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BANANA FISH 感想 2巻 アッシュについての考察

※ネタバレ注意です。

BANANA FISH公式ガイドブック

今日ねー勢いでぽちったBANANA FISH公式ガイドブックが届きました。

盛りだくさんで全部まだ読んでないんだけど、扉絵全集があってもうそれ眺めているだけで涙溢れちゃってね…。今私の精神状態ではなんなら英二とアッシュが二人でいる姿見るだけで泣けるレベルです。はい。

吉田先生、一枚絵のセンスもあるよね~。今見てもすごいセンスのいい扉絵ばかりで脱帽です。ずっと眺めていられる……。

本題:2巻の感想

さて本題にいきますか。2巻冒頭でアッシュをマービンから守って死ぬのはおチビのスキッパー。おいおい、英二にも優しく、ちょっと心を開きかけていたスキップが2巻で即死亡?きっついわぁ……。しかもアッシュを庇って死ぬなんて……。でも涙一つも落とさずにマービン許さん(殺す)ってなってるアッシュはボスの貫禄。

でもその復讐叶わずオーサー(とゴルツィネ)によってマービンは殺さる。しかし、追いかけていたアッシュがその犯人に仕立て上げられちゃうんだよね。このあたりオーサーの底意地の悪さというか、クズっぷりが良く分かりますね。

好きなシーン①アッシュの性格をうまく描写しているシーン

次に私が好きなシーンが来ます。ウイラード(殺人課の警察、ゴルツィネの息がかかってる)に誤認逮捕された(オーサーの策略でマービン殺人の疑いをかけられる)アッシュは、キッズ・ポルノ時代の自分のビデオを見せられて、マービンを殺害する動機はあったと決めつけられ責められるシーン。

アッシュにとってキッズ・ポルノほど恥ずかしい過去、プライドを傷つけられることはないじゃないですか。それを警部たちの前で流される屈辱。つまり挑発されているわけです。言い返すのはもちろん殴り掛かることもできたはず。でもアッシュは何も言わずに睨みつけるだけに留まる。

私の好きになるキャラクター像

そうそう、私の好きになるキャラって大体決まっておりまして……。「プライドの低いキャラ」なんですね。表現が後ろ向きですがいい意味で言ってます。自分を貶めて、自分を追い込み、自分に厳しいキャラが好きです。アッシュの説明じゃないよ。でも前述のシーンなんて、まさに私の好きになるキャラクター像を描き切っていると言っても過言ではない。自分が辱められても、逆上して怒らないアッシュを見ていると胸が締め付けられ、俗っぽく言いますと、恋に落ちますね~~~。

平気で他人に手柄を譲るような、一歩引いたキャラが好きなんです。あと頭脳派。できれば黒髪。(アッシュは金髪だけどね!)口が悪くて無口だとなお◎。

たとえば「赤髪の白雪姫」のオビとかね~~~~~もうあの……めちゃタイプです。

オビはメインヒーロー(ゼン王子)の騎士(部下みたいなもん)なんですが、ヒロイン(白雪)のことが好きなんですね。でもゼン王子に忠誠誓ってるから白雪のことが好きな自分の気持ちを全力で抑え込んで、ゼン王子(や白雪)を守るためにそばにいるわけですよ。マゾでしょ?白雪のこと好きなくせに、全力でゼン王子と白雪の恋愛応援してるんだからね。でも白雪を敵から守り(恋愛的には)身を引く姿はマジでガチのイケメンです。これは私の勝手な推測ですが作者のあきづき空太先生は絶対にオビ推しだと思います。登場頻度高いし見せ場多いから。あとオビはお酒強くて(ザル)、料理も上手なんですよ~たまんねぇ~属性全盛りじゃん~って何の記事だこれ。

アッシュについての考察

話は戻って、この先ずっとそうだけど、アッシュって自分に対する攻撃(精神的、肉体的の両方)にすごくタフだよね。それを漫画の読者として見ていると、居た堪れない気持ちになる。「なんでやり返さないんだ?」「我慢するんだ?」って。もしかしたらアッシュは心の底で、「自分は攻撃されるようなダメな人間なんだ」って思っているのかな。自己肯定感が低いというか……。アッシュは生きるため、身を守るために平気で人を殺すけど、自分を攻撃してくる相手を自分の意思で殺そうとしたことがないような気がする。自分の怒りやプライドで、誰かを殺すってことがない。

アッシュは頭もいいから人殺しが倫理的に許されないってことが多分分かっているんだろうな。でも生い立ち的に「人を殺すしかなかった」。生きるために人を殺した(=正当防衛)だけど、きっとそんなに簡単に割り切れることじゃないんだろうな。頭が空っぽで、いっそバカで、人殺しすら開き直れるなら、アッシュは辛い思いをしないで生きられたかもしれない。

ここで思うのがアッシュの精神的な強さ。アッシュは強すぎる。普通の人間ならば、「正当防衛だ。仕方なかった。だから殺した」と自分を正当化して自我を保つと思う。そうやって逃げないと精神的に病んでしまいそうになるから。でもアッシュは自分の罪を自覚し認めている。逃げずに向き合っている。「自分は人を殺すクズだ」と認めて、自分を責めて、それでもあきらめずに生きている。だから見ているこっちが辛くなる。アッシュは強いからそれでも普通にしていられる(多分傷ついているだろうけど)でもそうやって傷ついているアッシュを見ているコッチは普通でいられないんだよ~。涙止まらないんだよ。逃げていいんだよアッシュって言いたくなるんだよ~。

でもそれは私(読者)のエゴだよね。アッシュの人生はアッシュのモノ。逃げずに戦おうが、自分をどれだけ追い込もうがアッシュの勝手。周りが感情移入してとやかく言う権利ないもんね。私はそう思うことでBANANA FISHから立ち直りましたので。勝手に感情移入している自分が楽するために、アッシュに逃げろというのは、本当にアッシュのことを思っていることになんないよね。それはこの作品のメッセージ「無償の愛」でもあると思っている。まだ2巻感想だからそこまで書かないでおくけど。

アッシュは、法律に反さず、人間としての尊厳をもって必要最低限の生活をすることが許されない生い立ちだった。美貌も頭脳も体力も全部そろっていて、環境だけを持ちえなかった。そう考えると神に愛されたと作中でも何度も言われているアッシュは、本当にそうなのかな?神は平等なんじゃないかな。アッシュは本当に完璧にすべてを持ち合わせていたのかな?周りから見て突出した才能だけが”目に付く”だけじゃないのかな?

好きなシーン②再び英二がアッシュに会うシーン

また私が好きなシーンになります。チャーリーは英二ならアッシュを説得できると踏んで、英二に協力を求めます。英二はそれに応え、入院しているアッシュと話すシーンがあります。

ここでまたアッシュは自分を追い込むようなことを英二に言うんですよね。ここマジで好きなんだけど……。

「ヤツからきいたろ 昔のオレのこと(※キッズポルノのこと)」(BANANA FISH 2巻より)

英二は返事を濁すけど、アッシュはなんでもない顔で続ける。

「日本にはないのかよ ああいうエゲツない本とかって」(BANANA FISH 2巻より)

あーーーーー好きだね。本当に好き。

これはアッシュの強がりだよね。わざと自分から話題に出すことで先制して、英二が自分の過去に関してどう思ったか探ってるわけです。でもなんでそんなことするのか?多分相手が英二だからだと思うな。英二にキッズポルノに出るような過去を知られ「嫌われたくない」から「どう思ったか知りたかった」んじゃないかな。多分この時点でアッシュは自覚ないと思うけど……。

その理由にこの後アッシュは

「おまえはいいな…あんなふうに跳べて…」(BANANA FISH 2巻より)

と言います。(棒高跳びのことですね)

1巻の感想で私は、「アッシュは英二の棒高跳びに心奪われた」「純真無垢すぎる子供な英二をきっと羨ましい(嫉妬)と思ったんではないか」と書きました。このアッシュの「おまえはいいな…」の台詞からもそれはうかがえるんじゃないでしょうか。アッシュは自分が地を這うウジ虫みたいな汚い人間に思えて、空を飛ぶ英二がとても美しく輝いて見えているんじゃないかな。

だから自分が恥ずかしい。憧れる英二に、罪を重々承知しているアッシュは汚いと思われたくない。多分「キッズポルノは無理矢理やらされたんだ、人を殺したのは正当防衛だったんだ」と言い訳したいんじゃないかな。英二にだけは。でも、アッシュのプライドはそれを許さない。だから強がって「俺は過去を気にしていない」と装っているんじゃないかな?この時はまだ無自覚そうだけど。

そしてこの後アッシュとの会話を終えた英二は、涙を流します。そして次のように伊部さんに伝えます。

「アッシュはもう覚悟を決めちまってるんです……自分の中で整理をつけちまって……」(BANANA FISH 2巻より)

これは……うまい……!と思いませんか??

アッシュは平気な顔で英二と話していたんですよ。泣いても怒ってもない、何でもない会話(まあ嫌な過去の話ではありますが…)をしただけ。英二もそれに対応しただけ。しかし、その時英二が汲み取ったのは会話の内容とは全く相反したアッシュの心理だったわけです。

17歳にして敵わないだろうマフィアのボスと決着をつける覚悟(つまり、諦め)を持ったアッシュに感情移入した英二が泣くのはとても理解できる。こうして、アッシュの心理を英二の涙を通して読者に伝えることで、読者はアッシュの心理を間接的に理解する構図になっている。説明的でないうまい表現。とても”エモい”ってやつです。

アッシュの強がりに、英二は気づいた。英二はバカかもしれないけど、多分その優しさや純粋さからか、感情を読み取るのに秀でているのかもね。

好きなシーン③アッシュと英二のキスシーン

絶対に2巻の見せ場はここでしょう~~~。アニメでこのシーン見て漫画買いに走ったからね。あ、いや、私はアッシュと英二は恋愛感情はないと思ってるけど。(二人の関係はそんな俗っぽいもんじゃなくて最早神話レベルだと思ってるから)

でもこのシーンは普通に好き。なんつーかアッシュが普通にセクシーだからすき。女慣れしてるキャラクター好きなんですよね。※英二は女じゃないけど。こう~なんつーか、恋愛慣れしてるセクシーなキャラクター好きなんです。ジェンダー前面に出してくる感じの。

アッシュは自分の強みも理解してて、老若男女問わず色仕掛けするけどそういうなりふり構わないところも好きだな~~。アッシュはゲイじゃないし、男としてのプライドないんかいって思うから好きだわ~~~。周りに自分がどんな風に思われようとかまわないんだね。自己評価が低いからかな?それとも自己肯定能力が恐ろしく高いのかな?やっぱ前者だよな~。普通は後者なんだけどねぇ。

2巻まとめ

2巻はスキッパーの死・アッシュと英二がつながる・アッシュ刑務所へ・ショーターと英二がつながる・グリフの死(ごめん死んでなかった、保護です21.8.18追記)・BANANA FISHとマックス、グリフ、アッシュの関係が明らかにと怒涛の展開。この展開の速さと情報量ってまじですごい。その間に、英二とアッシュ(好きなシーン②③)はもちろん、英二とショーター、マックスとアッシュの関係性も進めているのだからもう感服ですよね。

BANANA FISH恐るべし……。

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