デジタルゲーム研究所

当研究所では、現役ゲームクリエイターの研究員がデジタルゲームについての研究を日々おこな…

デジタルゲーム研究所

当研究所では、現役ゲームクリエイターの研究員がデジタルゲームについての研究を日々おこなっており、そこで得られた知見をお届けします。モットーは『楽しくゲームデザインを科学する』。実証実験など科学的な根拠をベースに、ゲームデザインのヒントになるようなトピックを提示していきます。

最近の記事

なぜプレイヤーは開発者の思い通りにゲームを遊んでくれないのか?

キーワード  アフォーダンス、シグニファイア、仕掛け、概念モデル  開発したゲームを遊んでもらうとき、ユーザーが思ったのと違う遊び方をしていることがないでしょうか。こちらとしてはこういう感じで遊んでほしいのに、その想定とは違う遊び方や攻略法が実践されている、というようなことがゲーム開発者であれば一度はあるかと思います。  デザインの分野で著名なドナルド・A・ノーマンは、人に誤った操作や行動をとらせるモノがなぜ生まれるかについて、以下のように説明しています。 ここでノーマン

    • 「面白い」よりも「愛される」ゲームが売れる時代 〜プレイヤーとゲームの精神的結びつき〜

      キーワード ゲーム性の模倣、精神的な結びつき  近年ではバトルロワイヤルゲームが隆盛を誇っています。  2017年の『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(現: PUBG: BATTLEGROUNDS)を皮切りに、『FORTNITE』や『APEX LEGENDS』などのゲームが全世界で楽しまれています。  2019年には『Auto Chess』のような革新的なゲーム性がスマートフォンに登場すると、『Teamfight Tactics』や『Dota U

      • なぜゲームが怖くなるのか? 〜プレイヤーの「恐怖心」という落とし穴〜

        キーワード ダニング=クルーガー効果、学習性無力感、心理的安全性、信念  ゲームは、もちろん最後まで楽しく遊んでもらうことを目標にデザインされます。  しかし実際は、様々な理由でプレイヤーは途中でゲームを辞めてしまいます。単純に飽きる、プレイヤースキルが追いつかない、他のゲームに目移りする、時間が足りない…など理由は無限にあるでしょう。  その中でも昨今気になるのが「恐怖心」です。  よく「ボス戦が怖くて進めない」「レートが下がるのがイヤだ」などの理由で、ゲームをプレイす

        • デジタルゲームは「目標を生成し続ける装置」であるか?

          キーワード ポジティブ心理学、快楽順応、マスタリー目標、パフォーマンス目標、知能観  デジタルゲームが人々を魅了していることはもはや異論の余地はありませんが、そのシステムはどのような構造になっているのでしょう?  以前の記事では、プレイヤーは「ゲームを進行する」という目的のもとで意思決定を繰り返し、それがうまくいくことで快感を得ると述べました。  今回は、ゲーム中に用意されている「目標」について深掘りを行い、ゲームの構造における「目標」の果たす役割を提示します。 ポジティ

        なぜプレイヤーは開発者の思い通りにゲームを遊んでくれないのか?

          ゲームの楽しさを増加させる4つの要因

          前稿では、プレイヤーがゲームにおいて楽しむものとして「フィード期待」を挙げました。 今回は、そのフィード期待はゲームを進めていくうちに強化されるということを検討していくことにします。 フィード期待は、「良い結果(=フィード)」を期待している状態ですが、それは意思決定の成功率の上昇と、課題解決が可能という認識の高まり、この二つの要因によってもたらされています。 なぜなら、ゲームの中では意思決定の成功率が上がるほどフィードを期待できるためです。 ただし、ゲームは通常、ゲームが

          ゲームの楽しさを増加させる4つの要因

          私たちはゲームの何を楽しんでいるのか?

          私たちは一体、ゲームの何を楽しんでいるというのだろうか? ここで考えることは、「なぜケーキが好きなのか?」という問いに対して、「生クリームがおいしいから」というような人によっては答えが変わるようなものではなく、「人間は糖を積極的に補給できるよう、甘いものをおいしいと感じるようになっており、生クリームも甘いから好きになる」というような、より客観的で根本的な部分です。 この、客観的という部分が重要になります。 デジタルゲームについては、シナリオ、グラフィック、サウンド、操作感、

          私たちはゲームの何を楽しんでいるのか?