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New体育論-Management Perspective-

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小学校で体育を指導しながら、スポーツ産業のマネジメントを学んだ私が、スポーツが発展するためにあるべき体育の姿を様々な切り口から解説するシリーズ。これまでにはなかった「新しい体育の…
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#授業

今年度の体育を総括する

1年間の学級が終わりを迎えた。今年度は昨年度と同じ学年を持ちあがったが、クラス替えもあって初めての子と2年連続の子がシャッフルされた学級だった。この1年間も私の実践の中心は体育にあったが、子どもたちは何を感じていたのだろうか。また、今年度は5年生担任だったので、新体力テストの全国統計の対象でもあった。スポーツ庁から返ってきた自校の結果も非常に興味深い結果を示していた。さらに最終日の子どもたちへのアンケートも含め、結果から見えてきたことをまとめてみる。 1.今年度の主な体育実

「体育嫌い」の理解に対する根本的な勘違い

日本の体育界のおいて「体育が嫌いな子」は常に関心の的となっている。昨年度まで重点目標として施行されてきた「第2期スポーツ基本計画」の中でも、「体育を嫌い・やや嫌いという生徒を半減(16.4%→8%)」という数値目標とともに示されてきた。それに伴い、現場の体育指導者も「誰が体育を嫌っているのか?」「どうすれば好きになってもらえるか?」など、必死に模索を続けてこられたと思う。 しかし、私が現場で見てきた感覚としては、体育嫌いの生産に歯止めがかかっていないが正直な感想だ。なぜなら

体育授業での「自由」のつくり方 ~中動態の視点~

だれでも「自由」という言葉を聞くと嬉しい気持ちになる。「自由」には開放的なイメージが強く、自分の(あるいは集団の)意のままに行動することができる状態を思い浮かべるだろう。特に子供にとって「自由」は最高の”ご褒美”であり、最も生き生きとする瞬間でもある。これは裏を返せば、子供たちは常に「縛られている」状態であり、何かを「強制されている」状態ともいえる。 一方、授業において「規律」の重要性を認識していない教師はいない。殊に体育という広い空間で開放的に行う授業においては、より”整

体育デザインに必要な3つのポイント

日頃より私の記事やTwitterでの発信をご覧くださりありがとうございます。最近、DM等で「アカデミック先生は体育でどんなことを意識していますか?」「先生の考え方を授業に反映させるとしたらポイントは何ですか?」などの問い合わせをいただく機会が増えました。数百文字の短いテキストで伝えることは困難だと感じたため、本稿に記すことにしました。尚、すでに過去noteにまとめた内容もあるので、下記リンクよりご参照ください。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 体育を「デザイン」するとはさ

その準備運動、合ってますか?

先日、ある教員志望の学生さんからこんな問い合わせをいただいた。 ストレッチは動的と静的の2種類があり、運動前は動的ストレッチ、運動後は静的ストレッチがよいと大学で教わりました。これによれば体育の前には動的ストレッチを行うべきと考えられますが、実際の授業では「1.2.34…」と腕やアキレス腱を伸ばす静的ストレッチがおこなわれ続けているようです。これについてどうお考えですか? 非常に良い質問だと思った。大学で学んだ「理論」と現場で広がる「実践」の間の乖離を指摘しており、それを

体育にある『楽しい』を分類する

昨今、子供の運動習慣がある・なしの二極化が進み、その分岐点がより低年齢化しているといわれている。この課題に対応するため、スポーツや運動の楽しさを味わわせるための『楽しい体育』を求める声が高まっている。しかし、そもそも『楽しい』とは主観的な感情であり、同じ対象に対しても楽しいと感じる人とそうでない人がいる。 では、体育の中にはどんな『楽しい』の種類があるのか?そして、子供たちに伝えるべき(教師が用意すべき)『楽しい』とはどんなものなのか? 本稿は、これについてキューブ型の分類

体育の『クオリティー』はどのように決まるのか?

教員養成、校内研修、自己研鑽など、教員である人(あるいはそれを目指す人)は日々学び続けている。その理由を聞けば、「よりよい授業をするため」と一同に口をそろえる。この理由はごもっともなのだが、そもそも「よりよい授業」とは何なのだろうか?理由を言い換えれば、授業の『クオリティー』を上げるためとなるが、授業のクオリティーとはどのように定義され、どのように評価されるものなのか? おそらくこれに対しては、各々が主観的な回答を持っているだろう。多くの場合、個人が描く「理想」に近づくほど

子供が体育を満喫するために必要な目標設定とは?

体育では、同じ授業に参加していても子供によって目標が異なる。 例えば、「持久走」の授業において  ①あの子に勝ちたい(相手中心)  ②自己ベストを出したい(自分中心)  ③○○分以内に走りたい(課題中心) など、個人で様々な目標設定をする。 また、「ベースボール型ゲーム」の授業においても  ①ゲームに勝利したい(相手中心)  ②活躍してチームに貢献したい(自分中心)  ③ヒットを打ちたい(課題中心) などの目標設定がある。 実は、これらの目標設定の種類によって、その時間の体