマジックマッシュルームの効きが良くなく、肩透かしを食らったのもあったのだろうか、油断していた。

店を出て、コーヒーショップではないお店を数軒回った後、いかにもヒッピーテイストの俺好みのショップを見つけた。
店内にはドレッドヘアーのヒッピーのような店員がおり、奥にはパッチワークの洋服やラグが並び、とても良い雰囲気のお店だった。
「アンタが好きそうな店やな~」「でも確かに可愛い店やな~」と姉も気に入った様子だ。
店内を見周っていると体が重くなるのを感じ、俺は立っていられなくなり、近くにあった椅子に俺は座り込んでしまった。
俺は完全に石(ストーン)と化してしまった。
姉とドレッドのスタッフが何か話しているようだ。
ああ、俺も話がしたい。
もしかして俺の事を説明しているのか?
座り込んでいる事を申し訳なく感じた。
スペースケーキを平らげた事を後悔していた。
もはや何分~何時間そこにいるのかわからなかったが
「大丈夫か?」「立てるか?」姉さんが声をかけてくれた事で少し現実に戻れた気がした。
優しい笑顔のドレッドのスタッフにも救われた気がした。
これ以上ここに居座るのは迷惑だと感じ、鉛のように思い腰を上げ店を後にした。

外はもう暗くなっていた。
「アンタが好きそうなとこ行くから着いておいで」
まっすぐ歩く事が難しく、その場で寝転びたい気分だったが、姉二人の後を追った。人気が少ない夜の街をしばらく歩くと急に賑わっている場所があった。
レッドライトだ。
通称「飾り窓」と呼ばれる合法の売春街だ。
その名の通りレッドライトで縁取られた窓に下着姿の女性がまるで見世物のように道の両端に並ぶ光景は圧巻だった。
レッドライドを進んでいくと、マリファナの匂いと世界から集まったスケベ男達で異様な熱気に満ちていた。
「男が羨ましいわ~」「選び放題やな~」
と姉二人にせかされたが、何故かその時の俺はどうしてもレッドライトのドアを叩く気になれなかった。
スペースケーキがかなり効いていた、雰囲気に圧倒されていた、好みの女性がいなかった、等その時は様々な感情があったが、後で振り返ると這ってでも行くべきだった。
姉二人にもその時はもちろん、数年経った今でもからかわれるのも納得で、
人生で激しく後悔した事のTOP10に入る場面だ。

とにもかくにも、レッドライトの後悔はあったが、その後、ドイツ老舗クラブへの遠征、イギリス観光を経て大充実の旅だった。
しかし思い出すのはドイツでも、イギリスでもなくアムステルダムでの夢のような時間だ。
また絶対に来たい。
帰りの飛行機の中で何度も思った。

つづく

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