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薬屋のひとりごと 小説解説 2巻

はーい、2巻備忘録いきますよ~!
しかし読み返しても面白い!!感動!

全力ネタバレ注意。


①序話
壬氏と皇帝のよくわからない会話。「(皇帝に対し)本気ですか?」「後宮の整理は壬氏の仕事」というところから察するに、楼蘭妃後宮入りに対する会話かな?といったところ。これは読み返しても明言がないけど多分そうだと思います。さすがに濁しすぎてて、ちょっとわかりにくい。もうすこし明確に言ってくれないとすっきりしないなーというのが薬屋小説でいまいちなところですね。ま、気にならない程度なんですが!
※ここはアニメ化されてないと思います。楼蘭妃の事件の主軸は3巻以降であり、多分アニメ化は2巻までなので、不要ですからね。

②壬氏付き侍女として外廷勤務となる猫猫。
官女試験には落ちてしまい、侍女となる。壬氏狙いの官女にいびられる。ここで背の高い2巻の主要人物官女の翠苓が登場
翠苓は3巻に続く楼蘭妃(子の一族)の、一派。後宮入りしているスパイであり、楼蘭妃の異母姉。薬学に通ずる。継母には気に入られておらず虐待を受けていた。後に引退後の阿多妃に匿われて子の生き残りの子供たちをかくまっているはず。表向き宮廷に存在してはいけない影の存在。本名は「子翠」。

③李白とともに食糧庫のぼや(粉塵爆発)の謎を解く。
倉庫番が煙草(キセル)に火をつけたことが原因。キセルを送った官女は翠苓。
このぼやのため、倉庫で管理されていた、後の壬氏の祭祀中の事故の原因となる金具が紛失する。

④後宮教室の先生として猫猫が妃に夜の指導。梨花妃と玉葉妃の推薦。楼蘭妃が洒落ものであり北風の顔つきのわりに南国衣装である伏線が示される。
楼蘭妃が洒落ものであり、服装やメイクをしょっちゅう変えるのは侍女を替え玉にしてもばれないようにするため(3巻でわかる)

⑤フグの毒にあたって食中毒で昏睡になる官僚の事件を高順に依頼され解決する。フグは使用されておらず、膾に使われた海藻が原因。犯人は被害者の弟だったが輸入海藻の毒を薦めたのは酒屋で同席した赤の他人であり、多分翠苓の仲間(楼蘭妃一味)と推測される。狙いは、後の壬氏の祭祀中の事故の原因となる金具の管理をしていた官僚(食中毒)である。

⑥変人軍師羅漢から壬氏経由で細工師の遺産問題を解決する。
低融点はんだ技術を死んでしまった技師が息子に伝える謎解き。

【小話】低融点はんだは私の仕事とかかわりがありましてちょっとテンションが上がりました。作者は女性とのことですが工業系にも長けているようで(まあ化学系、つまり薬学に近いからですかね?)正直感心しました。

後の壬氏の祭祀中の事故の原因となる金具が紛失してしまうため再度作成するが低融点はんだを知っているはずの細工師は死亡(鉛中毒。鉛は半田に含まれ仕事上とも考えられるが、意図的に鉛の食器等での飲食を推進した人物がいる可能性を示唆)
息子に技術が継承されていなければこの謎は解けなかった。つまり猫猫が居なければ事故として処理されていたと推測され、群像劇的に名前のない犯人が複数いる(つまりすべてが翠苓ではなく複数の名もなきスパイがいるという事件となる)

⑦壬氏に化粧(不細工にする側)を施し街に繰り出す。猫猫は休暇で実家に一時帰省。
壬氏が街に繰り出してあった人物は不明。(わかる人いたら教えて)
公にできない業務の伏線(つまり壬氏は只の宦官ではなく、弟帝である伏線)と、猫猫が壬氏側(高順)にとって都合がよく動いてくれる人物であることの示唆であると推測される。※猫猫は壬氏の行動を疑問に思っても深く知りたがらないため。
壬氏は壬華と名乗るが「華」は本名「華水月」からだと見られる。「華」は皇族のみに名前に入れてよい特別なもので、通常は使わないという設定が後にわかるので皇族である伏線となる(作品内でも商売上使っている妓女の女華以外には使われていないし、女華が使用する理由が明確に13巻で示される)

⑧休暇に戻った猫猫は羅門に実母の見舞いを頼まれる。猫猫の実母は梅毒で緑青館に匿われている。(鼻が落ちた=梅毒患者)

2巻のオチにはなるが先に説明すると、猫猫は羅漢と緑青館のかつての売れっ子妓女鳳仙との子供。羅漢は叔父である猫猫の養父の羅門を慕っていた。ちなみに顔の見分けがつかない羅漢は、一般人は碁石に見える(女=白、男=黒)優秀な人物は将棋の駒に見える。金=壬氏、成り金=高順、竜王=羅門。猫猫、鳳仙の顔は認識できる。ちなみに、龍王は最も強い将棋の駒(成った飛車)らしいよ。さらに壬氏は王将(皇帝)ではなく金将(東宮)という隠喩でしょう。さすが羅漢。
碁で羅漢を負かすほどの鳳仙の身請け金は吊り上がり、なかなか羅漢も会えなくなる。鳳仙は図って羅漢と子供を作る。後宮追放で失脚した叔父羅漢と異母弟に実家を追われた羅漢は、しばらく都を離れている間に、鳳仙は子供を作ったことにより失脚した上、梅毒を患う。猫猫の左手小指と自分の左手薬指を送り付けた(妊娠の事実を知らせるため)が、実家にいなかった羅漢は気づかず、帰ったきたあと、緑青館に行ってもやり手婆に会わせてもらえなくなってしまった。ちなみに指の文を開けて事実を知り、猫猫の養父となるのは失脚した叔父羅門である。ちなみに猫猫の指は曲がっているが復活している。(生えてきたっぽい)
三姫のひとり梅梅は鳳仙のかつての禿であり、緑青館で唯一羅漢に普通に接している。身請けされるなら羅漢だと思っていた節があるが、羅漢が身請けするのは梅毒で病床の鳳仙。ただし死期は近く、後に作中で死亡。梅梅は宮廷の将棋の指南役に身請けされる(13巻くらい)
ちなみに猫猫は羅漢をやたら嫌悪しているが、物語的には羅漢は意外と悪いやつではない。羅漢を嫌いなのは父だから、また顔を認識できないが人を瞬時に見抜くことができる才能への嫉妬と説明されている。
個人的に、それにしては過剰すぎる気がして理由がいまいち納得できないが……。猫猫は基本的に人に対してフラットに評価するキャラクターであるがゆえに、異常に毛嫌いする羅漢のことが読者からしたら悪者のように初期見えるので違和感を感じたのかもしれない(読み進めていくとその印象は薄れるんだけど)嫌いな理由も思ったよりも弱いし。そういう意味で羅漢は猫猫にとって特別であるといえますね。
ただし、羅漢に対する評価においては猫猫は「信用できない語り手」※であると言えます。
※信用できない語り手とは小説「わたしを離さないで」の主人公のように、主観で回想するため読者に与えるキャラクターイメージに誤解を生む語り手を647が勝手に言っています。

⑨壬氏は羅漢に絡まれ、猫猫に会わせろとせがまれる。猫猫に伝えると恐ろしく冷たい目で返される。
⑧で先走って書いてしまいましたが父子である伏線です。壬氏はこの時猫猫と羅漢の関係に気づき、猫猫は気づかれたことに気づきます。

⑩雑草の薬草を抜いていたら翠苓に怒られる。「蘇りの薬」を作っていると翠苓は言う。猫猫は冗談半分に聞く。

⑪李白にボヤの倉庫から祭具がなくなったと聞かされる。管理者は食中毒で昏睡になった官僚。ちなみに元の担当者は酒に塩を盛られて死んだ(1巻の伏線)
李白と話しているところを壬氏に見られため一連の流れを説明する。
「牛黄」をやるから事件の真相について調べろと指示される。

⑫書庫にこもって事故事件について調べる。食中毒の官僚は「礼部」に勤めていた。礼部とは祭祀を管理する職務であり、次の祭祀は今日であることを知り、事件が起きることを推測し駆けつける。武官に止められるが、羅漢に助けられ入ることができる。中で壬氏が祭事をしている。間一髪で金具が壊る事故から救う。

⑬翠苓が毒を煽って死ぬ。仮死状態(まるでロミジュリ!)で死体はすり替えられ、翠苓は逃亡する。蘇りの妙薬を使ったと猫猫は推測する。

⑭壬氏は実際は24ではなく19歳であることが高順との会話で明言される。宦官でないことも明かされる。高順の二番目の息子馬閃とは同い年であり、高順の妻、桃美は壬氏の乳母であることが明かされる。
楼蘭妃(子の一族)の父は皇太后とのかかわりが深く皇帝が簡単に無下にできないことが明かされる。これは3巻の子の一族の反乱に対する伏線。

⑮玉葉妃が妊娠し、後宮の毒見役に猫猫が復帰する。羅漢と鉢合わせさせないための壬氏の配慮でもある(気が利くいい男~!)
楼蘭妃が洒落ものでいつも姿が異なる伏線が再度示される。

⑯やぶ医者の薬棚の掃除をする。やぶ医者の実家は製紙屋であり、宮廷御用達である。ちなみに紙は高級品でその理由は皇太后が紙の材料の木材を伐採することを禁止したため。現在は規制が緩くなっているがそれでも紙は高級品とされる。木材伐採禁止により家業が立ち行かなくなったためやぶ医者は宦官になったと明かされる。
(木材の伐採を聡明な皇太后が禁止した理由はここでは明かされないが後に物語の主軸となる蝗害を防ぐのが木だったのではないか?と推測中。これはあくまで647の推測です。)
やぶ医者の実家から手紙で「御用達でなくなるかもしれない」と知らせがある。猫猫が牛の唾液のせいで紙の質が落ちたと指摘、やぶ医者は返事を書く。

⑰白鈴の身請け話のうわさを聞きつけあわてた李白が猫猫に身請け金の相場を聞く。壬氏が目撃し李白に身請け金を貸そうかと打診するが、李白は男気で断る。この返答に壬氏は李白を気に入るため、この後李白はよく壬氏関連の任務に駆り出されることになる。
実際は白鈴の身請け話ではなく羅漢が猫猫の身請け話をやり手婆にしていたとみられる描写あり(別に濁さなくてもいいと思うが小説では明言されていない。これくらいははっきり書いた方がすっきりすると思う。ちょっとわかりにくいよな……)

⑱後宮に壬氏が現れ園遊会までに「青い薔薇」を手配してくれと猫猫に依頼する。季節外れな上に青い薔薇という難題に羅漢からの挑戦と受け取った猫猫はこれを受ける。
梨花妃の看病の際に建てたサウナを温室にし、青い水を吸わせ青い薔薇のつぼみを見事に用意する。

⑲園遊会後、猫猫は羅漢に勝負5番勝負を挑む。羅漢が勝ったら猫猫は羅漢に身請けされ、猫猫が勝ったら羅漢は猫猫の言うことを何でも聞くというかけ将棋。1敗すると薬を混ぜた酒を1杯飲むというルール。この酒を3杯飲んでしまうと毒となる。猫猫は特に将棋が強いわけではないが2敗し、2杯飲んだところで、羅漢が手を抜き1敗する。(愛娘に毒を飲ませられないため)ただし下戸である羅漢は1杯のみで意識を失い、戦闘不能になり猫猫の不戦勝となる。
猫猫は緑青館の妓女を誰でも1人身請けしろと命令した。
なぜそんなことをしたのかというのも自分の身請け話を阻止するためだと推測される(別に濁さなくても…以下略…明言されていない)できれば三十路近い梅梅を身請けしてあげてほしかった描写もある。
ちなみに勝負中、娘にべたべたする壬氏を羅漢が不快に思う(嫌う)描写あり。

⑳羅漢は鳳仙を身請けする。詳細は⑧に記載した通り。
猫猫は梅梅の手紙でこれを知り、送られてきた衣装で鳳仙を見送る舞を踊る。壬氏に見つかる。いい雰囲気になるが「牛黄」はまだもらえないのか、と催促して怒られる。

総評

全体を通して2巻は翠苓というスパイにスポットが当たり、羅漢と猫猫の関係、そして壬氏の正体について言及されます。
翠苓の話は群像劇的なミステリーとなっており、1巻からの伏線もあり、伏線回収が遠い構成で非常に複雑。読み返すとかなり理解が深まります。2回読まないとダメですね。
全体を通して展開が早く面白いですが、やはり猫猫→羅漢の感情、伏線回収の際の明言を避ける言い回しが1度で理解しづらくしている要因かと思います。伏線回収はもっとはっきりと明記してもいいような気がするのだが。

アニメでは説明を足して、明言を避けてわかりにくくなっている部分をうまく補完している印象。(小説だと説明もかなり端的になっているので)
まだ終わっていませんがこの巻の最後、つまり猫猫が鳳仙のために舞を踊り、壬氏にお姫様抱っこされるシーンでアニメは一区切りでしょうね。
イチャイチャはアニメの方が引き延ばされていて胸キュンできるので、かなり楽しみ!

それではまた3巻解説でお会いしましょ~!

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