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今週の読書1/4「悲しみの秘儀」

「悲しみの秘儀」は岩田書店の1万円選書に入っていた本だ。前から気になっていたが、手に取らずにおいたものだ。

悲しみの奥には、希望がある。悲しみは乗り越えるものではなく、そっと心の中において見つめるものかもしれない。

この本もきっと何度も読み返すのだろう。1章は短く、とても読みやすい。様々な悲しみについて古今東西の文章を引用し、それについて語る。作者の悲しみもすけて見えつつ、語りは穏やかで限りなく優しい。

生きている限り、別れはつきもので、誰しも悲しみと無縁ではいられない。実際に悲しみの中にある人にも支えになると思うし、まだ悲しみに直面していなくとも心が洗われるような感覚を得られると思う。

本を読むということは、自分の言葉を探すことのように思う。この本に引用されている数々の本の一節は表情が豊かで、感情の機微を様々な表現であらわしてくれる。

誰かの言葉であっても書き写すことによってそれらは、自らのコトバへと変じて行くというのである。表現しようという意図から離れ、純化されたまま引かれた言葉は、かえってその人の心にあるものを、はっきりと照らし出すことがある。

私は自分の感情や考えがうまく掴み取れない。ましてや表現して人に伝える、ということはとても苦手だ。それを求められると暴力的にすら感じるほどだ。私にとって読書はそういった自分の感情やそれを表現する言葉を探す行為なのかもしれないと思うことがある。そういった考えを肯定されたような気がした。(他方、私はちゃんと読めているのか、と不安に思うが。)

今回読んだ中で、「13.この世にいること」が印象的だった。この章で取り上げられたサバの詩にはっとした。

人生ほど、生きる疲れを癒してくれるものは、ない

いつも詩を読む、ということにいつも戸惑ってしまう。どう読んでいいのかわからないからだ。須賀敦子さんの訳したこの詩はとても自分の心に馴染んだ。須賀敦子さんの本を読んでみたい。

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