【初夏の夕暮れ】もう夏の匂いがする
私は空を眺めるのが好きで、仕事中も隙を窺って窓の方を歩く。
今日は、18時を過ぎてもまだ空が青く明るい。
西には燃えるようなオレンジ色。
昼間は大雨だったのに、時間の間にこんなにも変化を見せるなんて、と誰とも分かち合うことなくひとり静かに感動する。
そうすると、空、地球、太陽系、と宇宙の神秘にまで感動が拡張してしまい、自分の目の前にあるPCで開いているメールのやりとりが、本当に、本当に塵のようにどうでも良くなってしまい、早めに仕事を切り上げた。
家の前まで帰って来ると、急に夏の匂いがする。
私にはわかる。
多分、雨と土が混ざって、蒸発していく匂い。
青い葉っぱが水分をいっぱい含んで、木の幹が湿った匂い。
それを風が運んでくる。
おかしいよね、
見えているのはコンクリートに囲まれた道なのに。
もう夏の匂いがする。
誰かと共有したいけど、誰もいない。
私は季節の変わり目に、決まってひとり静かに感動する。
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